「魔法の手袋」で20年ぶりに指の自由を取り戻したピアニスト。バッハを演奏する姿に世界が感動

元NBAプレイヤーが称賛。「彼は泣いている、私も泣いている、あなたも泣いている」
バイオニック技術を使った手袋を装着したジョアン・カルロス・マルティンスさん (AP Photo/Andre Penner)
バイオニック技術を使った手袋を装着したジョアン・カルロス・マルティンスさん (AP Photo/Andre Penner)
ASSOCIATED PRESS

白髪のピアニストが涙をこらえながら、両手で力強くバッハを演奏する様子が、世界中のSNSでシェアされて感動を呼んでいる。

動画に写っているのは、ブラジルのジョアン・カルロス・マルティンスさん。80歳のピアニストだ。バイオニック技術を利用した手袋を使うことで、20年ぶりに指の自由を取り戻した。

 ■病気と事故で指の自由が利かなくなっていた。

AP通信によると、マルティンスさんはバッハ奏者として著名だったが、神経変性疾患と事故のために指の自由が利かなくなった。2000年以降は主に指揮者として活動するようになった。

しかし、彼はピアニストとしてのキャリアを諦めず、24回もの手術を受けた。BBCによると、2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックの開会式でピアノを弾いた際、右手の指1本と左手だけでブラジル国歌をゆっくりと演奏している。

■バイオニック技術の「魔法の手袋」で両手の自由を取り戻す

マルティンスさんが装着するバイオニック技術を使った手袋(AP Photo/Andre Penner)
マルティンスさんが装着するバイオニック技術を使った手袋(AP Photo/Andre Penner)
ASSOCIATED PRESS

2019年3月に音楽活動を引退したマルティンスさんだったが、思わぬ転機が訪れることになった。AP通信の表現を借りると、それは「魔法の手袋」によってもたらされた。

マルティンスさんの引退を惜しんだ工業デザイナーのウビラータ・ビザロ・コスタさんがバイオニック技術を利用した手袋を開発したのだ。マルティンスさんは2019年12月から、彼が再びピアノを演奏できるようになったのだ。

この手袋は合成ゴムの「ネオプレン」で覆われており、マルティンスさんの指が鍵盤を押した直後に、カーボンファイバーの板が指を上に突き上げる仕組みとなっている。マルティンスさんはこの特殊な手袋を使って10本のうち9本を動かせるようになったという。

両手の指の大半を使ってピアノを弾くのは1998年以来とみられる。

■元NBAプレイヤーがシェアして拡散。「彼は泣いている、私も泣いている、あなたも泣いている」

今回、世界中に広まった動画は、マルティンスさんが9月23日ごろに公式Instagramに投稿したものだ。インディアンエクスプレスによると、この曲は、アレサンドロ・マルチェロのオーボエ協奏曲をバッハが編曲したものだという。

元NBAプレイヤーのレックス・チャップマンさんがTwitterで29日で「彼は泣いている、私も泣いている、あなたも泣いている」と称賛を込めて動画をシェアしたところ、6万回以上もリツイートされ、世界中に拡散されることになった。

Following several injuries Brazilian pianist João Carlos Martins lost the ability to move his fingers.

But after more than 20-years of being unable to play — a pair of “bionic” gloves are bringing him back.

He’s crying. I’m crying. You’re crying...pic.twitter.com/X7g6qU4zDR

— Rex Chapman🏇🏼 (@RexChapman) September 28, 2020

AP通信に対して、マルティンスさんはピアノの演奏について「過去のスピードを取り戻せないかもしれません。どのような結果が得られるかわかりません。私は8歳の学習者であるかのように、最初からやり直しています」と話していた。

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