折りたたみ画面ノートThinkPad X1 Fold、実際に触ってみた。

開けば13.3インチのフォルダブル。小さなかばんにも入る利点以外にもわかったこととは…?
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レノボが発表した世界初のフォルダブルWindows 10 PC、ThinkPad X1 Fold をラスベガスでさっそく触ってきました。

ThinkPad X1 Foldは「13.3インチ画面を二つに折りたためるタブレット」。畳めば約半分の底面積になり小さなかばんにも入るのは実に分かりやすい利点です。

しかし実物を見て触ってみると、折り曲げた状態でデュアル画面のペン入力デバイスとして使ったり(新OSの Windows 10Xにも対応)、「下画面」に物理キーボードを載せて9インチ級の小型ノートに変身するなど、用途と状況に応じてさまざまな姿にモードチェンジできる、多芸多才な新しいカテゴリーの製品であることが分かりました。

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Lenovo ThinkPad X1 Fold

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Lenovo ThinkPad X1 Fold hands-on at CES 2020

Image Credit: Chris Velazco / Engadget
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インテルの3D積層SoC Lakefield採用のフルWindows 10


まずは簡単に基本から。ThinkPad X1 Fold はインテルCoreプロセッサを採用した、いわゆるフルWindows 10タブレット / ノート。

主な仕様は

・13.3インチ 2048 x 1536 (4:3) フレキシブル pOLED (プラスチック有機EL)ディスプレイ
・インテルCoreプロセッサ (Lakefield)、8GB LPDDR4メモリ、最大1TB NVMe SSD
・本体サイズ:約299 x 236 x 11.5mm (カバー除けば7.8mm)、畳んだ状態では158.2 x 236 x 27.8mm
・重さ 999g (革カバー兼スタンド含む)

タブレット向けのWindowsといえば、スマホのような長時間駆動と接続性を売りにした Snapdragon 採用モデルに使われるARM版 Windows 10 もありますが、Fold は64bitアプリもネイティブで動くフルバージョンの WIndows 10 (または 10X)を採用します。

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プロセッサのLakefieldは、インテルが3D積層パッケージ技術 Foveros を初めて採用した「ハイブリッドCPU」。製造プロセスや消費電力の異なる層をワンチップに積層することで、モバイルSoCとしては高い処理速度とグラフィック性能を備えつつ、従来の1/10という非常に低い待機時消費電力で長いバッテリー駆動時間も両立させた、新しい世代のモバイル向けプロセッサを採用した最初の製品のひとつです。バッテリー駆動時間は最長11時間。

当初はWindows 10で出荷予定ですが、デュアル画面に最適化した新OSである Windows 10X のリリースを待って対応バージョンが登場します。

(10X は通常の Windows 10 を拡張したバージョンなので、10Xリリース前に通常のWindows 10 プリインストールで出荷された X1 Fold も後からアップグレードできそうなものですが、肝心の 10X についてはマイクロソフト側がまだ詳細を出していないため、現時点では「後から10X版も予定」という書き方になるようです)。

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画面は開けば「ほぼ」平坦。スタイラス入力にも対応

フォルダブル端末としてまず意外だったのは、開いた状態での歪みやたわみがほとんどなく、ガラスカバーの一般的なタブレットのようにほぼ平坦になること。

フォルダブル端末は折れる柔軟なディスプレイを採用する原理上、従来のガラスカバーの画面よりもどうしても柔らかくなり、尖ったものや強い力が苦手なイメージがありましたが、X1 Fold は先端の細いスタイラスが標準で付属します。

実際に開いてみると完全に平坦というわけではなく、特に斜めからみると中央部分になだらかな凹凸があることが分かりますが、はっきり分かるシワや継ぎ目はまったくなく、指を滑らせても中身の感触が伝わるようなふわふわ感はありません。


開発を主導したレノボ大和研究所のディレクター&プリンシパルエンジニア 塚本泰通氏によれば、この強靭なフレキシブル画面の秘密はヒンジの構造と、有機ELを裏で支える層の素材。ヒンジの開発には大まかに6種類の構造とさらに多数のバリエーションを試行錯誤して、完成まで「2、3年」を要したといいます。

折れ曲がるしなやかさとスタイラスに耐える強さを両立するため、有機ELディスプレイを支える支持層の素材は50種類以上を試したのち、衝撃に強い特性からカーボンファイバーを採用したとのこと。

ThinkPad X1 Carbon が自慢のレノボなんだからまず最初にカーボンを試せよ、と言いたくなりますが、当初はとにかく強い素材として金属を試すなど、テストを繰り返すうちに必要な特性が判明し、最終的にカーボンにたどり着くことができたということのようです。

レノボによれば、X1 Fold は折りたたみ回数テストのほか、他の ThinkPad と同じ画面の耐久性テストをクリア済み。ほかのフォルダブルディスプレイ端末では、うっかりヒンジ部分に爪を立てて後を残さないよう注意が必要なものもありますが、最初からペン対応で硬い感触の X1 Fold は比較的怯えずに使えそうです。

