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2018年04月17日 10時30分 JST | 更新 2018年04月17日 10時30分 JST

サイボウズ式:ゲイ、学生ママ、エリート──肩書きで判断されやすい私たちが、ラベリングについて話してみた

「ラベリング」は、人の魅力や輝きを、大きな箱で覆い隠してしまいます。

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人はみんな、それぞれの生い立ちの中で作られた唯一無二の個性を持った存在のはずです。

けれど、肩書きだけで人を判断し、その人の個性を見ようとしない人たちがいることもまた事実。そのように人を判断する「ラベリング」は、人の魅力や輝きを、大きな箱で覆い隠してしまいます。

「こうあるべき」「どうせ○○でしょう?」、という圧力で押さえつけようとするのはとても窮屈ですし、幸せも生まれづらいはず。それなのに、なぜ人はラベリングをしてしまうのでしょう? ゲイ、学生ママ、エリートという、ラベリングされやすい3人が語り合いました。


「ゲイ」「学生ママ」「エリート」とか分かりやすい肩書きじゃなくても、ラベリングはいたるところに存在する

太田:「ゲイ」「学生ママ」「エリート」って、強烈にラベリングされやすい3人が集まりましたね。

柳下:本当ですね(笑)。

太田:でも僕、ラベリングなんてそこらじゅうにあると思ってるんです。

キラキラ:というと?

太田:僕は大学を卒業して、最初日系大手企業に就職したんですけど、その当時はまだゲイだってこと、公にしていなかったんですよ。

サイボウズ式
太田尚樹(おおた なおき)さん。従来のLGBTサイトとは一線を画す、アートやエンタメ性を重視したWebサイト「やる気あり美」の代表。「世の中とLGBTのグッとくる接点をもっと」をミッションに掲げ、ユニークなコンテンツの発信や料理イベント、農家のプロデュースなど幅広い活動を行っている。

柳下:そうなんですか!

太田:はい。でも、公表していなくても、会社の中で「性別」というラベリングを強烈に感じました。

男は仕事ができて、何人かデートできる女の子がいて一人前。そんな雰囲気があって、先輩からは「尚樹、最近遊んでんの?」といつも言われてました。

これも一種の「男はこうあるべき」というラベリングですよね。

キラキラ:ああ、それは分かるかもしれないです。ラベリングって、別に「エリート」とか「学生ママ」「ゲイ」みたいな強烈な肩書きがなくても、いろんなところに存在していますよね。

サイボウズ式
キラキラ地獄エリートさん。 都内某大学卒業後、日系の大手企業に入社。エリートでありながら、その滑稽さや疑問をTwitter(@teihenelite)やブログで発信している。写真の顔を隠しているのはTwitterのアイコン画像。

柳下:キラキラさんも、会社の中でそのように感じますか?

キラキラ:僕が会社で一番感じるのは「年次」というラベリングですね。たとえば新規事業を立ち上げるとき、上司が「こうした方がいいんじゃない?」って言うと、だれも逆らわないで「はい!」って言うんですよ。

僕の会社の中で、先輩の言うことに後輩が従うのは絶対。事業を成功させるより、上に気に入られることが大事なんです。

「年下はこうあるべき」というラベリングがあるなと感じます。

柳下:なるほど......。

サイボウズ式
柳下桃子(やぎした ももこ)。慶應義塾大学文学部在学中。2歳の娘と夫と暮らす。サイボウズ式編集部インターン生。

キラキラ:あとは、親会社は子会社よりも偉いとか、そんな雰囲気もひしひしと感じます。

発注側・受注側の力関係の中で、無理にエリート感を出すから、自分の方が偉い、正しいと思えてしまう。すると、間違ったことも指摘できない構図が生まれる。

それで会社が回っていることに違和感を覚えますよね。日本の生産性が低いのはもしかしたらそこが原因なんじゃないかな。

太田:本当に意味のないラベリングが多いですね。

柳下:しかも、そこに違和感を持たない人が多いんですよね。

ラベリングされやすい「肩書き」と「コンプレックス」の複雑な関係

柳下:キラキラさんはエリートの道を歩んでいますが、エリートも1つのラベリングされやすい肩書きですよね。

なんでエリートの道を歩もうと思ったんですか?

