自衛隊がイラクに派遣されていた時の、ないはずの「日報」が次々と見つかり、国会が大荒れになっている。
そもそも何が問題となっているのか。ポイントを整理した。
(1)日報は、なぜ「存在しない」ことになったのか?
今回見つかっている日報は、自衛隊がイラクでどんな活動をしていたのかを記した文書。これは、安全保障政策を議論するうえで、根本の資料となるものだ。
本来であれば、きちんと扱われ、保存されているはずの日報。だが2017年2月、稲田朋美前大臣は、イラク派遣時の日報について「確認をいたしましたが、見つけることはできませんでした」と答弁していた。当時国会では、自衛隊のPKO活動をめぐって、激論が起きていた。
ところが、実際のところ、日報はあった。防衛省の担当者が、2017年3月に「発見」していたことが4月2日に発表された。しかも、発見から今年3月までの1年間、大臣に報告されなかった。
なぜだったのか。
野党は「日報の存在を、防衛省が意図的に隠した」とみて追及している。
稲田朋美・前大臣は4月4日夜「一体なにを信じて答弁していいのか。こんなでたらめなことがあってよいのか」と発言した。
「存在しないとしてきたイラク日報」は次々と見つかっている。
小野寺五典・防衛大臣は4月6日、航空自衛隊の航空幕僚監部でも、日報が見つかったと発表した。
小野寺大臣は「当時の大臣の指示があったにもかかわらず、(各自衛隊の)末端まで指示が行き届かず、文書を出さなかった。陸自の場合には隠していた。まったく許せる対応ではない。文民統制にかかわりかねない重大な問題だ」という認識を示した。
空自トップの丸茂吉成航空幕僚長は6日、記者会見で「深くおわび申し上げる」と陳謝した。
(2)文民統制(シビリアンコントロール)は大丈夫か?
文民統制は、政治家が軍隊を統制するというルール。軍事サイドである自衛隊や防衛省が、日報の存在を大臣(政治家)に隠すことは、このルールに反する。
与党内からも、防衛省の対応を問題視する声が上がっている。
朝日新聞によると、自民党の中谷元・元防衛相はこう話した。
「軍事は政治の統制を受けなければならない。果たしてその意識があるのか。大臣や国会に報告することに信憑性がなかったことは非常に大きな問題だ」
政権に近い論調の産経新聞も、この問題を社説で厳しく批判している。
「日報の隠蔽は、いくつもの問題をはらんでいる。当時の稲田防衛相らに適切な報告をしなかったとすれば、文民統制(シビリアンコントロール)を損なうもので許されない。日本で最大の武力を持つ自衛隊には厳正な規律が求められるのである。」
(3)国会答弁の問題
稲田元大臣はイラク日報について、(a)確認したが見つけられなかった、(b)事象の有無を確認した後は不要となるため文書として保管していない、などと答弁していた。しかし実際には、(a)文書は存在していたし、(b)保管もされていた。
稲田元大臣の対応に問題はなかったのか。この点も明らかにされるべきポイントだ。