「足でホルンを奏でる」情熱の音色がこれだ。生まれつき両腕のない演奏家が音楽フェスデビュー

5歳でホルンの練習を始めたフェリックス・クリーザーさんはイギリスで開催される「BBCプロムス」に初出演します
ホルン奏者のフェリックス・クリーザーさん
ホルン奏者のフェリックス・クリーザーさん
Felix KlieserさんのInstagramから

生まれつき両腕のないホルン奏者のフェリックス・クリーザーさんが、イギリス・ロンドンを中心に開催される世界最大級のクラシック音楽フェスティバル「BBCプロムス2023」に初参加することが決まった。

BBCプロムスは、2023年7月から9月にかけて開催される一大音楽イベントで、「幻想交響曲」で知られる19世紀のフランスの作曲家エクトル・ベルリオーズによるクラシックからボリウッド映画音楽、大規模なシンフォニー楽団コンサートから室内楽コンサートまで幅広いラインナップが用意されている。

才能ある若手に活躍の場を与える機会にもなっており、今回も50人以上のアーティストがプロムスデビューを飾る。その1人が、「ホルンを足で吹く音楽家」としても知られるドイツ出身のクリーザーさんだ。8月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでモーツァルトの曲を演奏する。

クリーザーさんは生まれつき両腕がなかったが、普通の子どもだったと自伝で語っている。自身の公式サイトによると、5歳で初めてホルンのレッスンを受け、13歳の時に現在のハノーファー音楽演劇メディア大学で学び始めたという。

両腕がないため、ホルンは器具を使ってマウスピースが口元にくるように固定し、左足の指で3つのレバーを押して演奏する。

2016年にはシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭で「レナード・バーンスタイン賞」に選ばれ、2021年からイギリス南部を本拠とするボーンマス・シンフォニー・オーケストラと2年間一緒に演奏活動を行う取り組みに参加している。

初参加となるBBCプロムスでは、8月2、3日にロイヤル・アルバート・ホールでボーンマス・シンフォニー・オーケストラと共にモーツァルトのホルン協奏曲第4番を披露する。

クリーザーさんはBBCのインタビューに「プロムスへの参加を楽しみにしています」と答え、演奏曲について「これまでに作曲されたホルン協奏曲の中で最も美しい。人間臭くもあり、情に訴えるものでもあり、おもしろくもあるといういろんな要素が詰まっていて、みんなに楽しんでいただけると思います」と述べている。

BBCプロムスは、毎年夏にロンドンを中心に開催される世界最大級のクラシック音楽フェスティバル。手の届くチケット代でより多くの人に良質な音楽を楽しんでもらおうと1895年に始まった取り組みで、1927年からイギリス公共放送BBCが運営を担っている。

クラシック音楽、ミュージカル、映画音楽、ポップス、ジャズなどを、世界で活躍するアーティストや団体が演奏する。ロイヤル・アルバート・ホールをはじめ、イギリス国内の歴史ある会場で開かれるところも見所の一つだ。

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