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2018年08月22日 14時24分 JST | 更新 2018年08月22日 14時24分 JST

スーダン:感染症から命を救う

「もう濁った水は飲まなくてよい」

スーダンには、トイレを知らない、使わない、設置していない地域が多くあります。そのため、ハエなどを媒介して排泄物が食べ物や人の身体に付着したり、雨水に流されて村や町なかに広がります。また、適切なトイレの使い方や手洗いの重要性、食品の正しい保存方法などの衛生知識も充分に知られていないため、多くの人々が知らず知らずのうちに不衛生な状態にさらされています。同国では、1,000人あたり65人の子どもが5歳になる前に死亡 します。 その主な原因の1つが、衛生環境の改善で防ぐことのできる下痢や感染症です。

水を汲みに行った子どもが命を落とすことも

AAR Japan[難民を助ける会]

給水設備を建設するために、井戸の水量の試験(1時間に何リットルの水を汲み上げられるかを確認)をしています。試験中、村人が井戸から出た水を汲みにやってきました(撮影場所はすべてアレンガズ村、2017年9月6日)

スーダン・カッサラ州リーフィアロマ郡のアトバラ川流域では、赤痢や腸チフス、集団下痢、栄養失調、皮膚病などの症状が発生していました。同地域のアレンガズ村には、給水所やトイレがまったく見当たりませんでした。約1,100人の村人は、屋外で排泄したり、アトバラ川を流れる濁った水を飲用水として利用していたのです。水かさが一層増す雨季には、アトバラ川に水を汲みに行った子どもが流されて死亡する例も発生していました。

こうした状況を改善するため、AAR Japan[難民を助ける会]は、アレンガズ村の給水設備とトイレの建設、衛生啓発活動を実施しています。清潔な水を充分に確保すること、トイレを日常的に使用すること、正しい衛生知識に基づいた食品管理や手洗いすることなどによって、村人が安全な生活ができることを伝えます。また、給水設備を住民自身で管理できるように、村の水管理委員会への研修を実施します。設備完成後も、水管理委員会とのミーティングを毎月開き、メンテナンス方法や使用料金の徴収などについてサポートします。

AAR Japan[難民を助ける会]

完成した給水設備(後方)の譲渡にあたり、今後の管理方法などについて説明。設備の前に立っている左端の男性がAAR職員。(2018年2月26日)

「トイレを使いたい」と思ってもらうことから

アレンガズ村では、住民自らが作る家庭用のトイレの設置も進めています。トイレを使っている人がいない、あるいは少ない地域において、AARの事業終了後も村で衛生的な環境が維持されるためには、トイレの使用が家族の健康につながることを人々が理解し、屋外排泄の習慣を改め「トイレを使用し続けたい」と思うようになることが重要です。

AAR Japan[難民を助ける会]

衛生環境改善のワークショップの様子。参加者に村の衛生状況を理解してもらい、「トイレを使いたい」という意欲を促します(2017年11月29日)

2017年4月、家庭用のトイレの建設に向けて、アレンガズ村の住民から情報収集を行いました。村のリーダーや民族構成、土壌の質、雨季の豪雨時には村のどこに雨水の流路ができるか、村人の下痢の頻度、現地の風習(例えば村の中に住むといわれる「悪魔」の存在がどの程度トイレを使用することの意識に影響を与えているか)を調べていくことで、どのような社会的・環境的側面に配慮して村で活動するのが望ましいのかを把握していきます。こうした作業を雨季が終わる10月末ごろまで行いながら、AAR職員は村人1人ひとりと会話を重ね、信頼関係を築いていきます。

情報が集まり、村人との信頼関係も生まれ、雨季が明けて作業がしやすい2017年11月、AARは衛生環境改善ワークショップを開催しました。ワークショップは、村でどのような衛生上の問題が起きているかを話し合い、トイレを使うことでそれらの問題が解決できることを住民自身に理解してもらう構成です。村人が「トイレを使いたい」と思い、すぐに行動に移せるよう、AARは枝や布など、村の周辺で誰もが簡単に手に入れられるものを材料とするトイレの作り方を伝えます。雨季の豪雨時に雨水の流路になる場所はトイレが破損しやすく、そうした場所での建設を避けるなど、重要な一方見落としがちな点も伝えます。ワークショップ終了後も、ときには村で一週間のキャンプを行うなどして綿密なフォローアップを重ね、トイレの設置をサポートしました。

「もう濁った水は飲まなくてよい」

自宅のトイレの設置を終えたバキートさん(男性)は「多くの人が村で下痢に悩まされたのを見てきました。AARの事業によって、今では村のあちこちにトイレが作られ、みんながトイレを使うようになったのでこれからは下痢が減っていくことを期待しています。給水設備もできて、アトバラ川の濁った水を飲まなくてよくなったし、最近は村でアトバラ川に流されて亡くなった人がいることも聞いていません。AARにはとても感謝しています。」と話します。

AAR Japan[難民を助ける会]

衛生環境改善ワークショップに参加し、実際にトイレを作った女性は、「夫が出稼ぎに行っているので私が穴を掘りました。子どもたちが枝などの材料を持ってきてくれたおかげで完成しました」と教えてくれました(2017年12月3日)

ファティマさん(女性)は「トイレというものがあるのは知っていたが、トイレを村でどのように作られているかはわかりませんでした。AARが村で開催したイベントに参加して、トイレの重要性や、村で集められる材料でどのように作り、使うかを知ることができました。妊婦や、乳児を抱えた母親は遠くの草むらまで毎回排泄しに行くのはとても大変なので、家の近くにトイレを作ることができてとてもいいと思います。私も家族の健康を守っていきたい」と話します。

誰もが安心して暮らせるように

2018年、カッサラ州では「給水設備をすべての人に(Zero Thirsty)」と 「屋外排泄者ゼロ(Open Defecation Free)」が政策重点目標として掲げられました。AARは、これまでのカッサラ州での給水設備やトイレ建設、衛生啓発活動の実績が評価され、州政府からの要請でカッサラ州の水衛生技術委員会のメンバーになり、水衛生分野に関する政策提言を行っています。AARは、1人ひとりが安全な水とともに生活できるように、今後も活動に尽力して参ります。

AAR Japan[難民を助ける会]

村の衛生環境を視覚化するワークショップ。色のついた粉や石、紙を使い分け、地面に描いた村の概略図に排泄箇所をマッピングして、どの場所で多くの人が排泄しているかを確認します(2017年11月29日)

*参照元:UNICEF DATA

AARのスーダンでの活動一覧はこちら

【報告者】

スーダン事務所 本田 悠平

AAR Japan[難民を助ける会]

2016 年7 月よりスーダン事務所駐在。国際協力関係のサークルでの活動やバックパッカーとして途上国を旅する中で、貧困などの国際的な問題に関心を持つ。民間企業で海外営業を担当するも、国際協力に直接関わりたいと決意しAAR へ。趣味は読書、音楽鑑賞。富山県出身