神宮外苑再開発は「グリーンウォッシング」。5万人の反対署名を小池都知事に届ける

「樹木を伐採して高層ビルを建てるのが、なぜSDGsなのでしょう?」。51,536名分の署名と思いを知事に訴えました

神宮外苑1000本の樹木を切らないで――。そう訴える明治神宮外苑前の再開発計画反対署名に、約5万1000人分の署名が集まった。

発起人のロッシェル・カップ氏は3月2日、この日までに集まった分の署名と要望書を東京都に届け、多くの人たちの思いを伝えた。

要望書では、小池百合子・東京都知事に対し、再開発計画の最終承認をしないことに加え、市民に対する丁寧な説明やヒアリング、それに議論する機会を設けるよう求めた。

署名と要望書を、東京都の都市づくり政策部土地利用計画課・課長に提出したカップ氏(中央)
署名と要望書を、東京都の都市づくり政策部土地利用計画課・課長に提出したカップ氏(中央)
提供:Change.org Japan

寝耳に水だった計画

神宮外苑の再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場を場所を交代して建て替えるほか、ホテルや高さ190メートルの高層ビルなどを建築する。業者側の計画書によると、この計画に伴い892本の樹木が伐採される予定だ。

神宮外苑の再開発対象エリアにある樹木
神宮外苑の再開発対象エリアにある樹木
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計画は、2月9日に開かれた東京都都市計画審議会で賛成多数で承認された。

しかしカップ氏は、自分も含めて計画承認の報道でこの再開発を知った人も多く、「寝耳に水」だったと話す。

カップ氏が2月16日に反対の見直しを求めるオンライン署名をスタートすると、約2週間で5万1000人が賛同し、市民の不安や反対、怒りの声が集まった。

環境への影響は?

カップ氏は、署名と要望書を東京都の政策部土地利用計画課に届けた後の記者会見で「再開発計画は、公益性や環境への影響がほとんど調べられていないまま進められている」と訴えた。

小池知事は、2月22日に開かれた東京都議会会議で再開発計画について尋ねられると「誰もがスポーツに親しめる環境や広場空間などを整備する」「SDGsの考え方にも沿ったまちづくりを進める」と説明していた。

しかしカップ氏は「環境への影響について十分な説明がまったく行われていない」と感じている。

例えば、樹齢100年の樹木を数多く伐採し、新たに高層ビルなどを建設することでどれくらいのCO2が排出されるのか。

カップ氏は「この計画で予想される環境への影響について、具体的な説明がなされていません。高層ビルや、強大な建築物を増やして、その上樹木を減らせば、膨大なCO2排出量となることは明らかです」と指摘する。

東京都は伐採対象エリアにある樹木について「なるべく移植をするよう働きかける」とし、「やむを得ず伐採する場合でも、植樹で本数は多くなる」と説明している。

しかしカップ氏は「新しく植える樹木はかなり小さく、大きくなるのに何十年もかかるので、代わりにならない」と反論したうえで、「100本を超える樹齢100年の大樹をどこへどう移植するのかについても説明されていない」とも述べている。

「小池知事は『SDGsの考え方にも沿ったまちづくり』とおっしゃいましたけれど、約1000本の樹木を伐採して高層ビルなど商業施設をたくさん作ることが、どうしてSDGsに沿っているのか、いくら考えても理解できません」

記者会見したカップ氏
記者会見したカップ氏
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都民への公益性はあるの?

公益性の問題もある。再開発では、今あるゴルフ練習場や軟式野球場は撤去され、代わりに会員制テニスクラブが作られる予定だ。

カップ氏は「軟式野球場やゴルフ練習場などが廃止され、公園中央のかなりのスペースが高価な会員制テニスクラブに割り当てられられるのは、公益性があることなのだろうか」と疑問視する。

また、野球場とラグビー場についても、立て替えの必要が本当にあるのか、納得のいく分析がされていないと訴える。

「現在の野球場とラグビー場を老朽化していると決めつけていますが、本当にそうでしょうか。改修だけでは不十分でしょうか?少なくとも野球場とラグビー場の位置をスイッチして建設する意味がどこにあるのでしょうか?」

今回の再開発計画では、有名な神宮外苑の4列イチョウ並木は伐採対象に入っていない。

しかし新しく作る野球場がイチョウ並木にギリギリまで迫るため、専門家からは根を痛めてしまう可能性も指摘されている。

さらに、4列イチョウ並木の途中から、ラグビー場へ向かう道に植えられている18本のイチョウは伐採対象だ。

カップ氏は「(知事は)緑を保存するとおっしゃいましたが、ちゃんと調査もされずに伐採される樹木の多さに、まさにグリーンウォッシング(上べだけの環境保護)と感じる市民が多いです」と強調する。

ラグビー場へ向かう道に植えられている18本のイチョウは伐採対象
ラグビー場へ向かう道に植えられている18本のイチョウは伐採対象
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これはパブリックガバナンスの問題

カップ氏によると、署名では「なんでここまでこの計画を我々は知らなかったのか」というコメントも多数寄せられた。

東京都が計画の詳細を公表したのは2021年12月14日で、縦覧期間は2週間だけだった。

カップ氏は「2週間だけだった上、12月後半とみんなが忙しい時期であり、コメントする余裕がない状況でした」と話す。

さらにはカップ氏は近隣住民から「住民向けの説明会は小さな告知があっただけで、広く知らされなかった」という話を聞いたという。

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こういった経緯から、カップ氏は「十分な情報開示もなく、市民との意見交換や議論がなされないまま拙速に進められているのが問題だ」と指摘する。

そして「これはパブリックガバナンスの問題であり、市民が直接影響を受ける問題について、市民自身が意見を述べる機会を設ける必要がある」と考えている。

そのためにも、カップ氏は東京都と小池知事に対して、市民に情報を公開し、公に議論をする場を設けるよう求めている。

「2週間でこれだけの署名が集まったのは、市民の関心が高く、そして反発が大きいということがあると思います」

「まずは小池知事に、計画の最終承認をしないというアクションをとってほしい。ぜひこのプロジェクトが、東京都が他の自治体の良い模範になるように変えてほしい。それを小池知事にお願いしたいと思います」

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