正確な判断に必要な「わずかな時間」とは

何かを判断する前に、ほんの少し間を置くだけで、正しい判断を下せる可能性が高まるとする研究結果が発表された。
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Chris Strong via Getty Images

何かを判断する前に、ほんの少し間を置くだけで、正しい判断を下せる可能性が高まるとする研究結果が発表された。

論文共著者のひとりである、コロンビア大学メディカルセンターのジャック・グリーンバンド准教授はリリースで、「判断を行うときに、長い時間をかけて必死に考えるよりも、より適切なタイミングになるまで判断の開始をただ遅らせるほうが適切な場合がある」と述べている。

実験では、「判断の開始をほんの50ミリ秒~100ミリ秒遅らせるだけで」、人間の脳が、最も適切な情報に的を絞り、不適切な選択肢を遮断することができるようになることが示されたという。

「PLOS ONE」誌に掲載された今回の研究では、被験者に対して、コンピューター画面上で、動く点の集団を見せるという実験が行われた。集団内の点はランダムな順序で動くが、被験者は、これらの点が全体として左または右のどちらの方向に動いていると思うか答えるよう指示された。

ただし、画面上には同時に、明るい色をした別の点の集団が表示されるため、最初の点の集団がどの方向に動いたかを答えることは難しい。新しい点の集団が最初の点の集団と同じ方向に動いた場合、被験者はたいてい、点が動いた方向を正しく見分けることができた。だが、新しい点の集団が最初の点の集団とは逆方向に動いた場合、被験者は間違いを犯すことが多くなった(これは、現実世界の環境が複雑で、正確な判断を下しにくいという状況を模したものだ)。

被験者は、点が動く方向をできるだけすばやく答えるか、またはできるだけ正確に答えるように指示されていた。だが、どちらの場合も被験者は、新しい点の集団が画面上で動き始めてから、好きなだけ時間をかけて答えを言うことを許された。

次の実験では、研究チームは同じようなタスクを被験者に提示したが、1つだけ違いがあった。それは、被験者が判断するべき時を、時計が針を刻む音で指示したのだ(判断までの時間は、17ミリ秒~500ミリ秒で設定された)。

これらの実験から、「判断プロセスの開始」を微妙に遅らせることは、「判断プロセス自体の時間」を長くするよりも、正確な判断につながることが明らかになった。研究チームはこの結果について、判断プロセスの開始を遅らせることで、その間に脳が、予見に邪魔されずにさまざまな情報を集積できるからだと考えている(人間はこのプロセスを意識化はしていない)。

今回の研究結果から、複雑な環境で重大な判断を下すことが必要な人々向けに、「判断の開始を意識的に遅らせる新しい訓練プログラム」の開発が可能になるかもしれない、と研究チームは述べている。

[The Huffington Post(English) 日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]

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