次期アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)長官に指名されたオクラホマ州のスコット・プルイット司法長官
ドナルド・トランプ次期大統領は12月7日、次期アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)長官にオクラホマ州のスコット・プルイット司法長官を指名した。
プルイット氏はこれまでEPAによる地球温暖化対策の排出規制を強く非難してきたほか、化石燃料をめぐる利権の擁護者でもあった。ニューヨーク・タイムズによると、プルイット氏は2014年、EPAに対し天然ガスの採掘場から出る排出ガスに関して同庁が行った見積もり評価を批判する書簡を送ったが、その書簡を作成したのはオクラホマ州最大の石油・ガス企業「デヴォン・エナジー」の企業弁護士団だったという。
ニューヨークタイムズはプルイット氏とデヴォン社の間でかわされたやり取りを84ページにわたって掲載した。同紙はこのやり取りが「プルイット氏と他の共和党所属の州司法長官が、オバマ大統領の規制方針に対抗するためにアメリカ有数のエネルギー企業との間に結んだ前代未聞の秘密協定」を示す証拠だと報じた。
石油・ガス採掘の地下排水に関連した地震が発生し、オクラホマ州が(文字どおり)揺れ動いたにも関わらず、トランプ氏の政権移行作業チームは、プルイット氏の姿勢を化石燃料開発の規制緩和政策の手本と見なしている。
プルイット氏は2010年、オクラホマ州司法長官に初当選した。ネット上で公開されている経歴紹介には、同氏は「EPAの方針に反対を唱える中心人物」であり「オクラホマ州で初めて、不当な規制と連邦政府の過干渉に対抗する連邦主義(主権を連邦政府から州に委譲する連邦制を支持する立場)の行政部署を立ち上げた」と記されている。
プルイット氏のもとで、オクラホマ州はオバマ大統領が2013年に策定した温室効果ガス排出削減策「クリーン・パワー・プラン」(CPP)をめぐりEPAを相手取って訴訟を起こした24の州のうちの一つとなった。CPPは発電所からの二酸化炭素排出量を削減するためにオバマ政権が実施した規制政策だ。プルイット氏は、現政権が制定した発電所の規則や規制努力目標は「オバマ政権の終わりを待たずして廃止されることになるだろう」と発言した。
2014年に開かれた石油・ガス業界の有力者が集うとある会合で、プルイット氏は「EPAと呼ばれる機関にも存在意義はあります。この機関は歴史的な意義のある目標に向けて努力してきました。EPAの果たす役割は、この国にとって非常に重要なものだと考えています」と発言した。しかし、オバマ政権下のEPAは化石燃料に対して批判的だったと付け加えた。
タルサ・ワールド紙によると、プルイット氏は「本日、皆様に申し上げます。EPAが取り組んできた歴史的目標は実現されていない」と発言したという。
プルイット氏が「EPAは存在すべきだ」と考えていることが、せめてもの慰めかもしれない。トランプ氏は選挙遊説中に一度「環境関連の省庁」を廃止する可能性にまで言及していたからだ。
国立州政治資金研究所のデータベースによると、プルイット氏が天然ネルギー資源関連業界から受け取った寄付は32万5000ドル(約3750万円)近くにのぼる。石油・ガス業界の重鎮、オクラホマ州のハロルド・ハム氏(エネルギー長官の有力候補として名前が上がっていた)は、プルイット氏が2013年のの選挙で再選する主導的役割を果たした。
共和党オクラホマ州選出のジム・インホフ上院議員は、「人間の行為が気候変動を引き起こしている」という主張を批判する反規制派の急先鋒だ。彼はプルイット氏を「最も親しい友人の1人」と呼び、プルイット氏はEPA長官に適任だと述べた。
「彼はすべての課題を熟知している」と、インホフ議員は報道陣の取材に答えた。「プルイット氏は、私が関与してきたEPA関連の問題すべてに取り組んできました。彼は周囲が期待するような、よい働きをするでしょう」。
一方、環境活動家たちは、プルイット氏の指名を厳しく非難した。
「自然保護のための有権者行動連盟」会長ジーン・カルピンスキー氏は声明で、「よく言われることですが、人事とは政策です。声高に主張を行う巨大汚染企業の要求に応えることに政治キャリアを費やしてきた人物を指名するというトランプ次期大統領の決断も、政策決定の一部なのです」と述べた。「この国に暮らすすべての人に、綺麗な水を飲み、清浄な空気を吸い、クリーン・エネルギー革命によってもたらされる健康面・経済面への利益を享受する権利があります。これらの権利を尊重する人物をEPAの長官に据えることが、極めて重要です」
民主党ハワイ州選出のブライアン・シャッツ上院議員は報道陣に、プルイット氏の指名は 「クリーンな空気や水のことを考えると、最悪のシナリオだ」と語った。シャッツ議員は気候変動問題に関心のある他の議員と協力し、プルイット氏の任命を阻止するために「可能な限りあらゆる手段を追求する」と誓った。しかし、その目的達成のためには、少なくとも共和党議員の一部から支援を取り付けなければならない。
マイノリティの代表者として頭角を現している民主党ニューヨーク州選出のチャック・シュメル上院議員は声明の中で、これまでのプルイット氏の姿勢には「気候変動の事実や科学的証拠を受け入れることに対する怠慢」があらわれており、また彼には「公衆の健康を犠牲にして巨大石油企業の代弁者を務めてきたという、懸念すべき経歴がある」と語った。
「任命手続きが行われるあいだ、こうした大きな懸念に対処するために、プルイット氏は厳しい質問に答えなければならない」と、シュメル議員は述べた。
民主党穏健派でノースダコタ州選出のハイディ・ハイトキャンプ上院議員は、党内の他の議員に比べて産業界の懸念により同調している。ハイキャンプ議員は、プルイット氏のことをまだよく知らないが、指名については「公正な評価」を下したいと述べた。
取材協力:ローラ・バロン・ロペス
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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