私は“ホームレス”。「現住所=車」のバンライフが、夫婦関係をより良いものにしてくれた

結婚して1年とちょっと、夫と車に住んで日本中を旅する毎日を送っています。
(左から)菅原恵利さん・菅原拓也さん
写真提供 菅原恵利さん
(左から)菅原恵利さん・菅原拓也さん

住んでいた家を断捨離しました

はじめまして、菅原恵利といいます。私は“ホームレス”です。

以前、「子どもがいない夫婦はかわいそうなのか?」というインタビューのなかでお話した通り、私は夫である菅原拓也と一緒に「バンライフ」という、いわゆる「車上生活」のライフスタイルを選択しています。

今から2年前こと。私はそれまでの人生を何か変えたくて、住んでいた家を断捨離しました。家を持たずに旅生活をはじめてみたら、Twitterで同じように家を断捨離した男性と「そうだよね、家って要らないよね!」と意気投合、そして出会った翌月には婚約。

そして、現在結婚して1年とちょっと、2人でスズキの軽自動車・ハスラーに住んで日本中を旅する毎日を送っています。

“ホームレス”でも、生きるにはお金が必要です。食事などの生活費はもちろん、家である車にかかる自動車税、「車=現在地」ですが、住民税などもかかります(住民票は夫の実家に置いている)。だから私はライター、夫・拓也はwebデザイナーとして働き、収入を得ています。2人ともパソコンがあればどこでもできる仕事なので、働きながら「動く家」で移動する生活を満喫できるわけです。

なんて説明を人にすると、「どんな生活してるのか全く想像つかない」と首を傾げられます。

というわけで、これから私たちがバンライフを始めたキッカケや、実際にどんな生活をしているのかをこれから綴っていく予定です。

今回は「バンライフをしています」というとよく聞かれる質問について、書こうと思います。

なんで車に住んでるの?

もともと出会った当初から家がなかった私たちは、結婚を機に東京あたりで家を借りて新婚生活を楽しもうと試みました。

ところが、いざ引越しの初期費用や毎月の家賃のことを考えてみると「やっぱり高いね〜」なんて、躊躇してしまって。 駐車場代もかかるので(とか?)、夫が持っていた車(ハスラー)は「売っちゃおうか」と話し合ってたところ、夫が昔住んでいたシェアハウス仲間で、お笑い芸人として挫折後、キングコング・西野亮廣さんからアドバイスを受けホームレスになった小谷さんと、結婚報告を兼ねて3人でお茶する機会がありました。

そこで家を借りることにためらっていると相談したところ、ホームレスの先輩として「車に住むって、オモロイやん!」と爆笑しながらアドバイスをしてくれたんです。

そんな訳で、「2人とも旅が好きだし、車で日本中を旅しながら暮らすなんて、楽しそう。じゃあ、とりあえずその通りにしてみよっか」とノリで車上生活を始めたのでした。

私たちの仕事は会社に出社せずともフルリモートで完結するので、車に住んで、どこに移動しても問題なかったことも、バンライフに踏み出す大きな後ろ盾になりました。

車で移動しながら生活する様子をTwitterで発信し続けてしばらくすると、あるメディアから「2人のバンライフを取材させてください!」と依頼が。

ば、バンライフ……?

そう、ノリではじめたものだったので、当初私たちは「バンライフ」という言葉すら、知らなかったんです。

なのでGoogle検索してみたら、たしかに、まさに私たちの生活のようなものでした。 生活に必要なものを車に積み、好きな場所へと移動しながら車で生活を完結させる。どうやらアメリカで流行し、最近では日本でもそういったライフスタイルが流行りつつあるということを、そこで初めて知りました。

もしかして、この生活って最先端だったの……?

キッカケは、このように全然カッコ良くなかったですが、私たちにとって自然とフィットしたライフスタイルが、たまたまバンライフだったのです。

眠るときは、どこで車中泊しているの?

夜眠る時は、日本全国の車中泊スポットを検索・予約できるCarstay(私は、この会社の仕事をリモートで請け負っているという縁もあります)というサービスを利用しています。

車中泊で重要視したい点は「そこに深夜でも利用できるトイレがあるのか?」「安心して快適に眠れるか?」「そもそも、その場所は車中泊してOKな場所なのか?」ということです。

Carstayで提供されている場所は必ず、24時間利用可能なトイレが完備されていて、スポットによっては追加料金を払えばシャワーやキッチン、コインランドリー、電源なども貸してもらえる所もあります。公認された車中泊スポットなので、周りを気にすることなく安心して車内で宿泊できる。エアビーの車中泊版といった感じですね。

温泉施設やコインランドリーなどの駐車場の一角を利用したスポットもありますが、なかには「民駐」といって個人宅の余った駐車スペースを車中泊スポットとして登録しているホストさんもいます。そういった各地のホストさんは、もちろん地元の方なので、近くの観光スポット・グルメなどの周辺情報を教えてもらえて大助かり!

ホストさんによってはすごく仲良くなったりもして、日本全国に帰る場所がどんどん増えているような感覚です。

ご飯はどうしてるの?

ある日の「車中飯」風景。
写真提供 菅原恵利さん(撮影:稲本真也さん)
ある日の「車中飯」風景。

ご当地グルメ、地元の美味しいと噂の飲食店も巡りますが、毎日“外食”しているとお金がかかってしまうので、ちゃんと自炊もしています。

道の駅などの直売所で地元の新鮮野菜やお肉などを買い、車内でまな板と包丁を取り出して、カット。洗い物が出来る場所はなかなか無いので、フライパンを洗わなくて済むようにフライパン用ホイルで包みます。そして、コンパクトなので、場所を取らず、ハスラーでも収納しやすいコールマンの火起こし器で調理をすれば、“車中飯”の出来上がり!

新鮮で栄養豊富な食材を使った料理を日々食べているからか、今の生活をはじめてから体が軽くなった気がしてます。

お風呂はちゃんと入れるの?

私たちのお風呂は、日本全国の温泉施設です。 温泉めぐりもバンライフの楽しみの一つ。サウナが大好きなので、必ずサウナがある施設を選んでます。

はじめは、湯船に浸かるように水風呂に入っていく人を見ては、「超人なのか?」と密かに思ってましたが…。今では、サウナのプラスマイナス0に戻るような何とも言えない感覚にハマってしまいました。 「毎日温泉に入ってお金がかかりそう」と言われることもありますが、私たちは家賃と光熱費を払う必要がないので、その分のプチ贅沢です。

これからも、今のこの生活を続けるの?

それは…、正直、分かりません。

日本全国を周っているので、もしかしたら「ここに定住したい!」と思える場所と出合えるかもしれない。結局「どこも良くて選べないな〜!」と一生、車で移動し続ける可能性もあります。

何事も、やりたいと思ったらやればいいし、やめたいと思ったらやめれば良いと思っているんです、私。

私たち夫婦2人が幸せになる選択をし続けたい。

その結果、たった今、この瞬間の幸せの手段がバンライフという形なのです。

小さな空間で過ごすハスラーでのバンライフは、私たちの夫婦関係をより良いものにしてくれました。バンライフ空間は、自分たちの秘密基地です。

これからどんどん、自分たちの好きなように、車とライフスタイルをアップデートしていきたいと思っています。

(編集:榊原すずみ @_suzumi_s