羽生結弦のSP曲「序奏とロンド・カプリチオーソ」とは? 「音楽の解釈」で満点獲得した勝負の1曲

ショートプログラムでは、清塚信也さんが編曲・演奏した「序奏とロンド・カプリチオーソ」のピアノバージョンを使用。羽生結弦選手は「生きる活力と滑る活力」をもらったと語る。
男子ショートプログラム(SP)で演技する羽生結弦選手=2021年12月24日、さいたまスーパーアリーナ
男子ショートプログラム(SP)で演技する羽生結弦選手=2021年12月24日、さいたまスーパーアリーナ
Atsushi Tomura via Getty Images

2月8日、北京オリンピック・フィギュアスケートの男子ショートプログラム(SP)が行われた。五輪3連覇を目指す羽生結弦選手は、95.15点で8位だった。

冒頭で予定していた4回転サルコーに失敗し、首位を逃した。羽生選手は10日のフリーで、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦することを宣言している。

羽生選手が、今季のSPに選んだ楽曲は、クラシック曲の「序奏とロンド・カプリチオーソ」。

バイオリン演奏で知られる曲だが、羽生選手は世界的ピアニストの清塚信也さんに編曲・演奏を頼み、ピアノバージョンを使用した。

どんな曲なのか? 羽生選手はこの曲にどんな思いを込めたのだろうか。

「音楽の解釈」で驚異の10点満点

羽生選手が「序奏とロンド・カプリチオーソ」のショートプログラムを初披露したのは、2021年12月に行われた全日本フィギュアスケート選手権大会だった。

羽生選手は、演技構成点の一項目である「音楽の解釈」で驚異の10点満点を叩き出した。

「序奏とロンド・カプリチオーソ」は、フランスの作曲家カミーユ・サン=サーンスが、スペインのバイオリニスト、パブロ・デ・サラサーテのために書き下ろした楽曲だ。

スペイン調で、切なげなイントロの調べから、ラストに向かって情熱的に展開していくのが特徴的。ジャンプ、ステップ、スピン、そして表現力、芸術性と、全方位で高い実力をもつ羽生選手の、さまざまな魅力が発揮される楽曲だ。

全日本では、最後のコンビネーションスピンから会場の拍手が止まらない、圧巻の演技を見せた。羽生選手は2年連続6回目の優勝に輝いた。

「生きる活力と滑る活力」をもらった清塚信也さんのピアノ

編曲・演奏を担当した清塚信也さんは、国内外のコンクールで数々の賞を受賞している世界的なピアニスト。日本では、クラシックを題材にした人気漫画『のだめカンタービレ』のドラマ化で吹き替え演奏を担当。アーティストとの即興演奏などにも挑戦してきた。

2人は、2018年に平昌オリンピック後のアイスショーでコラボした経験があった。

羽生選手は全日本のSP前日の会見で、選曲の理由について明かしている。

新プログラムのため、「羽生結弦にしかできない表現」を出せるピアノ曲を探していたが、「これだな」と心が踊るような楽曲には、なかなか出会うことができないでいたという。

昔から「ロンド・カプリチオーソ」で滑りたいという気持ちはあり、自分らしい表現ができるピアノバージョンを清塚さんに依頼した。

羽生選手は「先シーズン、すごく心が折れてつらかった時期に滑らせていただいて、本当に生きる活力と滑る活力をいただいた清塚さんのピアノにしたら、もっと自分も気持ちよく滑れるのではないか、もっと気持ちをこめて滑ることができるのではないかと思った」と語った。

全日本での競技のあと、清塚さんは自身のTwitterにこう感想をつづった

「ピアノアレンジをしている時点で、氷上の演技を想像し、涙が出ました。サン=サーンスは天才すぎて孤独を歩んだ音楽家。羽生結弦選手というヒーローを、その背負っている人々への真心を間近で見ると、誰も歩んだことのない“道”が見えました。今回のロンカプは、そんな表現をしたつもりです」

【UPDATE】2022年2月8日15:00

競技の結果について加筆しました。

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