表現のこれから
2020年01月14日 07時46分 JST | 更新 2020年01月14日 15時32分 JST

メディアへの「不信と期待」の声が460件集まった。現役記者や専門家が「メディアのこれから」を考えます【イベント】

1月29日(水)開催。実名報道について考えてきた記者や被害者支援の専門家たちと一緒に、ハフポストに寄せられた「声」について話します。

 「良いメディア」の定義を教えてください。

こんな題名で、読者の皆様からメディアへの率直な気持ちを募ったのは去年の12月14日でした。

土曜日の昼。質問数はあわせて13問。うち記述式の回答が6つ。どう考えても気軽に答えられるようなアンケートではありません。

月曜日の朝。集計結果を見て驚きました。200件近い回答が寄せられ、そのどれもがメディアへの根強い不信や期待感など、切実な思いを訴えているものばかりでした。

集計時点での回答数は465件。もちろん人によって「良いメディア」の姿は大きく異なります。しかし、メディア不信の源泉や、SNS時代のメディアを考えるヒントたちが、集まった声に隠されているように思えてなりません。

この回答たちを分析し、徹底的に議論を交わし、学びを得るために、有識者の皆様と「メディアのこれから」を考えるイベントを1月29日(水)に開催します。

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■そもそもなぜやるのか

実名報道や被害者遺族への取材などに批判が相次ぎ「メディアへの不信感」が渦巻くSNSで、読者の声を聞こうというこの企画。提案したのは去年の夏の終わり頃でした。ハフポスト日本版編集部でも「慎重にすべき」など様々な意見がありました。

それでも実現したいと思ったのは、私を含め、編集部の記者たちが時に「マスゴミ」と批難されるような取材や報道の当事者だったからかもしれません。

私はNHK出身です。記者として事件・事故など、人がお亡くなりになった現場や被災地に赴き、時には被害者の実名も原稿用紙に綴ってきました。

言えるのは、それが視聴率や視聴継続率のためではないということです。記者なりに、ご遺族や被災者の方々と直接接し、伝える意味があるとの信念を持ってやってきたつもりです。

しかし、それが記者の、あるいは実名報道などの基準を定めるメディアの独りよがりになってはいないか、ということは常に感じてきました。

それを象徴するのが、昨今Twitterなどで頻繁にトレンド入りする「マスゴミ」というワードではないでしょうか。ご不幸に遭われたばかりの方に記者会見で質問をし、死者を実名で報じるメディアが、社会的弱者である被害者を「虐めている」ように捉えられたのかもしれません。

もちろんテレビや新聞なども「報道する意味」を伝える努力を続けてきました。「社会全体で共有するため」や「事件の重大性や命の重さを正確に伝え、社会の教訓とするため」などです。

私は、こうした説明が説得力を持っていないのではないか?と考えました。

そこでアンケートでは、メディアの説明する「報道する意味」についてどのように思うか聞きました。

ハフポスト日本版アンケート集計結果より
回答結果

考えはあたりました。全体の約75%の方たちが「納得できない」「やや納得できない」と答えたのです。特筆すべきは、この75%という数字は、実名報道に「反対」「原則反対」と答えた人の割合よりも高かったということです。

「納得できない」と回答した人たちからは、こんな声も寄せられました。

問題に対処するのに必要なのは名前では無く、そのような事件が発生した原因究明であるため。ゆえに被害にあった方の名前は「事実」というカテゴリに入るが原因究明には不要。(20代・男性)

 

被害者の人生背景を語って悲劇のストーリーを作り上げているだけにすぎません。その点で関心が高まるのも事実ですが、事件の本質は伝わっていないと思います。(30代・女性)

一方で、「納得できる」「やや納得できる」はあわせて17.4%。次のような意見がありました。

阪神大震災の時は、延々と犠牲者の名前が読まれていました。 当時は小学生でしたが、感受性の高い頃だったからこそ、一人一人の失われた命の悲しさを感じた気がします。(30代・女性)

■皆様の声を具現化します

ハフポスト日本版では、皆様からお寄せいただいた声を専門家の手によって統計的に分析する作業を進めています。

「多くのうちの1つ」に終わらせるつもりもありません。イベントの会場では自由記述などに寄せられたコメントを「壁」として具現化します

当日は、会場に来ていただいた皆様に壁に貼られた声を自由にお読みいただいてから、会話を始めたいと思います。

登壇者には、共同通信記者であり、実名報道について海外の事例も参考に研究を進めてきた澤康臣さんをお招きします。

また、犯罪被害者支援の専門家でもある京都産業大学の新恵里准教授にもご参加いただきます。

寄せられた意見を可視化する「バブルチャート」を手がける立命館大学大学院の吉添衛さんにも加わっていただきます。

ハフポスト日本版からは、ファシリテーターを編集長の竹下隆一郎が務め、NHKで事件・事故報道などを担当したのちにウェブメディアに移籍した高橋史弥が議論に加わります。

 

イベント概要

【タイトル】メディアのこれから〜マスゴミと呼ばれて〜

【日時】2020年1月29日(水)19:00-21:00 18:00開場

【場所】3331 Arts Chiyoda B104(東京都千代田区外神田6丁目11-14)

【参加費】税込1500円

【定員】50人

【主催】ハフポスト日本版

【お申し込みURL】https://media-no-korekara.peatix.com/view

【締め切り】1月28日(火)まで

アンケートも引き続き募集しております。

 

登壇者の紹介

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澤康臣さん(共同通信社)

澤康臣さん

1966年岡山市生まれ。東京大学文学部卒業後、1990年共同通信記者。社会部で司法を計7年担当したほか外国人の人権、メディアなどをテーマに取材。外信部、NY支局などを経て2014年5月から特別報道室で調査報道や深掘りニュースを担当、16年にはタックスヘイブン(租税回避地)の秘密経済活動を暴いた「パナマ文書」報道に携わる。2006‐07年、英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。現在、早稲田大大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師も務める。

 

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新恵里さん(京都産業大学)
新恵里さん

京都産業大学法学部准教授。京都産業大学社会安全・警察学研究所所員。大阪市出身。大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了、大阪市立大学大学院生活科学研究科博士課程修了。博士(学術)。臨床心理士。

専門は被害者学、被害者政策。犯罪被害者に対する立法,支援等について,政策的観点から研究を行っている。また、各地での講演活動や犯罪被害者の支援活動(ボランティアの養成活動等)を行っている。「犯罪被害者支援-アメリカ最前線の支援システム」で、日本犯罪社会学会奨励賞受賞。2013年、2017年、法務大臣賞。

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吉添衛さん(立命館大学大学院)

吉添衛さん

立命館大学大学院 情報理工学研究科 博士後期課程1年。研究テーマは議論支援システム。関連して、情報技術による価値観の表現や意思決定などの研究に取り組んでいる。人工知能学会学生編集委員。

表現のこれから

ハフポスト日本版は「 #表現のこれから 」という特集を通じて、ニュース記事を始め、アート、広告、SNSなど「表現すること」の素晴らしさや難しさについて考えています。記事一覧はこちらです。