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2015年10月08日 16時11分 JST | 更新 2016年10月07日 18時12分 JST

スマートウォッチはSIM内蔵が便利?この秋登場の2製品が悩ましい

この秋は各社からスマートウォッチの新製品ラッシュが続いている。その中でも特徴的な2製品が「Samsung Gear S2」と「LG Watch Urbane 2nd Edition」だ。

編集部:香港在住の山根博士こと山根康宏氏に寄稿していただきました。海外携帯電話をこよなく愛し、なかでもNokiaの大ファン。所有する海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約400枚を超えている、そんな香港在住の携帯研究家です。

はじめまして山根です。

この秋は各社からスマートウォッチの新製品ラッシュが続いている。その中でも特徴的な2製品が「Samsung Gear S2」と「LG Watch Urbane 2nd Edition」だ。両製品は他社のスマートウォッチとは異なり、単体での通信機能を持っている。

Gear S2はアメリカと韓国ですでに発売されており、韓国では初回予約販売の1000台が2時間で完売したという。またLG Watch Urbane 2nd EditionもGear S2同様まずはアメリカと韓国で発売される予定である。日本での発売はまだノーアナウンスだが、気になる人は両メーカーに希望の声をぜひ届けていただきたい。 スマートフォンの通知を腕時計で受けることのできるスマートウォッチは、今年春に発売になった「Apple Watch」の登場で一気に利用者が増えると思われた。だが春先には毎日のようにネット上をにぎわしたApple Watchのニュースも最近ではあまり聞かれない。もちろん毎日便利に使っている人もいるだろうし、Apple Watch無しではもう生活できない、という人もいるだろう。

だが多くの人にとって現実にはスマートウォッチはまだ無くても困らない製品というのが実情だ。その最大の理由はスマートフォンと必ずペアで使わなくてはならないという点だろう。筆者もスマートウォッチはあのSony Ericssonが2006年に出した「MWB-100」からあれこれと使い続けているが、電池の持ちが悪いことよりも単体で使えなことに不満を感じ続けている。

筆者が使っていたMBW-100。今となっては単機能だがサイバーなデザインは今見ても美しい

しかも今や腕時計をしない人が増えている。そんな人たちの腕に"Back to the Watch"、再び時計をはめてもらうようにするためにはやはり「これだけで何でもできる」というアピールが必要だ。アプリが動くとか音声認識ができるとかそれ以前に、腕時計だけでもとりあえず何かできるという製品じゃなくてはなかなか買ってもらえないだろう。

そのためにはスマートウォッチに3G/4G機能を搭載することが必要だ。そうすれば単体でも通信できスマートフォンの存在を意識する必要が一切なくなる。もちろん普段はスマートフォンと連携しておけばよい。いざというときに単体でも通信できるとなれば、スマートウォッチは「腕にはめる超小型のスマートフォン」として自然体で活用できるのだ。

2014年の3G内蔵スマートウォッチはまだサイズが大きかった

実はSamsungもLGもそのあたりを理解しており、昨年には3G通信機能を内蔵したスマートウォッチを出している。だがどちらの製品も売れ行きはパッとしたものではなかった。理由はいろいろあっただろうが、製品としてまだ未熟なものに留まってしまったことが敗因だったと思われる。

だがこの秋の両者の新製品はどちらもその反省が十分に生かされており、機能も外観もしっかりとした魅力満載の製品に仕上がっている。Gear S2、Urbane 2nd Editionのどちらも今までのスマートウォッチには無かった新たな体験を提供してくれそうだ。

まずSamsung Gear S2は前モデルの「Gear S」がナノSIMスロットを搭載していたことにより本体サイズが大型化したことを反省してか、ソフトSIM(e-SIM、Embedded SIM)の採用に踏み切った。e-SIMはまだ一部のM2M機器やIoT機器が採用している程度で、通信キャリア側の対応も必要だ。そのためGear S2はWi-Fi版と3G版の2種類が用意され、e-SIMに対応するキャリア(国)のみで3G版が発売される予定だ。

Gear S2は円形ディスプレイのリング部分を回転させて操作する快適なUIが特徴で、単体での文字入力にも対応する。また充電はワイヤレスとなりケーブルを接続する必要も無い。さらにはディスプレイサイズは1.2インチで腕時計として毎日はめても違和感のない大きさに抑えている。そしてペアリングできるスマートフォンは過去モデルがGalaxyシリーズだけだったのに対し、他メーカーのAndroid製品にも広がった。今までのSamsungのスマートウォッチはどちらかと言えばIT製品らしさが強く出ていた。しかしこのGear S2はさりげなくはめる腕時計となり、しかもくるくるUIが楽しいという物欲を沸かせる製品になったのだ。