キーボードを載せてミニPCに。日本発らしい狭所適応

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従来のデュアル画面デバイスの使い方として、「下画面」にソフトウェアキーボードを表示すればノートPCライクに使えますという提案はよくありますが、それ以上にグッと来たのがこちら。

X1 Fold用のミニキーボードは Bluetooth 接続で本体から離しても使える一方、画面の下半分に乗せることで、物理キーボードを備えた9インチ級の小さなノートとして使えます。

この状態ではせっかくの画面を片方 / 半分潰してしまうことになるものの、飛行機の席のトレイや狭いテーブル、膝のうえでも使え、スマホより効率のよいテキスト入力が可能です。

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一体化されたレザー素材カバーはペンホルダーとスタンドとしての機能もあり、開いた13.3インチ状態でも自立できます。広い場所があれば、この状態で付属ミニキーボードを使って入力することも。

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カバーを着けて、キーボードごと折りたたんだ状態の側面はこちら。

オリジナルの ThinkPad が日本の松花堂弁当箱にインスピレーションを受けてデザインされた逸話も、薄型化が進む最近のThinkPadではあまり通じなくなりましたが、X1 Fold は弁当箱どころか重箱のような圧倒的存在感です。

キーボードを真ん中に挟んだままワンセットで持ち運べる設計は、ThinkPad の名にふさわしいプロダクティビティ製品であること、キーボード載せモードが単なるオマケや思いつきではなく、環境や作業に最適なフォームへ変形することを大真面目に考えたことを伺わせます。

キーボードは本体からワイヤレス充電されるため、バッテリーの交換や個別の充電は不要。

(折りたたみディスプレイは折り目部分の半径を稼ぐため、ヒンジ部分で弧を描くよう厚みをもたせる設計が一般的なので、この「キーボードを挟んで収納できます!充電できます!」は、いずれにしろ発生するスキマをうまく埋めて一石三鳥に活用する意味もありそうです)。

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真横から。二つ折りながら、革カバーと本体でキーボードを挟む構造なので5層。キーボードを抜けば「具なしサンドイッチ」的にもできます。

この状態ではそもそも画面が見えないため持って使うことはできず、 分厚くて使いづらいことはありませんが、厚みといい約1kg弱の重量といい、大判の革装手帳やハードカバー本を片手で持ったときのようなずっしり感があります。

一般的なデタッチャブルの 2 in 1 やタブレットのキーボードカバーはあれば便利である一方、重さや取り回しを考えて持ち出さなかった日に限って必要になるのが宇宙の法則。X1 Fold は、カバー / スタンドとキーボード、ペンをひとかたまりに持ち運べるのも魅力です。


作業と環境に適応するモーフィングの魅力。実用性とギミック感のよくばりセット


世界初の製品であるだけに、重さや厚さ、生まれてくる時代を間違えたような太ベゼルを含め、残念な点や課題、長く使ってみないと分からない点も多々あります。

特に画面の耐久性については、レノボいわく厳しいテストをクリアしており、実際に触れても意外なほど硬く強そうな感触でしたが、実際の使用環境でのアクシデントにどこまで耐えられるか、長期間の使用でどうなるかはまだ分かりません。

また日本など通勤時間が長く狭い場所で使うことを想定したといいつつ、畳んだ状態では当然使えないことから、「小さなタブレット」としての使い方はできません。(画面を内側にたたむうえに外画面がなく、360度ヒンジでもない)。

当然すぎることながら、畳んでも重さは半分にならないうえに、実際には変形機構のためにやや重くなるのが現実。13.3インチでケースつきのフルWindows 10端末として999gは決して重くないものの、片手で長時間持って使う重さではありません。

そうした点を考慮しても、「大きい方」タブレットのサイズと可搬性の両立はやはり大きな魅力。サイズも形状も様々なデバイスのどれを持ち歩くか、どの組み合わせにするかは、モバイルワーカーやデジタルガジェット好きにとって永遠の課題ですが、「大きなタブレットを縦持ちして資料を読み込む」「2画面の片側で調べ物やコミュニケーションをしつつ、もう片方でペンを使って注釈」「狭い場所や膝の上で安定して、物理キーボードを使って入力」といった、従来は別のデバイスを使いわけていたようなワークフローを、一台で変形してこなせるのは無二の強みです。

ごく短時間のハンズオンでしたが、世界初を焦ってとりあえず出した感はなく、ThinkPadの名にふさわしい実用性を大真面目に考えた製品という印象です。


(おことわり:あくまで実用品ではありますが、折りたたみの機構の操作感やミニキーボードの仕掛け、スライドしてスタイラスホルダーがせり上がるカバーのギミック、複数モードへの移行などなど、いわば「可動と変形が多くて付属アイテムも充実したロボットのオモチャ」的な楽しさがあったこと、その楽しさでファーストインプレッション全体にバイアスが掛かった可能性があります。それも大事と思うガジェット好きには文句なくおすすめです。)


ThinkPad X1 Fold は2020年中頃、2499ドルで販売予定。Windows 10Xバージョンは今年後半に発売される見込みです。

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