「検索」が、子育て中の親を追い詰める。不安なママはどうすればいいのか

「元気じゃないお母さんが集まれる場所が欲しかった」
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Getty Images
Digital Vision

子育てが不安で、孤独で、しんどくて。でも誰にも「助けて」と言えなかったあの頃、自分と同じように「元気じゃないママ」たちと話をしたかった――。

産後うつと強迫性障害に苦しんだ2年半を記した『懺悔日記』(マガジンハウス)の著者でイラストレーターの藤田あみいさんは、つらかった日々をそう振り返る。

不安だった日々に、藤田さんがくり返したのは"ネット検索"だった。元気じゃないママは、どんな風に子育て中の不安との向き合えばいいのか。藤田さんに聞いた。

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fujita
イラストレーターの藤田あみいさん

産後うつ:出産後2~3週間、または数カ月経ってからイライラ、疲れやすさ、無力感、不安発作、食欲不振、不眠などの症状が継続するうつ病の一種。

強迫性障害:自分の意思に反して湧き上がる強い不安について「考えずにはいられない」「しないではいられない」とこだわり、同じ行動を繰り返してしまう不安障害の一種。

ネットの医療情報はまだ混沌としている

――『懺悔日記』を読むと、藤田さんが患っていた強迫性障害やうつの不安を増大させた要因のひとつに、インターネット検索も大きく関係しているのでは、と感じました。

先日、妹が妊娠中にインフルエンザになったんですけど、「妊娠中 インフルエンザ」でネットで調べたら、1番上に出てきた記事に「お腹の子が発達障害になります」って書いてたそうなんですね。医療関係者が書いている記事だったみたいで衝撃でした。

――Googleは「WELQ」問題を受けて、検索結果の表示のアルゴリズム変更なども行いました。ただ、育児中の不安をネットで検索すると、ネガティブな情報が関連ワードで表示されることも多い。

「え、これも気にしないといけないの?」「これも?」「こっちも?」ってなっちゃうんですよね。ネットの世界はまだまだ混沌としてる気がします。

以前、寄稿文がYahooに載ったことがあるんですが、IT業界の男の人が「これは俺たちの罪でもあるな」ってコメントをくれて。そんな風に思ってくれるのは嬉しい。

「元気じゃないママ」が集まれる場所が欲しかった

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Kaori Sasagawa

――「一番の相談相手はスマホ」というママも少なくないと思います。それ自体は悪いことではないですが、視野が狭くなってしまう側面はある。

だから「ネットを捨てて街に出よ」って思いますね。今は私の場合は、何か不安が出てきたら、とりあえずは夫に相談します。あとはママ友と話をする。

同世代の子どもを育てている同士なので、悩みも似てきますよね。「わかるー」って言い合っているだけで安心できる。自分の子しか見ていないと、どうしても視野が狭くなっちゃう。

だから私、(0歳の子の育児中も)実家の北海道に帰っている間は、子育ての不安は薄れてたんですよ。「かわいい、かわいい」って褒めてくれる家族がいて、見てくれる人の目と、助けてくれる手があったから。でもそこから離れて、ひとりになるともう大変だった。

――本には「核家族は向いていないのかもしれないな」とも書かれていましたね。

実家は6人家族だったし、大家族に憧れがあるんです。人が多いと楽しい。同じ1日が全然違うから。今はどうにかして両親を東京に呼びたいなぁって考えています。

――家族の助け以外に、どんな子育てサポートがあるといいと思いますか。

本当に孤独でしんどくて、誰とも喋れなかった時期には、座談会みたいに「元気じゃないお母さんが集まれる場所」が欲しい、って思ってたんですよ。

自治体の「ママたちの集い」みたいなのはもちろんありましたけど、あれに参加できるのってやっぱり元気があるお母さんなんです。あのときの私は、同じ立場の人と話してみたかったので。

でも難しいですよね。「元気じゃないママ集まれ」って呼びかけても集まらないかもしれない(笑)。自治体に「産後うつかな? と感じたらダイヤル」みたいな電話番号もあるといいかもしれないですね。

――元気じゃないなと感じたときは、どうするといいでしょうか。

とにかく、しんどくなったらSOSを出しましょう。助けてくれそうな人がいたらとりあえず「助けて」って言ってみる。夫がダメそうだったら友達に、友達もダメそうだったら他の誰かわかってくれる人を探す。そこだけ頑張る。

精神的なしんどさって、自分でも気づきづらいんです。「ヤバくないよ」って言ってる時点でもうすでにヤバくなってるかもしれない。そうなったら私みたいに一気にダーッて症状が進みますから。胸が苦しくなったら、SOSを出していきましょう。

『懺悔日記』の巻末に「産後ママのためのHELP GUIDE」をつけたのもそのためです。今しんどい思いをしている人たちが、どうか参考にしてもらえたら。

不安は消さない。受け止める

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Kaori Sasagawa

――藤田さんは今、子育ての不安にどう向き合っていますか。

不安になることは今もあります。でも以前と違うのは「まあ不安にもなるわよね」「そりゃ不安だわ」ぐらいに自分で自分に声をかけられるようになったこと。不安が嫌でも、それを否定しない。受け止められるようになりました。

――真面目な頑張り屋ほど、他人に心配されても「大丈夫!」と反射で言ってしまいがちな気がします。

わかります。具合悪いときに、具合悪くないふりをする人っているじゃないですか。私がそうなんですけど(笑)。全然大丈夫じゃないのに、「ううん、大丈夫!」って言っちゃう。救急車いらない」って言う人ほど、救急車が必要なことって多い。

そういう人は1回、どん底まで落ちないと「助けて」って言えないのかもしれません。どん底というのは気分的な問題ですけどね。そこまでの状態に落ちたら、誰かに泣きながら助けを求めてみるといいと思います。

(取材・文:阿部花恵、編集:笹川かおり)

藤田さんの新著『懺悔日記 子どもの愛し方を知るまで』はマガジンハウスから発売中。

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藤田あみい/マガジンハウス