PRESENTED BY レゾナック・ホールディングス

イノベーション人材はどう育てる? 社長が360度評価を受けるところからスタートしたレゾナックの「人的資本経営」

レゾナックの「人的資本経営」の根幹となる「共創型人材」に必要な5つのスキルとは? 研修や評価の実践例を通じて、働き方のこれからを話し合った。

2023年1月に誕生した世界トップクラスの半導体材料メーカー 「レゾナック・ホールディングス」。前編では、朝日地球会議2023のセッション「サステナブルな社会とキャリア〜Z世代と語る人的資本経営のこれから〜」をもとに、同社が人的資本経営を目指す理由に迫った。

後編では、同社が目指すイノベーションや、人的資本経営のために実践している具体的な取り組みなどを紹介する。

朝日地球会議2023で、意見を交わす登壇者たち。右から、モデル・ラジオナビゲーターの長谷川ミラさん、レゾナック・ホールディングス最高人事責任者(CHRO)の今井のりさん、ハフポスト日本版の泉谷由梨子編集長
朝日地球会議2023で、意見を交わす登壇者たち。右から、モデル・ラジオナビゲーターの長谷川ミラさん、レゾナック・ホールディングス最高人事責任者(CHRO)の今井のりさん、ハフポスト日本版の泉谷由梨子編集長
photo by 野村雄治

相反する2つの課題解決を目指すイノベーション

イノベーションを起こす「共創型人材」を育てる前提として、泉谷編集長が「レゾナック・ホールディングスが生み出すイノベーションや製品、サービスは、どのような社会課題に向き合っているのですか?」と今井さんに質問。

今井さんは、化学が直面する「相反する2つの課題」を説明。1つ目は、地球環境を持続・発展できるものにしていくこと。2つ目が、人々の生活の豊かさを実現することだ。

「化学は、技術進化の起点として、これらの課題に貢献できます。たとえば、化学反応の熱を使って使用済みプラスチックからアンモニアをつくりだし、肥料や繊維にする循環型の原料化事業。あるいは、耐熱性の高い材料を開発することで熱効率を良くして、消費電力を少なくするなど。環境負荷を下げながら、技術の進化を遂げることに貢献しています」(今井さん)

セッションで話し合う様子。右から、長谷川ミラさん、今井のりさん
セッションで話し合う様子。右から、長谷川ミラさん、今井のりさん
photo by 野村雄治

企業が社会課題を解決する意思を打ち出すことについて、長谷川さんは「まずは発信したほうがいい」と賛同。ある日本企業の代表の「発信することは格好悪い」という言葉に衝撃を受けたエピソードを紹介し、「若者からすると、言っていないのは、やっていないと同じ」と意見。「だからこそ、胸を張って発信できる状態になってほしい。そこから企業の信頼に繋がっていくのでは」と続けた。

「共創型人材」を生み出す2つのキーワード

では、課題を解決するイノベーションを実現する共創型人材はどのように育成できるのだろうか。今井さんがキーワードとしてあげたのは「自律性」「多様性」だ。材料・製品の開発を例にとると、「自律性」とは、顧客のニーズを理解して、自分で動き回ること

今井のりさん
今井のりさん
photo by 野村雄治

「トップダウンの戦略を待っていたら、お客さまのニーズを逃してしまいます。お客さまのニーズを理解し、それを実現するために今度は誰とすり合わせたらいいのかを自分で探し、見つけていくことができる、というのが自律性です」(今井さん)

「多様性」は、異なるもの同士を組み合わせること。「多様性をマネージして『集合知』とすることが、共創し、イノベーションを起こすために必要です」と今井さんは語る。

研修には、社長自ら参加。スキルの評価を受ける

共創型人材を生み出すため、レゾナック・ホールディングスは共創型に必要な5つのスキルを定め、「共創型コラボレーション研修」をスタート。5つのスキルとは、「心理的安全性」「無意識バイアスの排除」「傾聴力」「発信力」「議論を仕切る力」だ。

共創型に必要なスキル5つと髙橋秀仁社長の評価。「トップから変えていかなければいけないということで、まず社長の点数を出しました」(今井さん)
共創型に必要なスキル5つと髙橋秀仁社長の評価。「トップから変えていかなければいけないということで、まず社長の点数を出しました」(今井さん)

「バックグラウンドの異なる多様なメンバーが集まると言うこともバラバラなので、この5つがなければ、まとめていくことができません」(今井さん)

実践段階では、髙橋秀仁社長ら経営層が先陣を切って、5つのスキルの「360度評価」を受け、研修に参加。研修で学んだことを職場で実践し、3ヶ月後に再び「360度評価」を受ける、というサイクルをつくりあげた。

photo by 野村雄治

今井さんは、「360度評価は、多様性のマネージメントに欠かせない心の発達にもつながる」と語る。「心の発達が伴わなければ、多様な相手を受け入れ、新しいアイデアに昇華することができません。評価によって、自分が思っている自分と、外から見える自分の違いをあからさまにされると、大体の方はショックを受けます」

