「ブラック企業エピソード大賞」に壮絶な体験談 半監禁・20時間労働のIT正社員など

残業200時間で居眠り運転、松葉づえ禁止の保育士なども。
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日本リーガルネットワークは7月5日、「ブラック企業」に勤務経験のある人から募集した体験談を集めたエピソード大賞を発表した。「20時間労働、半監禁状態で働いたIT正社員」を筆頭に、壮絶な体験をした人々の手記が公表された。

今回、大賞として選出されたエピソードは、「1日20時間・3カ月連勤、実質時給120円」IT・情報通信業の会社に勤務していた宮城県の20代男性によるものだった。

長時間労働に加えて、最低賃金を下回る実態や、過労死とみられる同僚、パワハラ的な言動なども綴られている。

基本給は正社員でありながら6万9千円。毎日8時から翌朝4時まで勤務でした。休みは、月一回土曜日の午前中のみで、時間外手当は1円もでません。なんと時給換算で、120円代です。一度出社すると、半監禁状態で3ヶ月帰れない事もあります。不動産会社と警察から孤独死を疑われて家に勝手に入られたりもしました。

ただ実際、過労で体調崩して搬送され、息を引き取る社員もいました。

また、「社内では、日本国の法律は適用されない」「社員は消耗品」など、経営陣の名言もありました

2位は飲食業の大阪府・20代男性。

居眠り運転による事故で、命を落としかけた危険な体験を投稿した。

残業100時間以上は当たり前の世界で、最もキツい時期は2ヵ月続けて残業時間が200時間を超える日々が続きました。当然休みは1日も取れません。3時間寝たら、24時間働くみたいな状態で、結果的に2週間風呂に入れてないということになりました。ある日、担当店舗の1番遠いところに高速に乗って向かっていたらトンネルで単独事故を起こしてしまいました。自分は奇跡的に無傷でしたが、車は自走できない状態まで大破しました。それでも、車を見送った後、仕事しに行くことになり、もう笑うしかありませんでした。

また、7位には保育士という千葉県の20代女性のエピソードも選出された。

5月下旬に剥離骨折と捻挫を右足でしてしまい、担当医には二週間は絶対安静で立ち仕事を禁じられました。それを伝えても聞く耳を持ってもらえず、階段を使う重い荷物を持って移動や、二人がかりでやってと書いてある業務用掃除用具入れの組み立てもやってほしいといわれ、毎日毎日、痛い足を引きずり頑張っていました。「保護者の前では松葉づえを使わずに行動しろ」とも言われ続け、精神がボロボロになりかけていたので、心療内科にも通いました。辞めたい、と思っても口に出せず、毎日毎日影で泣きながら耐えました

エピソードの全編は同社のサイトで公開されている。

同社は、サービス残業の証拠を自動で記録するアプリ「残業証拠レコーダー」などの開発を手掛け、多くの労働者と接してきたという。

代表の南谷泰史弁護士は、大賞を企画した意図について「優良企業にずっと勤めている人々は、『ブラック企業』を言葉では知っていても、現実に存在することを実感していないことがわかってきたため」と話す。

各種の統計やアンケートだけでは伝わりきらない実態について広く知ってほしいと、エピソードを募集することにしたという。

同社が4月に開始した募集に対して、300通を超えるエピソードが寄せられた。「有難いと同時に、この問題の被害者が非常に多いことを改めて感じました」と話している。

なお、エピソードの真偽について書類などで確認しているわけではないが「これまでの業務経験に照らして、慎重に真実味のあるものだけを採用した」としている。近日中に、2度目の募集を開始予定という。

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