多くの観光客が訪れるインドネシアのバリ島で11月27日、バリ国際空港が閉鎖された。同島東部のアグン山が54年ぶりに噴火し、政府が警戒レベルを最高に引き上げたのが理由だ。イギリスのガーディアンなどが報じた。
■上空9000メートルまで噴煙、観光への打撃も
アグン山の噴火は、21日に始まった。当初は火山灰の噴出にとどまっていたが、25日から26日にかけて数回にわたり噴火して、上空まで噴煙を吹き上げた。
オーストラリアの気象局は27日、噴煙は9144メートルの高さに達したと発表。噴火活動と火山灰の落下は、少なくとも今後24時間は続きそうだと述べている。
CNNによると、アグン山の住民約2万4000人が避難。国家災害対策庁は山頂の周囲8~10キロ以内の住民に避難を勧告した。近隣の村落に灰が降り、バリ、ロンボク両島でマスクが配布されている。
NHKニュースによると、インドネシア政府の災害対策部門はアグン山の警戒レベルを27日、マグマの活動が活発になっているとして、最高の「レベル4」に引き上げた。
これを受けてデンパサールにあるバリ国際空港は、現地時間27日午前7時から、ひとまず24時間の期限つきで閉鎖された。噴火の影響で、26日も国際線と国内線を合わせて81便が欠航となったばかりだった。
今後も火山活動が続けば、年末の観光シーズンを控えて観光業が大きな打撃を受ける可能性が強まりそうだ。
■過去にも大噴火を起こした「火の神が住む山」
1963年3月に撮影されたアグン山の噴火(スミソニアン協会のサイトより)
コトバンクの「世界大百科事典 第2版」によると、アグン山は標高3142メートルで、バリ島の最高峰だ。
アグンとは「火の神が住む山」を意味する。バリ島の守護神の住む場所として古来から信仰対象とされている。山麓のブサキ寺院はその一つであり、島ではアグン山に向かう方角が聖なる方位だ。
アメリカのスミソニアン協会によると、19世紀以降だけでも1808年、1821年、1843年、1963年と計4回の大噴火を起こしている。
中でも1963年の噴火は大規模だった。約1年間にわたり、火砕流と泥流が周囲に流れ出て、1148人の死者を出した。スミソニアン協会「20世紀最大の噴火」と評した。