結婚式を応援して、当事者も周りもハッピーに クラウドファンディングによる「HAPPY BRIDAL PROJECT」

「ハッピーな瞬間を多くの人と分かち合えることで、結婚へのハードルが下がっていってほしい、と思っています」
Asahi

 ブライダルジュエリー専門ブランドの「アイプリモ」が朝日新聞社のクラウドファンディングサイトA-portと組んで、ブライダル専門のクラウドファンディング「HAPPY BRIDL PROJECT」をスタートした。プロポーズや結婚の素晴らしさ・尊さを改めて多くの人に知ってもらい、ブライダル業界全体を盛り上げていきたい――そんな想いがこめられている。

■結婚したいカップルを応援するサプライズプロポーズ

 アイプリモは、ブライダルジュエリーの企画販売を行うプリモ・ジャパン株式会社が、オリジナルブランドとして展開している。日本全国73店舗、海外で21店舗を運営する大手ブランドで、150種類以上の婚約指輪、結婚指輪のほか、アニバーサリージュエリーなどを手がける。

「そもそも、アイプリモでは、結婚を控えたカップルを応援するイベントとして、2012年から"サプライズプロポーズ"を年に何回か実施してきました」と語るのは、プリモ・ジャパン アイプリモ事業部 アイプリモマーケティング部部長・須藤理恵さんだ。

野球場のサプライズプロポーズで大勢の人に祝福されたカップル
野球場のサプライズプロポーズで大勢の人に祝福されたカップル
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 サプライズプロポーズとは、読んで字のごとく、女性に内緒で男性がプロポーズをする場を演出するというもの。プロ野球の始球式で、水族館で、時には劇場のカーテンコールで。何も知らない彼女に、周囲の人たちの協力を得て、サプライズプロポーズという感動的な場を提供するというものだ。

「ローンチしたときはかなり話題にもなりました。ただ、何年か続けていくうちに、企業が一方通行でサポートする枠組みでは、カップルを見守るみなさんが自分ごととして応援するのはなかなか難しいのかな、と感じるようになってきました」(須藤さん)

■誰かのために使う、というお金の価値

 プロポーズや結婚式という、人生で一番幸福を感じる華やかなときを、自分たちが支援したい。そんなふうに、結婚に憧れている人や、幸せな結婚式の思い出を持っている人たちが、共感してくれる仕組みがないだろうか。

 そんな思いをかかえていたときに、須藤さんが参加したセミナーで聴いた言葉が、大きなヒントになった。

──お金の価値、お金への意識というのが大きく変わってきている。自分が持っているほうが意味のある1000円もあれば、その1000円を別の誰かに使ってもらったほうが価値のあることも。もし、そうならば、自分の持っている1000円を支援という形で提供してもいいと考える人が増えているのではないか?

「誰かの結婚を応援したくなる。そんなクラウドファンディングの仕組みをつくりたかった」と須藤さん
「誰かの結婚を応援したくなる。そんなクラウドファンディングの仕組みをつくりたかった」と須藤さん
Asahi

「もし、そんなふうに考えている人が多いのであれば、誰かが幸せな結婚をするのを応援しようという空気が生まれてくるのではないか、と思ったんです。クラウドファンディングという形をとることで、今まで"結婚"が遠いことのように感じていた人が『結婚っていいな』と思ったり、結婚して何年も経つけれど『やっぱり結婚してよかったな』と思い返してくれるきっかけになるんじゃないか、と」(須藤さん)

■結婚式をクラウドファンディングで資金援助

 そこで立ち上げたのが、今回の「HAPPY BRIDAL PROJECT」だ。HP上で、結婚式を挙げたいけれど資金が足りない、すでに結婚して何年も経つが結婚式を挙げられなかったというカップルを、クラウドファンディングでサポートする。

