サイボウズ式:会社に不満を言えないのは「会社にいる自分がすべて」だと思っているから

CINRA×サイボウズ 「若手社員が自らの働き方をデザインするためには?」
サイボウズ式

社員にとって、自分の勤めている会社が働き方改革に積極的なことは喜ばしいはず。しかし一方で、「仕事の量が減っていないのに残業だけ規制されて困る」「自由な制度があっても使い方がわからない」といったような声を聞くのも事実。社員はいつだって、会社の風土や制度に左右されてしまいます。

現場で働く私たちは、どのように会社の風土や制度と向き合い、成果を上げていけばいいのでしょうか? 若手社員が自らの働き方をデザインするためには、どうしたらいいのでしょうか——?

時間と場所を制限しない「フリー出社制度」を実践し、社員の副業も認めている株式会社CINRAと、自由な働き方を選択できるサイボウズ。両社の第一線で活躍する若手社員3名で座談会を行いました。

営業担当×編集者兼営業担当×事業部マネージャー。職種が違うと働き方や成果の出し方も違う?

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竹中:今日はよろしくお願いします。

矢島:よろしくお願いします。

酒本:みんな、今どんな仕事をしてるんですか?

矢島:私は、カルチャーサイト「CINRA.NET」で音楽系の記事制作をしつつ、イベントの企画運営をしています。

学生時代に音楽系のフリーペーパーを作っている会社でアルバイトをしていた経験と、1社目のアーティストマネージャー時代に培ったアーティスト側の視点を生かして仕事をしています。

矢島由佳子(やじま・ゆかこ)。1989年生まれ。大阪出身の阪神ファン。父の仕事の都合で小学校時代3年間ほどアメリカに住んでいた。芸能事務所でアーティストマネージャーをした後、3年前にCINRAに転職。「CINRA.NET」編集者。
矢島由佳子(やじま・ゆかこ)。1989年生まれ。大阪出身の阪神ファン。父の仕事の都合で小学校時代3年間ほどアメリカに住んでいた。芸能事務所でアーティストマネージャーをした後、3年前にCINRAに転職。「CINRA.NET」編集者。
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竹中:私は、CINRAの新規事業として「She is」というメディアを立ち上げて、現在は事業部の責任者を務めています。

竹中万季(たけなか・まき)。1988年生まれ。前職は大手広告代理店系列の会社で、Webディレクターやプロデューサーをしていた。今年9月に CINRAでコミュニティーメディア「She is」を立ち上げ、事業責任者を務めている
竹中万季(たけなか・まき)。1988年生まれ。前職は大手広告代理店系列の会社で、Webディレクターやプロデューサーをしていた。今年9月に CINRAでコミュニティーメディア「She is」を立ち上げ、事業責任者を務めている
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酒本:僕はパートナー営業部という部署に所属していて、サイボウズ製品の販売代理店をしてくださっている企業の営業を担当しています。

酒本健太郎(さかもと・けんたろう)。1987年生まれ。サイボウズ入社8年目。新卒でサイボウズに入社し、それからずっと東京本社で営業を担当する。出身は兵庫県。甲子園球場で売り子をしていたことも
酒本健太郎(さかもと・けんたろう)。1987年生まれ。サイボウズ入社8年目。新卒でサイボウズに入社し、それからずっと東京本社で営業を担当する。出身は兵庫県。甲子園球場で売り子をしていたことも
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矢島:それぞれ職種がバラバラですね。

竹中:会社から求められるものや、仕事の成果をどうとらえるかも違ってきますよね。

CINRAはフリーアドレス・フリー出社制度ができて、評価が個人寄りに

酒本:2人は、会社からはどういう成果を求められているの?

矢島:私は編集者兼営業みたいな職種なので、求められる成果は、シンプルに売り上げです。

竹中:私の場合は事業部の責任者なので、事業部の目標金額を達成しなくてはいけません。

酒本:成果は個人や事業部の売り上げで見ているんですね。ちなみに、フリー出社制度ができる前は、評価の仕方は違いましたか?

矢島:以前はチームの目標達成率で給与やボーナスが決定されていました。フリー出社制度適用後は、個人の数字が基準です。

最近のCINRAは、より個人の成果が尊重されるようになった感じがしますね。私は、より働きがいがあると感じています。

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酒本:なるほどなあ。サイボウズも自由な働き方を認められているけれど、成果については真逆の考え方。個人やチームとしてでなく、会社全体の業績がすべてなんですよ。

竹中:えっ、個人じゃないどころか、チームや事業部でもなく、会社全体!?

