「ひとり、こんなに肯定されてる」ひとりの本だらけの企画展に、横浜市の図書館が込めたメッセージ

他人と一緒でないことの大切さやひとりの楽しみ方について書かれた本は、世の中にたくさんある。そんな本ばかりを集めた企画展が7月から、男女共同参画センター横浜(横浜市戸塚区)で開かれている。
Rio Hamada

他人と一緒でないことの大切さやひとりの楽しみ方について書かれた本は、世の中にたくさんある。そんな本ばかりを集めた企画展が7月から、男女共同参画センター横浜(横浜市戸塚区)で開かれている。

企画展のテーマは、「ひとりのしあわせ」。参画センターの図書館「情報ライブラリ」などが所蔵する約6万点もの本の中から、テーマに合った196冊を厳選し、ひとりのライフスタイルを確立している著名人や、ひとりの趣味や楽しみ方など、6つのカテゴリーに分けて紹介している。

どのような想いを込めて、どんな本を並べたのか。担当者の金涼子さんに話を聞いた。

■展示書籍、著名人の自伝からひとり旅の本まで幅広く

センターは毎月テーマを決め、情報ライブラリ内で本の企画展を開いている。センターを運営する横浜市男女共同参画推進協会は、ひとりひとりが生きやすい社会を目指した事業を展開しており、今年で30周年を迎える。今回の企画で「ひとり」をテーマに選んだ理由について、次のように語る。

「もともと生き方の多様性みたいなものをやろうと考えていました。最近、女の人が生きづらくて色々なことに縛られているという話を出てきていて、そんなテーマでやりたいと思っていた時に、ちょうどハフポストの『#だからひとりが好き』の一連の記事を読みました。

すごく分かりやすいメッセージですし、テーマにも惹かれた。ただひとりを楽しもうとか、ひとりのライフを謳歌しようというだけでなく、幅広くひとりを尊重しようという姿勢が、全て今回考えていたことと結びつきました」

ひとりについて幅広く発信するため、自分らしく生きる著名人を取り上げた作品から、旅行やグルメなどひとりでの楽しみ方を紹介した本まで幅広く揃え、カテゴリー分けにも工夫を凝らした。展示している書籍や実際の風景は以下の通りだ。

(1)「みんなと同じでないとダメ」という呪いから脱出!

・「とらわれない生き方」(ヤマザキマリ:KADOKAWA 2014)

・「これから家族の話をしよう」(小島慶子:海竜社 2016)他39冊

(2)「ひとりで生きる」こころもち

・「あいもかわらず毎日がおひとりさま。」(フカザワナオコ:主婦の友社 2010)

・「ひとりぼっちの幸せ」(みつはしちかこ:イーストプレス 2013)他29冊

(3)「ひとり力」をつけるくらし

・「男おひとりさま術」(中澤まゆみ:法研 2010)

・「ひとりぐらしも何年め?」(たかぎなおこ:KADOKAWA 2015)他34冊

(4)ひとりが楽しい趣味・旅

・「世界をひとりで歩いてみた 女30にして旅に目覚める」(眞鍋かをり:伝社黄金文庫 2016)

・「ひとりの時間がもっと楽しくなる幸せノートの作り方」(中山庸子:KADOKAWA 2014)他32冊

(5)すてきなひとりごはん

・「オンナひとり、ときどきふたり飲み」(沼由美子:交通新聞社 2015)

・「おっさんひとり飯」(高野洋一:宝島社 2012)他21冊

(6)不安を安心に変える 一人の老い支度

・「98歳。心して『一人』を楽しく生きる」(吉沢久子:海竜社 2016)

・「ひとりで死ぬのだって大丈夫」(奥野滋子:朝日新聞出版 2016)他29冊

■「自分らしく生きるヒント見つけて」

展示はまず、他人と異なる生き方を貫く著名人の作品から始まる。そこには、「みんなと同じでない人を異端視せず、いろんな選択肢がある社会が良い」というメッセージを込めた。

例えば、漫画家・ヤマザキマリさんやタレント・小島慶子さんは、自身の著書の中で結婚や出産、働き方をどのように選択してきたかをつづっており、「ひとりひとりが自分らしく生きるためのヒントを得てほしい」。

続けて、ひとりでの生活術や時間の過ごし方を具体的に紹介する本やマンガも数多く展示。ひとり暮らしを充実させる方法のほか、旅やグルメなどひとりならではの楽しみについて知ってもらいたいとして、こう話す。

「具体的なノウハウを得ることで安心することができます。エッセイやマンガもあるので、気軽に手に取ってほしいです。ひとりで食事するのは寂しい人だと思われがちですが、(本を通じて)自分だけじゃないということをシェアできれば嬉しいです」

■図書館は「ひとりひとりを大事する場」

「ひとりのしあわせ」は8月中旬まで開催。この展示は世代を超えたテーマとして捉えており、老後や終活に関する本も加えている。どんな人に来てほしいのかという質問に対しては、以下のように答える。

「人生の選択肢で、次にどうすればいいか悩むポイントは男女ともにあります。たまたまひとりになってしまい不安に思う人、職場や家庭で同調圧力を感じたり、自分らしく生きられていなかったりする人にも来てほしいです。

こんなにひとりに関する本あって、ひとりが肯定されているというのを見て安心してもらうだけでもいい。本を読まなくても、こういう企画やコーナーがあると知ってほしいです」

鎌倉市の図書館が、自殺に悩む子供に向けてTwitterでメッセージを発信したことについても触れ、「同じ図書館として、ひとりひとりを大事にするとか、ひとりの人がじっくり自分の色々なものに向かい合える場だというのは大事にしたい」。そんな想いも込められている。

■関連画像集「『ひとりのしあわせ』ブックリスト」

【※】スライドショーが表示されない場合は こちら

ハフポスト日本版は、自立した個人の生きかたを特集する企画『#だからひとりが好き』を始めました。

学校や職場などでみんなと一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり...。繋がることが奨励され、ひとりで過ごす人は「ぼっち」「非リア」などという言葉とともに、否定的なイメージで語られる風潮もあります。

企画ではみんなと過ごすことと同様に、ひとりで過ごす大切さ(と楽しさ)を伝えていきます。

読者との双方向コミュニケーションを通して「ひとりを肯定する社会」について、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

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