 もちろん、そこで重要になってくるのが、それぞれのカップルが持つ背景のストーリーだ。

「希望者を募って、わたしたちがそのカップルのエピソードを踏まえた上で、対象となる方を決定。そのストーリーに共感した方々から支援金を募って、プロポーズ・挙式・披露宴を行います。もちろん、アイプリモからも婚約指輪、結婚指輪を提供。結婚式場やお花屋さんなどの協賛も得て、全面的に結婚式をサポートします」(須藤さん)

■結婚を応援したくなる、ストーリーを持つカップル

 22組の応募からプロジェクトの第1弾に選ばれたのは、23年間母親の代わりとなって育ててくれたおばあさんとひいおばあさんに「感謝の気持ちを伝える結婚式」を挙げたいという女性だ。

 新婦となる女性と直接やり取りをしている、プリモ・ジャパン マーケティング本部 アイプリモマーケティング部 プロモーショングループ クリエイティブディレクションチームの内田万奈美さんは「応募理由などを詳しく尋ねる電話インタビューでも、受け答えが非常に丁寧で素敵な女性だなと感じました。複雑な生い立ちを経て、育ててくれたおばあさんたちに結婚式の晴れ姿を見せてあげたいという気持ちには、実際に彼女に会う前から個人的にも応援したくなりました」と語る。

複雑な境遇の中、育ててくれたおばあちゃん、ひいおばあちゃんに花嫁姿をみせたいとプロジェクトに参加
複雑な境遇の中、育ててくれたおばあちゃん、ひいおばあちゃんに花嫁姿をみせたいとプロジェクトに参加
Asahi

 プロジェクトに賛同して、支援してくれた人には、過去にアイプリモでリングを購入した人たちも多い。「アイプリモの指輪でわたしたちもハッピーになったので、あたたかい結婚式をぜひ応援したい」という声もある。

「誰かの幸せをみんなで応援する、そんなあたたかい輪の広がりを感じています」(内田さん)

 プロジェクトがスタートする前は、支援者が集まるのか不安でいっぱいだったという新婦も、日に日に支援者が増える様子に励まされているという(プロジェクトの詳細はこちら)。

「当社だけでなく、同じブライダル業界として結婚式場や花屋さんの協力も決まり、今では夢に見た結婚式の実現を何よりも楽しみにしているようです」と内田さん。

 今後も、様々なバックグラウンドストーリーを持つカップルに向けてプロジェクトを展開していく。

■「結婚」とは、多くの人に幸せを運ぶもの

 これをきっかけにブライダル業界全体の底上げにもつながっていけたら、という期待もあるという。

「特に地方では若者がどんどん流出して、"結婚"というもの以前に"出会いの場"が減っている。自治体などの協力も得て、このプロジェクトを地域の婚活イベントに発展させていけたらいいですね。地方の活性化にもなるし、ブライダル業界にいるわたしたちにとっては顧客の創造にもつながります」と、内田さんは今後の展望を語る。

「新たな展開も楽しみです」(内田さん)
「新たな展開も楽しみです」(内田さん)
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 価値観が多様化して、結婚の形や結婚への考え方も人それぞれだ。

「プロポーズにしろ、結婚式にしろ、こうでなくてはいけないという縛りはありません。ただ、結婚って、やっぱり幸せなものだし、自分たちだけでなく、周りも幸せにしてくれるもの。そういうハッピーな瞬間を多くの人と分かち合えることで、結婚へのハードルが下がっていってほしい、と思っています」(須藤さん)

 第1弾のプロジェクトは8月末で終了するが、今後も「HAPPY BRIDAL PROJECT」は継続していく予定。新たに夫婦になるカップルだけでなく、それを応援する人たちにも「幸せ」を届けるプロジェクトとして、今後の展開が楽しみだ。(工藤千秋)

さらなるプロジェクトスタートに向け、準備を進める須藤さん(左)と内田さん
さらなるプロジェクトスタートに向け、準備を進める須藤さん(左)と内田さん
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