社会課題の解決と経済成長の両立を目指す「インパクト投資」、日本は1年で4.4倍に。最新の国内外の動向と課題は?

GSG国内諮問委員会事務局監修のもと社会変革推進財団(SIIF) は「日本におけるインパクト投資の現状と課題 2022年度調査報告書」を発表した。

インパクト投資を推進するGSG国内諮問委員会事務局と社会変革推進財団(SIIF) がこのほど、インパクト投資に関わる金融機関や機関投資家を対象に行ったアンケート調査の結果をまとめた「日本におけるインパクト投資の現状と課題 2022年度調査報告書」を発表した。

インパクトとは、「事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果」のこと。これまで投資はリスクとリターンの2つの軸で判断されてきたが、ここに第3の軸として「インパクト」を加えたのが「インパクト投資」だ。

投資における第3の軸
投資における第3の軸
インパクト投資拡大に向けた提言書2019, Global Steering Group for Impact Investment (GSG) 国内諮問委員会, 2020年4月

ESG投資は「リスクヘッジ」の側面が大きく、社会や環境への影響を測定・可視化しないケースもあるが、インパクト投資は社会課題の解決を目的にポジティブな影響を生み出す意図を持って行われ、その影響の測定や可視化が必須となっている。

SIIF常務理事の工藤七子さんは「投資の世界で『リスクとリターン』以外の価値判断は“タブー”でした。ところが、今や『インパクト』は“一部の人”が提唱しているものではなく、世界的にメインストリーム化が進んでいます」と話す。

SIIF常務理事の工藤七子さん
SIIF常務理事の工藤七子さん
SIIF提供

実際に国内外を見渡すと、2021年から2022年の1年間だけでも、インパクト投資を取り巻く状況は一気に加速している。本報告書を元に、インパクト投資の現状と背景、そして日本およびグローバル市場での動向を解説する。

インパクト投資残高は5兆8,480億円、急成長の背景は?

報告書によると、2022年のインパクト投資残高は5兆8,480億円、前年比4.4倍と急速に広がり始めている。

その内訳をみてみると、上場株式(34%)と融資(48%)で合わせて8割を占めており、大規模化しやすいところへお金が流れているのがわかる。

こうした背景もあり、これまでインパクト投資に取り組んできた機関だけでも投資残高の成長率は前年比約3.7倍、大手の保険会社や銀行などの新規参入社数も約1.5倍に増加している。

では、どんな分野にインパクト投資が集まっているのだろうか?インパクト投資残高ベースでみると、「健康/医療」が29%で最も多く、次いで「気候変動の緩和(再生可能エネルギー等)」が25%だった。

また、今後のインパクト投資の計画としては「増やしたい」という回答が84%と最も多く、今後も成長が見込まれる。

インパクト投資取り組み期間の今後のインパクト投資の計画
インパクト投資取り組み期間の今後のインパクト投資の計画
SIIF提供

国内外の動きも加速し続けている

国外の動きも活発だ。グローバル調査(GIIN)によると、全世界のインパクト投資残高は約160兆円(1.2兆ドル)に達するなど、規模が拡大している。

日本国内でも大きな動きがあった。政府は22年6月に発表した「新しい資本主義グランドデザイン」と「骨太方針 2022」で「インパクト投資の推進」を明記し、金融庁は10月、「インパクト投資等に関する検討会」を設置した。

また、22年6月に経団連は「“インパクト指標”を活用し、パーパス起点の対話を促進する」報告書を公表。10月にはインパクトスタートアップ協会が発足するなど、この1年でインパクトスタートアップ市場のプレイヤーが揃いつつある。

明けた2023年はまさに「インパクト投資元年」とも言えそうだが、今後インパクト投資を拡大していくには、どんな課題が残されているのか。

株主・投資家・経営トップの関心が高まれば…

調査で挙げられた「インパクト投資を促進する条件」を見てみると、最も多かったのが「アセットオーナーや株主・投資家など、自社のステークホルダーからの関心・エンゲージメント」(42%)だった。

続けて「経営トップによる、インパクト創出への関心・理解」(40%)、「社会でのインパクト投資への認知度、関心度向上」(35%)と、「お金を出す側」の関心の高さが肝になっていることが伺える。

インパクト投資により取り組みやすくなる条件
インパクト投資により取り組みやすくなる条件
GSG国内諮問委員会事務局・社会変革推進財団(SIIF) より

昨年までは、インパクトをどう評価し可視化するのか、「インパクト測定・マネジメント(IMM)のルール化と普及」がトップだったが、2022年は4位という結果に。

レポートでは「IMMの普及が一定進んだとも読み取れるだろうし、過去1年間の市場の発展に加えて、経営トップやアセットオーナー(顧客)の一層の関心が求められていると言えるだろう」と分析している。

工藤さんは「日本の年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、実は“世界最大の機関投資家”です。その財源は国民一人一人が払っている保険料なので、私たち自身が最終的な投資家とも言えます」とコメント。

「一般消費者でインパクト投資の意味を知っている人はわずか7.1%。年金や買い物、銀行への預貯金や投資など『お金を出す側』の一人として、インパクト投資をより多くの人に知ってもらいたいです」

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