セブンイレブンの加盟店が、アルバイトを病欠した女子高生に、代わりを探さなかったとの理由で「罰金」を課していたことがわかり、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは加盟店に謝罪と返金を指示した。
こうした不当な労働をさせられる「ブラックバイト」について、被害者からの相談や啓発活動を行っている「ブラックバイトユニオン」は、3000件以上の相談を受けた実績から、明るみに出る問題は氷山の一角と指摘している。
■アルバイトに押し付けられる過剰な責任
ハフィントンポストでは、2016年11月、ブラックバイトユニオンの共同代表、渡辺寛人さんに「ブラックバイト」に関するインタビューを行っている。
渡辺さんはインタビューで、経済環境の悪化や人手不足を背景にして、特に飲食店や小売店では社員が1〜2人程度で、残りをアルバイトで回している店舗も多く、そうした店では、アルバイトに対して過剰な責任を押し付けられている場合が多いと指摘した。
ユニオンに寄せられる相談としても、最も多いのは「アルバイトを辞められない」というものだと明かしている。
実は一番多い相談って、「辞められない」「辞めたい」って相談なんですよね。「辞めていいんでしょうか?」とか。
アルバイトなのにすごく責任を負わされているんですよ、職場の中で。特にサービス業です。相談があるのは主に飲食、小売り、塾などの業界がほとんどなんですが、今は正社員が1人か2人しかいないところが多いです。
店長とか塾長が正社員でいて、あとは全員アルバイトみたいな職場が多いんです。そうすると、今の若者世代のアルバイトはこれまでと全然質が違う。もはや補助的な業務をする存在ではなくなっています。
とある女子高生からの相談ですが。大学入学を目前にして、授業があるので「辞めたい」と言ったら店長は「いや、この時間入るの君しかいないよね。君が辞めたらこの時間、誰がお店回すの?え、それどういうふうに責任取るの?」「代わりを見つけてこないと辞められないよ」と言ったんです。
そう大人に言われて、彼女は責任感に駆られてしまった。お店側もその責任感を利用しながら縛り付けるわけです。
悪質な例で言うと、ある塾講師のバイトの例で、「年度途中に辞めたら損害賠償を請求します。生徒の責任を最後まで見てください」と言って辞めさせないということもありました。最悪の例では、「懲戒解雇にする。履歴書にも残るぞ」と言ったりする脅しや、暴力もあります。
(「若者の怒りに応えてない」ブラックバイトユニオン代表に聞いた"日本のリベラル"より 2016年11月02日)
■厚生労働省の調査でも3割以上の高校生がトラブル
「ブラックバイト」の問題について、厚生労働省も高校生を対象にした調査結果をまとめている。
2016年5月18日に発表された調査結果では、高校生の3割以上がアルバイト先でトラブルを経験していたことがわかった。
この調査は2015年12月から2016年2月にかけて同省のセミナーに参加した高校生を対象に行われ、アルバイトを経験したことがある1854人から回答が集まった。32.6%で何らかの労働条件上のトラブルがあったとしている。
「労働条件についてどのように知りましたか」との質問に対しては、そもそも具体的な説明がなかったとする回答が18%にのぼることがわかった。「口頭のみで知らされた」「書面を見せられた(持ち帰りは不可)」との回答と合わせて約60%が、勤務開始前の時点で労働条件通知書等の交付を受けずに働いている実態が明らかになった。
回答があった主なトラブルの内容は以下の通り。
<労働基準関係法令違反のおそれがあるもの>
・1日に労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった 4.8%
・働いた時間分の全てがアルバイト代として計算されていない 3.8%
・準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった 3.8%
・1日8時間、1週 40 時間を超える労働について、割増賃金が支払われなかった 3.4%
・ 本来禁止されている深夜労働・休日労働をさせられた 2.2%
・商品やサービスの買取を強要された 1.1%
<その他労使間のトラブルと考えられるもの>
・ 採用時に合意した以上のシフトを入れられた 11.2%
・ 採用時に合意した仕事以外の仕事をさせられた 8.8%
・ 一方的に勤務シフトの変更を命じられた 7.0%
・ 一方的にシフトを削られた 5.8%
・ 給与明細書がもらえなかった 5.0%
このアンケートでは高校生に対して、労働基準法で知っている項目についても尋ねた。その結果、雇用者側による減給に制限があることについては15.7%の高校生が知らなかった。厚労省はパンフレットなどを配布して啓発を進めるとしている。
▼ブラック企業大賞2015ノミネート▼
▼ブラック企業大賞2016ノミネート▼
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