「それを受け止めて、つらいけれど、こうしてみようかなと思うことが、心の発達です。360度フィードバックを繰り返すことによって、『行動を変えていけば成長できる』と理解できるようになるのです」

長谷川さんは、「ちょっときついですね…。(私自身は)他人からの評価をあまり気にしていないので」と苦笑する場面も。今井さんは「尖った人もウェルカムで、だからこそ意見が違っていてもいいという素地をつくっていきたい」と補足。長谷川さんが対象者を問うと、「役員から始めて、全従業員に展開して、今はマネージャーたちが自分のチームに思いを伝えていっているところです」と答えた。

長谷川ミラさん
長谷川ミラさん
photo by 野村雄治

泉谷編集長は「素晴らしいです。『発信力』も大事にされているのですね」とコメント。

長谷川さんは自身の経験と照らし合わせながら、「欧米だと『言いやすい環境だから、もっと協調しましょう』ですが、日本社会だと、『(意見を)言えないからこそ言えるようにしましょう』となっていて、面白いですね。それぞれの国、スタイルに合ったやり方なのかな、と思いました。企業に関係なく、対人関係でも使えそうなTipsです」と感想を述べた。

会社と自分自身の「パーパス」をリンクさせると自律性が生まれる

レゾナック・ホールディングスが「共創型コラボレーション研修」と同時に重視しているのが、パーパスとバリューの浸透だ。

「私たちの会社は『化学の力で社会を変える』というパーパスを持っていますが、皆さん1人ひとりにも、自分自身のパーパスがあるんです。まずはそれに気づいてもらって、自分のパーパスと会社のパーパスが重なり合うからこそ、この会社にいると思ってもらえれば」(今井さん)

「この会社の器を使って、社会を一緒に変えましょう」とよく語りかけるという今井さん。「弊社には約2万5000人の従業員がいるので、同じ志を持って社会を変えようと思ったら、絶対にできるはずです。1人ひとりが自分のパーパスに気がついて、どう貢献していきたいのかを考えれば、自律的に活動できるようになると思っています」

泉谷由梨子編集長
泉谷由梨子編集長
photo by 野村雄治

泉谷編集長は、「私たちも、取材で『何かいいことをしたいけれど、何をしたらいいかわからない』という方が多いことに気づき、読者向けに自分自身のパーパスを見つける手掛かりとなるワークショップなどを開催しました」とコメント。

今井さんは、社内の成功例として、会社と自分の人生のパーパスを重ね合わせ実践する手上げ制コミュニティ「REBLUC(レブルック)」を9ヶ月間実施したことを紹介。「9ヶ月もやるんですか?」と泉谷編集長が驚くと、「『パーパスは何?』と急に聞かれても、すぐに出てくるものではないんです」と答えた。

会社と自分の人生のパーパスを重ね合わせ実践する手上げ制コミュニティ「REBLUC(レブルック)」の様子。9ヶ月もの期間をかけて実施された
会社と自分の人生のパーパスを重ね合わせ実践する手上げ制コミュニティ「REBLUC(レブルック)」の様子。9ヶ月もの期間をかけて実施された

「REBLUCで最初に行ったのは、自分語り。幼少期に立ち返って、どんな出来事が印象的でしたか?と語り合っていくうちに、『自分の人生で大事なことってこれなのかも?』と、皆がだんだん自分のパーパスを見つけていくんです」

「今度は、『じゃあ私たちの会社でできることって何だろう?』『どうしたら私たちが社会に貢献していけるんだろう?』と考えて、好きなメンバーで議論をしていきました。9ヶ月ほど経つと、自発的な提案が出てくるように。たとえば、宇宙事業をやりたい、子どもたちと化学実験をやっていきたい、とか。どんなかたちでもいいから1人ひとりの思いから一歩踏み出してみよう、ということをしたら、とても楽しい会になりました」(今井さん)

上からの指示で動く時代は終わり

photo by 野村雄治

セッションの終盤では、3人がこれからの働き方について意見を交わす場面も。「上からの指示や命令で動く世界ではなく、横と横で機動的に繋がっていく世界」になると語った今井さん。長谷川さんは、「変化が多い時代、あたり前が変化していくことに対して、どの世代も柔軟に対応していかなければいけないと改めて感じました」と述べた。泉谷編集長は、「会社は志が一致する人たちのコミュニティのような存在になっていくのでは」とまとめた。

レゾナック・ホールディングスがイノベーションを目指す理由や、人的資本経営の具体的な施策を紹介した後編。これまでの日本の人事制度とは大きく異なる取り組みに、驚きを覚えた人もいたのでは? レゾナック・ホールディングスが人的資本経営に取り組む理由や、人的資本経営の考え方をまとめた前編はこちら。

(撮影=野村雄治、取材・文=磯村かおり/ハフポスト日本版)

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