Gear S2のベゼルを回すUIは病みつきになるほど快適。思わずいつも回してしまいそう​

一方、LG Watch Urbane 2nd Editionは昨年モデルの「LG Watch Urbane LTE」とルックスは似ているものの中身は大きく変わった。前モデルは独自のe-SIMを採用したため韓国キャリアのLT U+のみで発売された。だが同社は韓国でもシェア3位のキャリアでありせっかくの通信機能内蔵を活用できるユーザーはわずかな数に留まってしまったのだ。これに対して2nd EditionではナノSIMスロットを搭載し、自由にSIMを入れかえることが可能になった。海外旅行へ行ったら現地のプリペイドSIMを入れて使う、なんてこともできるのだ。

またUIは前モデルが独自のWebOSを採用、ディスプレイの円周に小さい円形のアプリアイコンを並べ、回転させるようにタッチ操作できるUIは使いやすかったものの、利用できるアプリが実質固定されてしまった。これに対し2nd EditonではAndroid WearをUIに採用しスマートフォンとの自由な連携や利用できるアプリ、サービスが広がった。もちろんiPhoneとの連携も限定ながら可能だ。またディスプレイサイズは若干大きくなったが480x480ピクセルと数年前のスマートフォンにも勝る解像度となった。

Urbane 2nd Editionの実機はぜひとも早く触ってみたい。ナノSIMスロット搭載とAndroid Wearは大きな魅力だ​

この2製品、SIMの実装、画面サイズの変更、またUIの変更といずれも全く反対の方向を向いているのが興味深い。同じ韓国の2社があたかも相手をけん制するかのごとく、お互いのいいところを取り入れ、そしてお互い違う嗜好を持った製品に仕上がっているのだ。しかし両者に共通するのは「腕にはめておけば、単体でも利用できる」という利便性だ。普段はスマートフォンと連携しておき、ちょっと買い物に出るとき、あるいはスポーツクラブで運動するときは、スマートフォンを机の上やロッカーに入れたままにしておいて出かけることができる。気になる電話やSNSのタイムラインも腕時計の画面でそのまま確認することができる。

ところでスマートウォッチにもSIMが入ると、スマートフォンに入れているSIMとは別の電話番号になってしまい着信通知を受けられないと心配する声もあるだろう。またSIMを2契約するのも面倒だ。ところが海外ではすでに1契約で複数のSIMを発行、同じ番号で電話を受けられるサービスを提供しているキャリアも多い。また日本でも1契約で複数SIMを発行し、データ利用量を共有できるキャリアのサービスも海外ではお馴染みだ。SIM内蔵のスマートウォッチは、これらのサービスを使えばさらにそのメリットは活かされる。

PRADA Linkなんてものも過去にはあった。2009年、LGがPRADAフォンを出していた時代の製品

まあ難しいことは考えず、MVNOのSIMを入れ単体でいつでも通信できる腕時計として使ってみれば、これまでのスマートウォッチには無かった開放感、自由な使い勝手を得ることができる。

低価格なSIMの種類が増えてきた日本でもこれら2製品の発売は大いに期待したいところ。但しGear S2はe-SIMなので日本のキャリアの対応はすぐには望めないかもしれない。それに対してLG Watch Urbane 2nd Editionならばアメリカと韓国に続いて日本投入の可能性もありうるだろう。これまでスマートウォッチに手を出していなかった人も、単体通信可能なスマートウォッチはスマートフォンの世界観が大きく広がるだけにぜひ体験して欲しいと思う。

通信キャリア側もデータ通信利用が増えるSIM搭載スマートウォッチの登場は大歓迎なだけに、他社からも3G/4G搭載のスマートウォッチの登場を期待したい。いずれはスマートウォッチも「Wi-Fi版」「4G版」と、タブレットのように通信方式で製品を選ぶ時代がやってくるだろう。まだまだ発展途上な製品であるスマートウォッチも、単体通信機能を持てば普及も一気に進むかもしれない。

(2015年10月8日 Engadget Japan 「山根博士の海外スマホよもやま話:スマートウォッチはSIM内蔵が便利!この秋登場の2製品が悩ましい」より転載)

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