「子どもの置き去りを防ぐために」スクールバス専用ブザーを1週間で開発。搭載実験の様子を取材【動画】

「1週間で形にできるということを証明して、行政を動かしたいと思いました」と発案者
オクト産業が開発したスクールバス専用ブザーの試作機(9月13日撮影)
オクト産業が開発したスクールバス専用ブザーの試作機(9月13日撮影)
撮影:安藤健二

静岡県内のこども園の送迎バス内に園児が取り残され、熱中症で死亡した事件を受けて、3児の父がスクールバスに取り付ける警報ブザーを考案した。都内の製造業の会社が9月13日に試作機をスクールバスに取り付けて初のテストが実施された。

考案者の男性は「1週間で形にできるということを証明して、行政を動かしたいと思いました」とハフポスト日本版の取材に振り返った。政府が10月にとりまとめる再発防止策に「防止装置の設置義務化」が盛り込まれるように官公庁に働きかけるという。

■静岡県の事故の翌日に発案。アメリカなどの安全装置を参考に

板橋区内の自動車整備工場で警報ブザーを取り付け中のスクールバス(9月13日撮影)
板橋区内の自動車整備工場で警報ブザーを取り付け中のスクールバス(9月13日撮影)
撮影:安藤健二

静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」では9月5日、3歳の女の子が約5時間にわたってスクールバスの車内に取り残されて熱中症で死亡した。バス降車時の車内点検が不十分だったのが原因とみられている。2021年7月には福岡県中間市の保育園で同様の事件が発生。国が安全管理徹底を全国の施設に求めたが、教訓は生かされなかった。

今回の事件に危機感を頂いたのが、3児の父で一般財団法人「あなたの医療」代表理事を務める畑中洋亮さんだった。海外での事例を調べたところ、アメリカなどのスクールバスに搭載されている安全装置を参考にして、日本でもスクールバス用の警報ブザーを搭載できないかと事件の翌日の9月6日に思い立った。

企業の試作品製造が得意としているオクト産業(東京都板橋区)の安達良平社長に相談したところ「やるべきですね」と即答。1週間足らずで試作機が開発された。畑中さんと交流がある世田谷区内のフリースクール「ヒロック初等部」からスクールバスを借りて、板橋区内の自動車整備工場で初の搭載実験が13日に行われた。

■試作機を実際にスクールバスに搭載して実験

ブザーの仕組みはシンプル。エンジンを切るとブザーが鳴り出し、一定時間で大音量となる。止めるには、運転士が車内の最後部まで行ってスイッチを切る必要があることから、車内にいる子どもの見落としを防ぐ仕組みだ。

ハフポスト日本版では動画撮影をしながら、このときの模様を取材。エンジンを切ってからしばらくはブザーの音は小さく、さほど気にならない。数十秒たってから、かなり大きな音で警報音が鳴り出したので、慌てて座席最後部に行ってスイッチを切った。

オクト産業では、将来の量産・市販化を念頭に実証実験を続けていく方向だ。

■発案者の畑中洋亮さんのコメント

発案者の畑中洋亮さん(9月13日撮影)
発案者の畑中洋亮さん(9月13日撮影)
撮影:安藤健二

「今回の装置を考えた背景には、自分も3人の子どもを育てていることで他人事に思えなかったことがありました。今回の事件で子どもを預けるのが怖くなってしまう親御さんが出てくるのではと思います。園や学校は『子どもを安心して預けられる場所』であるはずなのに、信頼が裏切られたように感じることで不安感が広がり、結果的に社会が不安定になってしまうのでは…と危機感を持っています」

■オクト産業の安達良平社長のコメント

取材に応じるオクト産業の皆さん。前列右から3人目が安達良平社長(9月13日撮影)
取材に応じるオクト産業の皆さん。前列右から3人目が安達良平社長(9月13日撮影)
撮影:安藤健二

「日本全国の保護者の皆さんの心を痛めた事件だったので、畑中さんから連絡をいただいて是非これを実現したいと思って急ピッチで開発を進めました。鳴っているブザーを運転手が止めるというシンプルな仕組みですが、これによってケアレスミスが防げると思っています」

(取材・執筆:安藤健二/動画編集:坪池順

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