矢島:それって個人のやる気を削ぎませんか? 自分の働きが評価に直結しないとなると、ひとりひとりが100%の能力を発揮しなくなるというか。

酒本:僕も最初はそう思ったんですけど、やってみるとそんなことなくて、「みんなで成果を上げて早く帰ろうぜ!」という雰囲気です。

個人の業績が成果につながらないから、自分の時間を自分だけのために使おうと思わないんですよ。

チームメンバーが困っていたら積極的に助けようって思います。以前、業務中に先輩の子どもの面倒見たこともあるくらい(笑)。

矢島:すごい......。

「人生かけてやりたいこと」を実現するために、会社を利用させてもらっている

酒本:竹中さんと矢島さんは、どんなことを考えながら働いていますか?

矢島:ちょうど1年前にCINRAが副業を解禁して、私はそのあとすぐに副業を始めました。

今の私の仕事は、「CINRA.NET」とイベントの企画制作、「CINRA.NET」以外でのライティング、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」における業務の3つの軸ですね。

酒本:めっちゃ働いてるやん。

竹中:仕事する時、すごい全力投球だもんね。

矢島:でも、良くも悪くも会社に対する所属意識があまりなく、「CINRAのために働いてます!」って感じじゃないんです。

ちょっと恥ずかしいんですけど......、私の人生の中で、やりたいことって一貫しているんです。

酒本:気になる。

矢島:それは「めっちゃいい音楽をやっているのに売れてない人」や「お金になるべき才能を持っているのにお金になっていない人」の役に立ちたいということ。

だから、それを実現するためにCINRAという会社を使わせていただいている感じです。

竹中:うんうん。

矢島:CINRAという会社は、自分のやりたいことを仕事という形で実現できる"強力な場"。でも、人生レベルに置き換えて考えると"選択肢のひとつ"なんだと思います。

酒本:なるほどなあ。

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竹中:私も矢島と似ているかな。

学生の頃から、なんとなく「モノはつくれないけれど、モノをつくる人たちの良いところは愛情を持って伝えていくことができる」という自信がありました。それを今は編集という仕事で生かしている気がします。

矢島:やりたいこと、好きなことを仕事にする」ところが似てるよね。

竹中:うん。でも、最初からそうだったわけではなくて。

酒本:どういうことですか?

竹中:私、大学生の頃の就活では、周りの影響もあって「有名企業」に入ることがいいことなのではと思っている部分があったんですよ。

学生時代は「会社で働くことに一日のほとんどの時間を費やす」ということに気付けていなかったんです。

いざ就職して、朝から深夜まで会社で働いていると、もちろんやりがいはあったのですが、自分が本当に好きだったものが何だったかさえ忘れてしまうようになって。

酒本:それはしんどいですね。

竹中:CINRAに転職してからも「自分が本当にやりたいことはなんぞや?」という自問自答を繰り返し、ちょっとずつ近づいている気がしていても、どこか足りなくて。ずっと悶々していました。

人によるとは思うのですが、私個人としては「休日に仕事のことを考えても楽しい」と思える、プライベートと仕事の境目がなくなるところまで仕事の存在を引き上げたくて......。

それで、自分らしい生き方を見つけるにはどうしたらいいか普段からよく一緒に話していた同僚の野村由芽と二人で、「She is」の事業提案をしたんです。

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酒本:すごい行動力! 事業提案って、社長にしたんですか?

竹中:社長とCINRA.NETの編集長にプレゼンしました。

酒本:緊張しませんでした?

竹中:緊張はしましたが、以前から会社の制度などで気になることがあれば黙ったままにできず、すぐ伝えがちな性格なもので......(笑)。

すべて受け入れられるわけではありませんが、きちんと伝えたら、考えてくれる会社なんです。事業提案はその積み重ねがあったので、「聞いてくれるかもしれない」と思えていました。

違う業務をしていたので、どう両立するかも含め、1年間くらいかけて考えましたよ。

酒本:まさに「働き方改革」やね。

矢島:自分が自分らしく生きるための改革。

竹中:そう、まさにね(笑)。

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メールや電話などの「ルーティーン業務」を圧縮。創造的な仕事をする時間を作りだす

竹中:酒本さんは、どんなことを意識しながら働いていますか?

