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2018年12月27日 10時06分 JST | 更新 2018年12月27日 10時21分 JST

精子バンクで、親になった女性たち。「今行動しなければ、母親になるチャンスはないかもしれない」

キャリアを優先してきた女性にとって、精子バンクが現実的な選択肢になっている

「結婚を諦めて、決断したわけではありません」とリヴ・ソーンさんは話す。

ソーンさんは、4月に息子のハーバートちゃんを出産した。ハーバートちゃんは精子バンクで購入した精子を使って授かった。「恋愛も大切だけど、私は今すぐに子ども欲しかった。愛で解決しないのなら、精子バンクを使おうと思ったのです」

ソーンさんは39歳。彼女のように、一人でも子供を産みたいと願う独身女性が増えている。最新の調査によると、イギリスでパートナーなしで不妊治療に登録した女性は、2014年には942人だったが、2016年には1272人になった。2年間で1.3倍になっている。

なぜこれほど急増しているのだろう?女性が自分で自分の人生を決めるようになった、という意見がある一方で、産む/産まないことについて、女性がオープンに語るようになってきたという意見もある。

一つ言えるのは、キャリアを優先して子育てを先延ばしにした女性にとって、精子バンクが以前よりずっと現実的な選択肢になってきているということだ。

マンチェスターに住む40歳のメル・ジョンソンさんも、精子バンクを使って授かった娘のデイジーちゃんを、2月に出産した。「子どもを持ちたいがために、好きでない相手と結婚するのは間違っていると、女性たちは気づき始めている」とジョンソンさんは語る。

「パートナーを持つなら、うまくいく相手がいいと女性たちは思っています。うまくいかないパートナーと子どもを作るよりは、自分1人で子どもを作る方がずっといいです」

LIVTHORNE / @livsalone
リヴ・ソーンさんと、息子のハーバートちゃん

ハフポストUK版は今回、3人の女性に話を聞いたが、シングルで子どもを産むと決めた一番大きな理由は3人とも「うまくいく相手と出会う機会がなかなかないが、子どもを諦めたくない」だった。

■ 精子バンクで親になると決めたきっかけ

幼い頃から子どもがたくさんいる家庭に憧れていたソーンさんは、15年間パートナーがいないまま37歳を迎えたとき、一人で子どもを産む決断をした。決して、慌てて決めたわけではない。28歳の時から、もしパートナーを見つけられなければシングルペアレントになると決めていた。

自分の決断を、最初は家族や親しい友人にしか話さなかった。「カミングアウトしているような気持ちでした」とソーンさんは振り返る。周りの人たちのサポートが、彼女を安心させた。「『とんでもない決断だ』と非難する人は、誰一人いませんでした。みんな味方をしてくれました」

ジョンソンさんの場合、決断のきっかけは、20代後半で7年付き合った相手と別れたことだった。

3人目の女性、ミカ・ビショップさんも同じだ。現在44歳のビショップさんは、39歳の時に長年付き合っていた相手と別れた。その時、どうしても子どもが欲しいと思ったという。「頭の中は子どものことでいっぱいでした」と彼女は話す。ジョンソンさんもビショップさんも、交際を諦めたわけではない。ただ、今行動しなければ、もう母親になるチャンスはないかもしれないという結論に達したという。

■隠すことではない

20年前だったら、精子バンクを使って親になったことを秘密にする人が多かったかもしれない。しかし、今はInstagramやブログで、日常生活をシェアする時代だ。ソーンさん、ジョンソンさん、ビショップさんも、精子バンクを使って親になったことを周りにオープンにしている。

ソーンさんは、精子バンクで子どもを作ると決断した最初の日から、周囲の人たちに話してきた。性格的に秘密にするのが苦手ということもあるが、あれこれ噂されるのが嫌だったのだ。隠さず話し、ブログに綴り、寄せられた質問に答えている。

ジョンソンさんも「周りの人を困惑させないために、決断後すぐに『年齢のことを考えて自分1人で子供を産むことにした』と伝えました」と話す。「『普通とは順番が反対で、まず最初に赤ちゃんを生んでそれからパートナーを探す』ってね。パートナーを持ちたいという気持ちは、今でも変わりませんが、(子供を産んだことで)時間のプレッシャーから解放されました」

ビショップさんも保育園のお母さんたちに、自分がシングルマザーで、精子バンクで母親になったと包み隠さず話してる。

双子の男子、ザックとレオを2015年1月に産んだ時に、多くの人から「知り合いにも精子バンクで子供を産んでいた人がいる」と聞いて、驚いた。

MIKABISHOP
ビショップさんと、2人の息子、ザックとレオ。ビショップさんは日本人とイギリス人のミックス。ドナー提供者はガーナ人なので、ザックとレオは、日本人とイギリス人の血をそれぞれ4分の1、ガーナ人の血を2分の1引いている。

■精子バンクを使う時に、考慮すべきこと

精子バンクを使って、1人で子供を育てる時には、事前に考えなければいけないことがたくさんある。

一つは、費用だ。精子の購入額は、利用する精子バンク次第で大きく違う。イギリスで最も利用者が多いといわれる「ロンドン精子バンク」の場合、約950ポンド(約13万3,000円)かかる。それ以外の精子バンクは、850ポンド(約11万9000円)から購入できる。通常の買い物と同じく、まとめ買いすると安くなる。ただ、配送料と保管費用は自己負担だ。受精するための費用も必要になる。イギリスでは、子宮腔内授精は約800ポンド(約11万2000円)、体外受精が約3000ポンド(約42万円)かかる。

