サントリー、買収した米企業と高級ジンを共同開発 「桜餅」で伝えた日本の味

買収した企業とのコラボは、簡単ではない。海外企業ならなおさらだ。
サントリーより提供

サントリーが1瓶4000円の高価格クラフトジン「ROKU(六)」を、ジンの本場・イギリスで発売開始した。先行して販売しているドイツやシンガポールなどでの、売れ行きは「好調」だという。

サントリーが2014年に1兆6000億円で買収したアメリカの子会社「ビームサントリー」と一緒に手がけた、共同開発商品だ。

買収先の会社とうまく「コラボ」するために、どんな工夫があったのか。今回、日米のチームをつないだのは、和菓子の「桜餅」だったそうだ。

サントリーホールディングス株式会社より提供

「ROKU」はこうして生まれた。

サントリーは、ビール市場が伸び悩むなか、グローバルで市場が成長している1瓶20ドル以上の高価格な「プレミアムジン」で勝負に出た。

ジンは穀物を原料としたスピリッツの一種。いろいろな材料を使えるため、無限のバリエーションで商品を作れる。

サントリーの広報担当者によると、商品開発に際して、最初に決まったテーマは「飲んだ人が"日本らしさ"を感じる商品にしよう」だったという。

商品開発チームは、海外市場向けの"ジャパニーズジン"を目指し、桜や抹茶など、様々な日本由来の素材や配合のバランスを、繰り返し試した。

「(ジンの風味づけに使う)桜の味ってどんな味?」と尋ねるビーム側の担当者に、サントリー側の社員が、桜餅を食べてもらってコミュニケーションするなど手探りのやり取りが続いた。

広報担当者は「ビーム社と一緒になったことで、新しい視点を持ち合わせた商品になった。"日本らしさ"などのニュアンスを伝える時には、諦めずに会話して微調整を続けた」と話した。

できあがった商品は、ジュニパーベリーやレモンピールといった定番の薬草に加えて、桜(花と葉)、お茶(煎茶と玉露)、山椒、柚子の成分で風味づけした独特のジンになったという。

サントリー公式サイトより

商品ラベルには、和紙に墨で漢字の「六」の文字を書いた。左右非対称なデザインは、欧米から見た「日本らしさ」を意識した。開発の最中には「日本らしさ」のニュアンスを共有するのに苦労し、ビーム側から中国風のデザイン案が出てきたことなどもあったそうだ。

海外で勝てる商品とは?

国内ビジネスの伸び悩みを打開するため、海外企業を買収する日本企業は多い。ただ、買収した子会社をきちんとマネジメントしきれず、つまずくケースも見られる。

同社の新浪剛史社長は2017年11月、ハフポストの取材に対して海外企業の買収の成功の鍵を以下のように話していた

「結局は、人と人が直接交わることが大事。口でいうだけでなく、ピープルエクスチェンジです」

HuffPost Japan

2月27日、イギリス・ロンドン市内で開かれたお披露目イベントでは、有名店や高級ホテルのバーのバーテンダーら約70名が集まりROKUを試飲した。影響力のある現地の有名バーテンダーに魅力を伝えることで、海外顧客への浸透を狙う。

サントリーホールディングス株式会社より提供

ROKUは、イギリスの他にドイツ、シンガポール、タイ、台湾、インドネシア、ベトナム、ラオス、カンボジア、フィリピンの9カ国で販売しており、今後さらに販売地域を増やす予定だという。

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