キラキラ:僕はもう、完全に「父親みたいにはなりたくない!」というコンプレックスの塊がそうさせましたね。

柳下:詳しく聞きたいです。

キラキラ:父親のことは今では尊敬しているんですが、幼い頃に暴力的な面をみたこともあり、「こうなったら終わりやな」と思いながらずっと生きていました。

だから就活では、親父を超えたい、認められたい、というコンプレックスを解消するために、「エリート」という肩書きを手に入れようとして会社を受けていましたね。

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太田:僕も、けっこうコンプレックスと肩書きについては関係性があると感じます。

柳下:そうなんですか?

太田:うん。親は、小さいころからずっと僕に「エリートになってほしい」って言ってたんですよね。

でも僕はそんな道に興味はなかったし、むしろ途中で自分がゲイだっていうことにも気づいてしまった。どんどん自分がいわゆる「普通の道」から外れていくのを感じていたんです。

柳下:ふむ、ふむ。

太田:親がせっかくレールを敷いてくれようとしたのに、うまく乗れない自分がいたから、さっと行けた人に対して嫉妬があるんです。

なんで自分はうまくレールに乗れへんのやろう? そのことに対してものすごく自分に対するコンプレックスがあって、「僕だって普通の道を歩めるんやぞ!」っていうことを証明するためだけに、大学に行って、大手企業に就職しました。

キラキラ:なるほど。コンプレックスの成仏ですね。

太田:そう、まさにコンプレックスの成仏。そうしないと、次にいけない感覚があったんです。自分の傷をいやす方法は「肩書きを手に入れる」しか当時はなかったのかも。

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柳下:私はちょっとお二人とは違うかもしれなくて。むしろ「人と違う道を選んだことが自分のコンプレックスにならないように、自分の力で正しさに変えていきたい」という感じですね。

太田:いいね!

柳下:私は都内にある私立一貫校の出身なんですけど、内部進学の子たちは、エスカレーター式に大学へ進んで、大手企業に入って......って、順調にレールの上を進んでいる人が大半で。

一方で、私は一度大学4年まで行って、就職の内定も決まっていたんですね。けれど、自分のしたい研究テーマをしている先生が大学にいることを知って。内定を辞退してでも学びたい! と思い、学士入学したんです。

みんなから「いいな」って言われましたし、誇りと自信を持って自分の道を歩めた感があります。

キラキラ:学生ママになった時はどうだった?

柳下:学生ママになった時に、あるWebメディアで記事にしていただいて、それがYahoo!のトップニュースに掲載されて炎上したことがあったんです。

コメント欄にはもちろんネガティブなことがたくさん書いてあって。

太田:うん、うん。

柳下:高校時代は私も、学生時代に出産するのはレールから外れた悪いことみたいなイメージがあったし、自分がそうなるなんて考えもしなかった。

けど、やっぱり意思を持ってこの道を選んだってことを訴えたいから、就活したり、大学に入りなおしたり、ってことをブログで発信しています。

キラキラ:コンプレックスを成仏させるために肩書きを利用したり、逆に肩書きがコンプレックスにならないように自分で努力したり......おもしろいですね。

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ラベリングをどう強みにするか

柳下:肩書きっていいところもありますよね。たとえば私は就活のとき、学生ママでも受け入れてくれる会社を軸に進めていたので、説明会にあえて子連れで行ったこともあります。

「学生ママ」という肩書きを前面に押し出して、興味を持っていただいてから自分の詳細な話をする。「ああ、学生ママの子ね!」と印象に持っていただくことが多かったので、その点に関してはよかったなと思います。

キラキラさんはどうですか?

