これからの経済
2018年04月03日 16時59分 JST | 更新 2018年04月03日 17時28分 JST

カルビー、「カリスマ経営者」突如退任の理由

偉大すぎた松本会長は、なぜ辞めるのか

外部から招聘された松本晃・会長兼CEO。在任中に成し遂げたことは収益の改善に、株式の上場、フルグラのヒットなど、数多くある(撮影:2017年11月、尾形文繁)

3月中旬の週末、栃木県内で開かれた、カルビーの社内イベント終了後のこと。松本晃・会長兼CEOは一緒に食事をしていた伊藤秀二社長に、唐突に切り出した。

「僕はもう今期で降りるわ、いい潮時だよ。僕が辞めた後も伊藤さん、カルビーをよろしくお願いします」

だいぶ前から「腹を決めていた」

3月27日、カルビーは松本氏の退任を発表した。理由は「本人から退任の申し出があったため」という。後任を含めた新たな経営体制は4月中に決定する計画だが、伊藤秀二社長が続投する可能性が高い。

松本氏は、医療機器メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の社長を経て2009年にカルビーの会長兼CEOに就任。高コスト体質にあえいでいた同社を立て直し、2009年度から2016年度まで8年連続の増収増益を達成した、いわばカリスマ経営者。そのため、松本氏の退任が公表されると、株価は3780円から一気に7%近くも下げた。

本記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら

唐突すぎる退任劇だが、当の松本氏はあっけらかんとしている。「辞めることはずっと考えていたし、権力は10年持つと腐敗する。9年間は長くやり過ぎた」「(ほかの取締役の)みなさんは慰留してくれたけど、だいぶ前から腹を決めていたことだったから」(松本氏)という。

松本氏は2009年の会長就任後、徹底したコスト削減を実施。その分を値下げ原資とし、少子高齢化が進む国内スナック市場で、他社のシェアを奪うことで販売を伸ばしていった。販売増に伴って工場の稼働率が改善。営業利益率は、2008年度の1.5%から2016年度には11%を超えるまでになった。

「フルグラ」を国内の収益柱に育成

さらにシリアル「フルグラ」を国内の収益柱に育成。中国市場への進出も加速させるなど、次の成長への種まきも進めてきた。

松本氏は就任当初、4年で辞めると周囲に話していたと言うが、「東京証券取引所1部に上場して、業績が良くなると周りが褒めてくれるからそりゃ気持ち良くなったりするよね」(松本氏)と、当初の想定よりも長く在任した理由についてそう漏らす。

ただ、足元の業績は伸び悩んでいる。今2018年3月期は天候不順で主原料のじゃがいもが確保できない「ポテチショック」や北米での販売不振が重なり、営業利益は275億円(前期比4.7%減)と松本氏就任以降初めての減益を見込む。

もう、次の仕事のオファーがきた

「もう1年継続もなきにしもあらずで、(今年じゃなくて来年辞めたら)業績が良くなって、引き際としてはかっこいいのかなっていうのもありますよ。だけどそれを言ってもキリがない」(松本氏)。

松本氏をカルビーに招聘した故・松尾雅彦元相談役(撮影:2008年、今井康一)

さらに今年2月には、カルビーの創業家出身で、松本氏を会長に招聘した松尾雅彦氏が死去。「それ(松尾氏が亡くなったこと)とこれ(自分の退任)とは別だけど、一部あるよね。声をかけてもらって一緒にやってきた松尾さんがいなくなって、自分も潮時だと」。

カルビーを退いても「リタイアはしないと思う。仕事なくなったら死んじゃうな」(松本氏)。退任の発表をした当日、すぐに数社からオファーがあったという。

カリスマ退任後のカルビーはどうなるのか。次期トップに求められるのは中国での展開加速や北米の立て直しといった、海外事業のテコ入れだ。後継者の有力候補と見られる伊藤社長は「じゃがりこ」の販売責任者を務めるなど、国内分野の経験が長い。どういった体制になるにせよ、カリスマ後の経営は一筋縄でいかないのは、確かだ。

カルビーの会社概要 は「四季報オンライン」で

石阪 友貴 : 東洋経済 記者)

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