酒本:僕は、自分が入社する何年も前からサイボウズとお付き合いのある販売代理店さんを担当しているので、先輩がこれまで作ってきた「売る仕組み」を引き継いだ状態だったんです。

だから、そのままでも売り上げはあるんですけど、それだけじゃ僕自身の成果はゼロですよね。

矢島:ふむふむ。

酒本:だから、もっと「サイボウズ製品を売りたい!」と思ってもらえるように仕組みを改良したり、新たな仕組みを自分で作ったりしなければと思っています。

そういう創造的な仕事をする時間をつくるために、メールや電話などのルーティーン業務は圧縮。効率化は特に意識しています。

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竹中:「ルーティーン業務は圧縮」って、たとえばどんなことをしているんでしょう?

酒本:会議の議事録をモニターに映しながら取って、その場で出席者に確認して完成させるとか、メールアドレスをチーム全員で共有して、返せる人が返すとかですね。うちのチームは、個人のメールアドレスを廃止したんですよ。

矢島:メールをチームのみんなに見られるってことですか......!? なんだかちょっと恥ずかしいような気もします。

酒本:僕も最初は抵抗あったんですけど、というか大反対だったんですけど(笑)。思い切ってやってみたら、メリットがありすぎて驚きました。

結局、メールが属人化の温床なんですよ。自分しか見られないメールがあるって、自分しかできないことがあるってことですからね。そうすると、帰れなくなる。

竹中:なるほど。「個人ではなくて会社全体の業績」という評価制度が、働き方にも連動してるんですね。

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若手が意見できる会社か? きちんと意見ができる若手か?

酒本:フレキシブルな社風や雰囲気はありがたいよね。

自由な雰囲気の中でサイボウズは、「公明正大」という姿勢を大切にしています。みんな公の場できちんと意見を言いましょうってことです。

矢島:飲み会で愚痴を言うんじゃなくて(笑)。

酒本:そうそう。「モヤモヤすることがあるなら、ちゃんと言おう」って、会社の方針として明確に打ち出しているんです。

だからたとえば社員で飲んでいる時に愚痴が出てきても、「これ、公明正大じゃないよな。言おうぜ」という会話の流れがよくある。

矢島:若手からもどんどん意見が言えるのは理想ですが、実際は信頼関係が出来るまでなかなか言えないと思うんです。

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竹中:うんうん。とりあえず不満があっても飲み込み、言われたことをちゃんとやろうみたいな。

酒本:サイボウズでは「公明正大」のように、コミュニケーションの手法が「共通言語」として統一されているのがポイントかもしれません。

竹中:共通言語があるのはいいですね。「社会人のコミュニケーションとして当たり前」という感覚も人によって異なると思うので、共通言語があればコミュニケーションがスムーズになりそう。

酒本:何をどこまで考えないと発言しないとか、これを考えたらどこで発言するかとか、そういう考え方のフレームワークが社内にあるんですよ。だから、発言しやすい環境なんだと思います。

矢島:なるほどなあ。

置かれた環境への疑問や焦りを、働き方改革のきっかけに

酒本:僕、実は一度、サイボウズ辞めようと思っていたことがあるんです。いっとき業務が暇になったことがあって、それが不満になって。

矢島:ええっ!

酒本:でも、不満をためたまま辞めるのも面白くないと思って、社長にいろいろ直談判をしました。たとえば、ボーナス制度を変えませんか? とか(笑)。それって、もう辞めると思っていたから言えたことなんですよね。

矢島:それまでは、会社に「依存」していたから言えなかったのかもしれないですね。

竹中:「会社にいる自分」しかいないって考えると周りの人に嫌われたら終わりだ、と考えてしまいますよね。でも人生レベルで考えれば、所属は一時のものとしてもっと気楽に言いたいことが言えるのかも。

矢島:それやな。

酒本:辞めるのは最後の手段だけど、会社に依存せずに、不安とか不満とか焦りに対する解決策をちゃんと自分と自分の会社に求める姿勢って、本当に大切ですよね。

矢島:自分が置かれた環境に対してのネガティブな感情や不満をただグチるんじゃなくて、その環境を変えてやろうとポジティブに努力する。「現場が変えていく」という姿勢を、これからも心がけていきたいですね。

サイボウズ式

執筆・小栗詩織/編集・田島里奈(ノオト)/撮影・栃久保誠/企画・星文香(CINRA)、明石悠佳

」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。 本記事は、2017年12月14日のサイボウズ式掲載記事
より転載しました。

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