アートとカルチャー
2020年02月10日 13時20分 JST

カズ・ヒロ氏がアカデミー賞 鼻の穴までこだわりぬいたメイクアップ&ヘアスタイリング賞の舞台裏

日本出身のカズ・ヒロさん(旧名・辻一弘)が、「スキャンダル」で第92回アカデミー賞を受賞した。毎回3時間に及ぶメイクで、女優を完全に変身させたという。

第92回アカデミー賞で、メイクアップアーティストのカズ・ヒロ(旧名:辻一弘)さんが「メイクアップ・ヘアスタイリング賞」を受賞した。2年ぶり2度目。

カズ・ヒロさんは京都府出身。受賞した『スキャンダル』では特注の鼻栓を用意するなど、こだわりぬいた技法でキャストを変身させていた。

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カズ・ヒロさん(中央)

■あまりのそっくりさに...

ヒロさんは『スキャンダル』でメイクを担当したときのことをハフポストUS版に語っている。

『スキャンダル』は、2016年に米放送局で実際に起きたセクハラ告発事件をテーマにした作品。シャーリーズ・セロンやニコール・キッドマンなどが実在する女性キャスターを演じている。

このなかでヒロさんは、セロンさんの鼻を大きくしてキャスターのメーガン・ケリーさんに近づける為、3Dスキャナーとプリンターを使い、特注の「鼻栓」を作成するなど持ち前の独創性を発揮していた。

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左:シャーリーズ・セロン 右:映画『スキャンダル』でセロン扮する女性キャスター、メーガン・ケリー

ヒロ氏はセロンの頭の3D鋳型をとり、セロンとケリーの特徴と違いを研究し、どんな補装具が必要かを考えていった。

「難しいのは、2人がどんな顔をしているかを皆が知っていることです。...もしメイクが半ばケリーさんだったら、人々は『セロンの顔に何かついてる』と思われてしまいます。だから、完全に変身する必要があったのです。また、メイクは最低限にしたかったんです。メイクを厚くすると、演技がしにくいからです。だから、最も重要な部分以外は減らしました」

撮影が始まってからも、瞼や顔につけたシリコンなどの微調整は続いたという。セロンは目の色を濃くするカラコンも装着した。

このメイクアップの過程は毎回、約3時間に及んだという。

「セロンさんは、自分の名残を鏡で見たくなかったんです」とヒロさん。その出来栄えたるや、ケリーさんの家族すら酷似ぶりに2度見するほどだったという。

■高校時代から異彩

高校時代、授業で出された課題から作り出した作品からも、その才能がずば抜けていたことがうかがえる。

ヒロさんが龍谷大平安高校に通っていたときのこと。美術の授業を担当した宮永良二郎さんが30センチ四方、厚さ3センチの朴(ほう)の木の板を生徒たちに配った。

具体的なテーマを設けず、自由な発想で創作をさせる課題だ。

大体の生徒ならば作りやすい皿などを思いつく。しかし当時高校3年生だったヒロさんが作り上げたのは、ダンボールにしがみつくフンコロガシの姿だった。

宮永良二郎さん提供
カズ・ヒロさんが作った「フンコロガシ」

使用したのは彫刻刀とサンドペーパーだけ。宮永さんは「独創的な発想力だけでなく、段ボールの表面や寄っているしわ、昆虫のしぐさなどを精密に表現する力、それらを実現できる高校生離れした技術。すべてがあいまった作品でした」と振り返る。

ヒロさんはその後、ハリウッドで『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』で初のアカデミー賞を受賞。この際、チャーチルを演じたゲイリー・オールドマンさんから「(メイクが)あなたでなければ出ない」と熱烈なオファーを受けたという。