受精が失敗し続けた場合には、精神面で大きな負担がかかることも考慮しなければいけない。

ソーンさんにとって、精子の購入は気が遠くなるようなプロセスだった。「私が使ったサイトは(出会い系アプリの)TinderとAmazonを合わせたようなものでした」。検索条件で、身長や体重、人種や既往歴を選び、買い物かごに入れて購入。イギリスに配送してもらう。

ソーンさんは選んだのはデンマーク人のドナーだ(ちなみにイギリスでは、2017年に3000の精子サンプルがデンマークから輸入された)。オープンドネーションにしたので、息子は18歳になったら、生物学的な父親に連絡を取ることができる。

費用は、家を抵当に入れて用意した。精子を4本購入して、イギリスに輸送。その後病院で保管して、子宮腔内への授精を4度試みた。かかった費用は総額1万4000ポンド(約196万円)にものぼる。「排卵誘発剤や体外受精なしで妊娠できて、ラッキーでした。そうでなければ、もっとかかったでしょう。予定以外のことにも様々な費用がかかりました。ちょっとしたことにも課金されるんです」

最初の3回は失敗したが、「失敗するたびにひどく落ち込みました。大きな喪失感を感じて打ちひしがれました」と話す。3回目の失敗の後、6カ月間人工受精をやめた。

6カ月後、「もしうまくいかなかったら体外受精にしよう」と決めて4回目の子宮腔内授精に臨んだ。期待しないようしていた。2週間半後、姪っ子と遊んでいる時に軽い気持ちで妊娠判定テストを受けたところ、ずっと待ち望んでいた陽性だった。

「何も考えられないくらい衝撃的でした。でも最高に嬉しくて、涙を流しながら飛び跳ねました」

他の2人はどうだったのだろう。

ジョンソンさんは、マンチェスター不妊病院で精子バンクで入手し、36歳の時に体外受精を始めた。胚(受精卵)が3つできたので、全てを凍結保存した。そして2回目の肺移植で、妊娠した。

THESTORKANDI
ジョンソンさんと、娘のデイジー

ビショップさんの場合、妊娠にプロジェクトのように取り組んだ。リサーチに6カ月かけ、セミナーに足を運び、精子バンクで子供をもうけた女性たちと話し、そして資金を準備した。「自分が正しいことをしているか、常に自分に問いかけながら進めてきました。でもいつも、間違っていないと感じました。少なくとも家族を持ちたいという気持ちについては、自分に嘘をついてませんでした」

世界中の精子バンクの提供者プロフィールに目を通し、最終的にイギリスのある精子バンクから提供者を選ぶことにした。「一度も会ったことがない人との子供を持つのは、変な感じではないだろうか?」と、自分に問いかけつつ、精子をオンラインで買い、人工授精をした。

最初は流産、2回目は化学妊娠だった。3回目、別の精子を使って妊娠した。お腹の子供が双子だとわかった時は衝撃を受けたが、それはすぐに大きな喜びに変わった。子供たちにきょうだいができることに、ビショップさんは安心した。

MIKABISHOP
ビショップさんの双子の息子、ザックとレオ

■親になってみて

それから3年半、よちよち歩きだった子供たちは走り回るようになった。週4日働きながら子育てするのは、決して楽ではない。でもビショップさんは自分の決断が間違っていなかったと確信している。

ソーンさんもジョンソンさんも、同じように子供を産む決断をしてよかったと思っている。

ソーンさんは「息子に対する愛情が、こんなに大きいと思わなかった」と話す。精子バンクによる出産だと本人に教えることを、恐れていない。「息子には、自分は周りと違うと感じて欲しくないんです。それに生まれてきた経緯を知って欲しいと思っています。彼は待ち望まれて生まれてきました、デンマークの親切な男性が、私に素晴らしい贈り物をくれました」

ビショップさんはすでに、息子たちがわかるような簡単な言葉で「精子バンクを使ってあなたたちを授かった」と伝えている。精子バンク利用者のサポート団体「ドナー・コンセプション・ネットワーク」が作った本も使っている。

同団体が作った「私たちのストーリー」という本には、親たちが精子バンクを使って子供を授かるまでのストーリーが書かれている。「息子たちはまだ幼く、完全に理解してはいません。しかし、精子提供者という言葉に馴染んでおくことや、"パパ"が近くにいなくても、ママは全く問題ないということ知ることは、子供にとってとても大切です」とビショップさんは話す。

ジョンソンさんは、自分の経験をブログで綴っている。彼女も、娘に伝える時には本を使っている。娘を授かった方法を描いた「私の家族」という絵本を、自分でも作っているところだ。「(精子バンクのことは)大きくなってから伝えるのではなく、成長の過程で普通のことだと娘には感じて欲しい。大きくなったら、もっと詳しい説明をしようと思っています」

親になるということは、想像よりずっと素晴らしかった、とジョンソンさんは話す。彼女が口にする喜びの言葉は、他の新米ママたちと何一つ変わらない。

「娘との絆は、私が今までに全く経験したことがないものです」

ハフポストUK版の記事を翻訳しました。

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