キラキラ:僕は、企業名で女の子にモテることですかね(笑)。エリートが使いがちですよね。

太田:そういうこと、本当にあるんですか?(笑)

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キラキラ:露骨にあります。友達の女の子から、「会社の人と合コン組んでくれない?」って連絡が来たり。それも企業名のおかげだろうなと。

太田:僕も「ゲイだから男の感性も女の感性も超越してる」とか言われることがあって、本当はそんなことないんですけど、それを活用してる部分はあるかもしれないです。

興味を持ってもらうことで、関係構築を早められることがありますよね。そこは、ラベリングの良さかなあと思います。

肩書きは「ジャム」みたいなもの。ちゃんと中身を食べようとしているか?

柳下:でも、肩書きだけで見られるって、やっぱり嫌ですよね。先日、サイボウズの先輩から「自分を一言で表すなら何だと思う?」と聞かれて、「楽観主義」と答えたんです。

学生ママも浮かんだんですけど、一番に押し出したくない。それよりも絶対に自分を表すいい言葉があるはずなので、そこには肩書きの部分じゃなく、性格とか内面を置きたいです。

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キラキラ:肩書きって、枝葉でしかないですよね。

太田:人に紹介されるとき、いまだに「こいつゲイやねん」って言われることがあるんです。

慣れきったことではありながら、切なさも実は感じています。僕の持っている「ゲイ」という表面上の箱が、その人にとっては僕の一番の価値なのかって。

「こいつはいいヤツやねん」とか、「イケてる連載書いてるねん」とか言われて紹介された方が、断然にうれしいです。

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キラキラ:一番理解しやすいからなんでしょうね......。僕は、肩書きってジャムみたいなものだと思うんです。

柳下:ジャム、ですか?

キラキラ:はい。ジャムって、瓶を見て「これはイチゴ味やな」とか、ある一定の情報をつかめるじゃないですか。

けど、食べてみないと本当の味はわからない。肩書きで人を判断してラベリングする人は、ジャムを瓶だけで判断して、決して食べようとはしないんですよね。

柳下:合コンで肩書きを活用するエリートは、中身を食べてもらわなくても、企業名っていう外側の瓶だけ見てもらえれば満足なのかもしれないですね。

キラキラ:そうだと思います、そのときが楽しければいいっていう。

太田:ジャムのふたを開けない、中身を食べようとしない人は、見たままの食べ物としか思ってないんでしょうね。

人には肩書き以外のいろんな面があるって気づいてからの方が、人生が楽しい

太田:人間にはいろいろな面がある、という前提になっていないから、本当は深みがあるとか、違いがあるってことが想像つかない。

キラキラ:差別はそういう、単一的に人を見てしまうところから起こるのかもしれないですね。

僕も頭の中で、エリートだとかゲイだとかカテゴライズはしてますけど、その奥に何かあるんだろうと思ってると、差別にはつながらない。

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柳下:私、実は自分がラベリングされるようになるまでは、みんな同じだと思っていました。その人がいるだけで、中も外もないというイメージ。

けれど、人にはいろんな面があるって気づいてからの方が、人生が楽しくて。周りの人たちがカラフルになったイメージです。

キラキラ:自分もラベリングされて、傷ついた瞬間に気づくんでしょうね。順調に大学を卒業して、就職して、マジョリティの肩書き通りに進んできた人が、35歳になって「まだ結婚してないの、大丈夫?」と言われた瞬間とか。

「独身」「既婚」というのも一つのラベリングだし、気づくターニングポイントになる人は多いのかも。

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太田:僕は「一人ひとり、人間はマジで全然違う」と思うようにしています。

前に、アフリカから移住してきて日本で働いてる女性に取材したら、「日本人はみんな一緒というけど、私はそう思ったことは一回もない。みんな全然違う」と言ってたんです。

普通に考えてそれもそうだなと。だからそういう考えを持ったし、持ち続けたいと思っています。

柳下:ラベリングしてしまうのは仕方ない、私たちもしていますし。でも、ジャムの瓶だけでめずらしがるのではなく、中身を食べてみようって思ってもらいたいですね。

執筆・肥沼和之/撮影・橋本美花/企画編集・柳下桃子


サイボウズ式」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。 本記事は、2017年12月27日のサイボウズ式掲載記事ゲイ、学生ママ、エリート──肩書きで判断されやすい私たちが、ラベリングについて話してみたより転載しました。

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