ピロリ菌に感染している場合の除菌治療は、早い方がよいのです。二十歳になったらピロリ菌チェックを受けましょう。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、悪性リンパ腫などの7~9割はピロリ菌の感染が原因です。ピロリ菌の感染が全くない胃に胃がんができることは極めて珍しく、すべての胃がんの1%前後です。ピロリ菌の除菌治療が健康保険でできるようになり、胃がんも予防することが可能な時代となりました。
ピロリ菌は、ヒトが生まれてから5歳ころまで(多くは2歳未満)に感染するといわれています。感染経路はおそらく経口的にうつると思われます。ピロリ菌が感染すると胃炎がおこり、胃粘膜の萎縮がおこるとともに、潰瘍、胃がんなどの原因になります。
2004年から2011年に日本全国(北海道、青森、山形、群馬、愛知、滋賀、香川)で検診・人間ドックを受診した21,688人のデータによれば、ピロリ菌の感染率は15-19歳で8.3%、20-24歳で10.6%、25-29歳で14.0%でした。高齢者では65-69歳で45.9%、70-74歳で46.1%です。
日本人が持っているピロリ菌は胃がんの発生率が高くたちが悪い菌ですが、できるだけ早い時期に除菌をすれば胃がんの予防になります。ピロリ菌の感染があっても二十代でピロリ菌を退治する治療(除菌治療)を受ければ、その後の胃がんの発生を99%抑えることができるといわれています。
ピロリ菌は母子間などの家族間感染があることがわかっていますので、とくに妊娠・出産前の若い女性にはピロリ菌の感染がないか一度調べてみることを強くお勧めします。
感染している場合に除菌治療を受ける意義は、感染している本人の胃がん予防ばかりでなく次世代への感染のブロックという面からも大変重要です。妊娠出産してからの除菌治療はなかなか困難ですので、二十歳になったら一度感染の有無をチェックすることを強くお勧めします。
ご家族、知人の方々にも、二十歳になったらピロリ菌チェックをお勧めしてください。ピロリ菌検査と感染している方の除菌治療は、早い方がよいのです。将来胃の手術を受けるような病気になることを予防できる可能性が高くなります。
《参考文献》
今野武津子、横田伸一、高橋美智子、他 日本人小児の最近のピロリ菌感染率と感染経路
について.日本ヘリコバクター学会誌 15(2): 68-74, 2004
Asaka M, Kato M, Graham D.Y. Strategy for Eliminating Gastric Cancer in Japan. Helicobacter 15: 486-490, 2010
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【医師プロフィール】
村井 隆三 消化器外科
医療法人社団おなか会おなかクリニック理事長・院長
NPO法人二十歳のピロリ菌チェックを推進する会代表理事
1982年東京慈恵会医科大学卒業後、同大学にて外科研修医。1984年同大学附属第三病院外科入局。同大学附属病院外科講師、東急病院外科 外科系診療部長、町田市民病院外科 消化器担当部長。同大学助教授、東京医科歯科大学大学院医療経済学非常勤講師、夕張希望の杜理事などを歴任。2005年京王八王子駅前に村井おなかクリニックを開業。医療法人化を経て、2011年JR八王子駅前に移転し、おなかクリニックと改称。年間8000件以上の胃・大腸内視鏡検査と年間およそ400件のソケイヘルニア・痔の日帰り手術に特化した専門クリニックである。