「痛くてマスクできない」。感覚過敏の中学生社長は、子どもたちのために「カード」を作った【新型コロナ】

触覚過敏でマスクがつらい...。そうした子どもたちのために、当事者でもある中学生社長が、表示カードを作成。保護者らに好評だ。
マスクできない事情を説明するマーク
マスクできない事情を説明するマーク
感覚過敏研究所

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出時のマスク着用が求められている。

だが、肌に触れる刺激に痛みや不快感を感じる「触覚過敏」の症状があり、マスクを着けられない人たちがいる。

自身も触覚過敏や味覚過敏などがある、株式会社「クリスタルロード」代表の加藤路瑛(じえい)さん(14)が、マスクを着けられない子どもたちのためにカードを作成。自身が所長を務める「感覚過敏研究所」のサイトで、自由にダウンロードできるよう公開している

苦手な肌ざわりがあります

触覚過敏のため マスクが付けられません

よろしくおねがいします

カードには、「過敏モード」の表情をしたハリネズミのイラストが添えられている。

■事情を認めてもらえる安心感

「カードがあれば、マスクを着けること自体が息子にとって大変なことなんだと理解してもらえる。事情を認めてもらえる環境なら安心です」

札幌市の鈴木真理さん(39)は、そう歓迎する。

鈴木さんの小学6年の長男(11)は、触覚や味覚、聴覚などに過敏症状がある。

マスクをすると呼吸が苦しくなったり、マスク内の息で湿った感触に気分が悪くなったりするため、1時間以上の着用ができないという。マスクを使えないこともあり、新型コロナの感染が広がってから長男は毎日、日中のほとんどを自宅で過ごした。

長男が通うフリースクールは、新型コロナの影響で休止が続いていたが、近く再開する。鈴木さんは加藤さんのカードを知り、「感覚過敏のためマスクが苦手です」と書いた「苦手」バージョンを作ってもらった。通い始めたら、長男にカードを携帯させるつもりという。

「登校が始まれば、気持ち悪くなってマスクを外してしまうこともきっとある。『何でマスクしないの?』と厳しく言われたり、疑問を持たれたりすることなく、周りの人が配慮してもらえたら本人も過ごしやすいと思います」

マークを編み出した加藤路瑛さん。背景の壁紙は、Zoomを使う聴覚・視覚過敏の人向けに作った
マークを編み出した加藤路瑛さん。背景の壁紙は、Zoomを使う聴覚・視覚過敏の人向けに作った
HuffPost Japan

■「汚客様」のツイートに心を痛めた

加藤さんがカードを着想したきっかけは、Twitterであるイラストを見たことだった。

「全国の汚客様(おきゃくさま)へ」と題するイラストは、マスクせずに店を訪れる子どもを連れた保護者に対し、子への着用を求める内容だった。この投稿に対して、触覚過敏のある子の保護者とみられるTwitterユーザーが「悲しい、辛い」とツイートしていた。

加藤さんは「どうしてマスクをしていないのか。ひと目で分かってもらえるために何かできないかと考え、表示カードを思いつきました」と明かす。

加藤さん自身、触覚過敏がある。マスクの布やひもに触れる頬が痛む。合わない靴下だと縫い目や締め付けで激しい痛みを感じ、ひどい時は靴を履けないことも。幼い頃はこうした痛みや違和感をうまく伝えられず、「ただのわがまま」と誤解されたこともあった。

カードを作ったのは、言葉で気持ちを伝えるのが難しい子どもも、意思表示できるツールが必要と考えたからだ。

■「つまずかないで登校できた」反響相次ぐ

「マスク必須が登校の条件だったけど、このカードのおかげで学校に理解してもらえました。新1年生、マスクでつまずかないで登校できています」

「今練習中だけど、無理ならこういうカードも利用したい」

加藤さんの元には、カードへの好意的な反響が寄せられている。

「カードはあくまで最終手段。カードを持っているからマスクしなくていいよね、という傾向になってほしいわけではありません。マスクをしてほしいという気持ちも当然だと思うからです。ただ、どうしても着用できない人たちがいることを知ってもらい、当事者の目線から考えてもらうきっかけになったらいいなと思います」

感覚過敏研究所では、視覚や味覚など五感の感覚過敏を表示するマークを作成し、普及に取り組んでいる。

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