「日本の印象」中国で大幅悪化。良くない印象66.1%「政治家の言動が不適切」【共同世論調査】

日本人では、中国の印象が良くないとしたのは90.9%と過去4番目の水準で悪かった。

中国に対して「良くない印象」を持つ日本人は90.9%と、2005年の調査開始以来、過去4番目に悪くなっていたことが、日本と中国の共同調査で分かった。

また、日本への印象を「良くない」と答えた中国人の割合は66.1%となり、前の年から大幅に上昇。印象が悪化に転じるのは8年ぶりで、調査を実施したシンクタンクは「米中対立もあり両国で安全保障に対する懸念が高まる一方で、この1年間では政府レベルの取り組みがなく不安が放置された結果だ」などと分析している。

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Yaorusheng via Getty Images

■5年ぶりに「良くない」9割台

この調査は日本のシンクタンク「言論NPO」と中国国際出版集団(中国外文局)が2005年から毎年、共同で実施しているもので、今年で17回目。日本と中国でそれぞれ18歳以上の人を対象に、アンケートや聞き取りなどで調べた。有効回答数は日本側1000、中国側1547だった。

この中で、中国への印象については、▽「良くない」と答えた日本人は21.3%、▽「どちらかといえば良くない」は69.6%で、あわせて90.9%にのぼった。

日本側から中国への印象が最悪だったのは2014年の93.0%で、2020年は89.7%。9割台を超えたのは2016年以来5年ぶりで、過去4番目に悪い数字となった。

逆に、中国への印象が▽「良い」「どちらかといえば良い」としたのは9%。過去最高は2007年の33.1%だが、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や尖閣諸島の国有化があった2010年代前半から落ち込んでいて、2020年時点で10%。2021年はさらに1ポイント落ち込んだ。

日本側の悪印象の理由としては「尖閣諸島周辺の日本領海や領空をたびたび侵犯しているから」が58.7%でトップ。「中国が南シナ海などでとっている行動が強引で違和感を覚えるから」(49.2%)、「国際的なルールと異なる行動をするから」(49.1%)が続いた。

■政府レベルに課題

調査では、中国人の日本に対する印象が急激に悪化していることが浮き彫りになった。

日本への印象を▽「良い」と答えたのは2.3%▽「どちらかといえば良い」は29.7%で、あわせて32%だった。2020年の45.2%から13ポイント以上も下がっていて、直近では2017年(31.5%)に近い水準だ。

一方で▽「良くない」「どちらかといえば良くない」は66.1%。こちらは去年の52.9%と比べて大幅に上昇した。

悪い印象の理由としては「中国を侵略した歴史についてきちんと謝罪し反省していないから」が最多の77.5%を占める例年通りの傾向を示した。一方で、「一部の政治家の言動が不適切だから」が9ポイント近く上昇し21%に達した。

また、「日中関係の発展を妨げるもの」について聞いた別の質問では、「領土をめぐる対立」が62.4%と最多だった。ほかにも「両政府の間に政治的信頼関係ができていない」が29.3%と、前の年よりも10ポイント以上増加し2番目の要因に挙げられた。

ちなみに、日本に対する「良い印象」の理由としては▽「日本製品の質は高いから」が52.6%、▽「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高いから」が49.4%と並んだ。

日本側の調査を担った言論NPOの工藤泰志代表は「米中対立もあり両国で安全保障に対する懸念が高まる一方で、この1年間では政府レベルの取り組みがなく不安が放置された結果だ。来年は日中国交正常化50周年だが、今から日本と中国がどのような関係を目指していくか本質的な議論をするべきだ」と話した。

また、中国で調査が実施された時期は8月25日から9月25日と、日本で自民党総裁選が実施されていた時期とも重なる。この際、候補者の発言などが中国メディアで批判的に報じられた影響もあると指摘した。

この影響について質問があると、中国側の高岸明・中国国際出版集団副総裁は「タイミングや環境の影響はあると言わざるを得ないが、過去の調査と突き合わせても一貫性があり、信頼に値するデータだ」と述べた。

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