チャールズ新国王に抱く、イギリスZ世代の本音

「この国の若者たちは何十年も失望させられてきたのに、王室は何もしてくれない」と若者は口にする。
チャールズ国王(2022年9月13日)
チャールズ国王(2022年9月13日)
via Associated Press

9月8日にエリザベス女王が96歳で亡くなった。

その瞬間、イギリスは新たにチャールズ新国王を迎えた。

女王が他界してからまだ1週間しか経っていないが、家族での通夜から、国王として初めての国民への演説、北アイルランドへの訪問など、新国王は多忙なスケジュールをこなしている。

壮大な一連のイベントが行われている中、チャールズ国王は驚くほど静かに振る舞っており、バッキンガム宮殿の外では一般市民に直接挨拶し、愛と喪失、そして「親愛なる母」について語った。

一方で、エリザベス女王が25歳で即位したのに比べ、48年も遅い73歳での即位でありながら、ペンのインク漏れにすぐ苛立つ様子も見せた。

そもそも、ハンドバッグを持った女王ではなく、スーツを着た国王がテレビに映っていることに違和感を抱く人も多いだろう。そしてお金や切手の顔ももうすぐ変わることになり、新たな国王の存在に慣れるには時間がかかるかもしれない。


なぜなら、君主制への想いは人それぞれだが、女王が王室をまとめる役割を担っていたという認識に関しては、皆が共有していたからだ。

王室といえば、女王を思い浮かべる。しかし女王が亡くなった今、その未来がどうなるのか正確に想像するのは難しい。

しかし、多くの若者がチャールズ国王を想像してこなかったのは確かだ。

新国王の印象

Z世代の間では、強制的な服喪に対抗して無関心が広がっており、新国王よりも新たに得た祝日に関心がある人たちもいる。

多くの若者たちにとって、チャールズ国王に対する印象は、おそらく両親から引き継がれたものだろう。

若い世代は、ダイアナ妃とのおとぎ話のような結婚式や、その後の夫婦関係の破綻が起きた当時を目にしてはいないが、「民衆のプリンセス」に対する世界的な崇拝などについては感じてきたようだ。

盛大な結婚式の後、バッキンガム宮殿のバルコニーでチャールズ皇太子(当時)とダイアナ妃がキスする様子(1981年7月29日)
盛大な結婚式の後、バッキンガム宮殿のバルコニーでチャールズ皇太子(当時)とダイアナ妃がキスする様子(1981年7月29日)
via Associated Press

TikTokでは、全盛期のダイアナ妃の動画が再浮上し、中にはチャールズ皇太子(当時)の不倫や離婚騒動について語っているものもある。

後にダイアナ妃が交通事故で亡くなるという悲劇は、メディアで何度も語られてきた。

また、エリザベス女王の死後、彼女の苦悩や葛藤を描いたNetflixドラマ『ザ・クラウン』が再び注目を浴びている。同作品の歴史的な不正確さは別として、ダイアナ妃とチャールズ皇太子(当時)、そしてその後チャールズ皇太子と再婚することになったカミラさん(現王妃)との関係も描かれている。

こうした背景もあり、チャールズ国王に対する最初の印象は、おそらく最高のものではないだろう。

歴史的問題

王室と有色人種との関係も重要な問題だ。大英帝国とその影響、そして今も続く人種差別的で不平等な政治に、王室の手形がついていることを無視できない人たちもいる。

ロンドンに住む24歳の政策担当者で、アフリカ系の血を引く両親が植民地化と奴隷制度の影響を受けてきたと話すパリス・ウィリアムズさんは、このことについて強い意見を持っている。

「彼は王室がこうしたことに重要な役割を果たしてきたことを認めて退くこともできたのに、今は王政の歴史と遺産を引き継いでいます」と話した。

学生でバーテンダーをしている19歳のグレース・クーパーさんもその点を指摘する。

「私の知る限り、王室は植民地主義や奴隷貿易など、自分達に金銭的利益をもたらし続けている事柄について発言したことがありません。多くの人が全ての過去を無視し、彼らを称賛するのは悲しいことです」

また彼女は、王室の中でもチャールズ国王に対する強い嫌悪感を口にした。

「彼は攻撃的で人に有害なことをたくさん言ってきました。それを支持することはできません」

チャールズ国王は過去に、イギリス系アジア人の友人である実業家のコリン・ディロン氏を「スーティー(すすけた)と差別的とも取れるあだ名で呼び、批判を受けたことがある。当のディロン氏は、これはあだ名で「愛情表現」であると擁護した。

また2021年には、アフリカ系アメリカ人の母親を持つメーガン妃とハリー王子の子どもの肌の色について、ある王室関係者が尋ねたとメーガン妃がインタビューで明かし、王室全体の印象が汚された。

チャールズ新国王とカミラ王妃(2022年9月3日)
チャールズ新国王とカミラ王妃(2022年9月3日)
Max Mumby/Indigo via Getty Images

君主制は「時代遅れ」

政府に勤めている21歳のルイスさんは、新国王はとにかく「現実から離れている」と話す。

「私たちの親世代が王室を愛した時代は終わりました。私たちの世代は、差し迫った不況、気候危機、住宅の危機、エネルギーの危機に直面しています。人々は支払いに苦しみ、貧困に追い込まれています」

と話し、それに反して贅沢な暮らしを続ける王室を指摘した。

「この国の若者たちは何十年も失望させられてきたのに、王室は何もしてくれません。君主制は時代遅れで、廃止するべきです」

これに関し、前出のクーパーさんも同感だという。

「君主制はもう必要ないと思います」

しかし、存続するのであれば過去に対して意味のある対応をすることを望むという。

「君主制がこれ以上続くのであれば、何らかの賠償を行い、世界中の膨大な数の人々に与えた損害を覆そうとする姿を見たいです」と話す。

「でも残念ながら、彼らは皆現実から遠く切り離されている上、特権があり過ぎて、実行することはないでしょう」

ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。

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