桜はバラ科だった?花見シーズンはすぐそこ。知っておきたい桜の基礎知識

知っているようで知らないかも。花見シーズンに向けて、桜の基礎知識を紹介します。
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3月23日(土)、今年全国で初めて高知で桜が開花しました。来週にかけて桜の開花が進む見込みで、桜の花見のシーズンはもうすぐそこまで近づいています。

これから「咲き始め」「もうすぐ満開(七分咲き)」「満開」「桜吹雪」と、いろんな桜の様子を楽しめる時期ですが、皆さんはどのタイミングがお好みですか?

ウェザーニュースが2022年に実施したアンケート調査では「満開」がもっとも多く、全体の35%を占めました。次いで「もうすぐ満開」が32%という結果で、やはり満開に近いタイミングが人気のようです。

一方で、「桜吹雪」は25%、「咲き始め」は8%と、こちらにも一定のファンがいることが分かります。「桜吹雪の儚い感じが好き」「咲き始めは春の訪れを感じられるから好き」といったコメントも寄せられており、惹かれるタイミングもそれぞれ好みが分かれるようです。
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日本人にはおなじみの桜ですが、タイミングだけでなく桜の種類もいろいろあります。

どんな種類があるのか、また「ソメイヨシノ」とはどのような桜なのかなど、あまり知られていないことも多いようです。花見シーズンの前に「知っておきたい桜の基礎知識」について、公益財団法人日本花の会研究員の小山徹さんに解説して頂きました。

桜はバラ科だった?

桜は植物学上、どのような種に分類されているのでしょうか。

「桜はバラ科、サクラ亜科、サクラ属で、サクラ属はサクラ、ウワミズザクラ、スモモ、モモ、ウメ、ニワウメの6亜属に分類されています。桃や梅も桜の仲間と言っていいでしょう」(小山さん)

桜の開花時期は、品種によって異なるのでしょうか。

「桜の開花期はカンザクラ類に代表される早春に咲くものがあったり、晩春に咲くものがあったりと、案外長期にわたっています。一般の桜は、春に一度咲くものですが、十月桜や冬桜のように9月〜12月と2〜3月の二度、花を咲かせる品種も存在しています。

日本は南北に長い国ですから、同じ品種でも地域によって開花期が異なり、通常は最南端の沖縄では1月下旬、最北端の北海道では約5カ月後となります」(小山さん)

日本で咲く桜は400種以上、野生種は10種ほど

桜の開花期が日本列島を北上しながら縦断していく様子を「桜前線」と呼びますね。

「桜前線は、全国各地で最も多く植えられているソメイヨシノの開花日を線で結ぶと、天気図の前線の動きに似ていることから名付けられたものです。

また、桜の開花日は南北の緯度差だけでなく、標高差によっても差が生じます。標高が100m上がるごとに2〜3日遅れるとされています」(小山さん)

日本の桜にはどれくらいの品種があるのでしょうか。

「日本で咲く桜には400種類以上の品種があるといわれています。昔からある野生の桜は、ヤマザクラなど10種類ほどで、その他は人為的につくられた改良・園芸品種で『里桜』と総称され、200種類ほど存在します」(小山さん)

野生種の基本種とされる10〜11種とは

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日本の野生種の基本とされる桜にはどういったものがあるのでしょうか。

「ヤマザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラ、カスミザクラ、エドヒガン、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、ミヤマザクラの9種が野生種です。この他に、カンヒザクラとクマノザクラについては、研究者により見解が異なる意見もあるため、当会では日本に野生する桜は10~11種類としています」(小山さん)

(1)ヤマザクラ
漢字表記は「山桜」。本州、四国、九州、朝鮮半島に分布する野生種で、成木の成葉裏面が帯白色になる特徴があります。古くから観賞の対象とされた桜で、奈良の吉野山は現在も有名な名所地です。

(2)オオヤマザクラ
漢字表記は「大山桜」。紅山桜(ベニヤマザクラ)や蝦夷山桜(エゾヤマザクラ)とも呼ばれ、北海道から本州・四国およびロシア極東部・朝鮮半島の冷温帯にも分布しています。耐寒性に強く染井吉野が育たない地域に植栽されています。

(3)オオシマザクラ
漢字表記は「大島桜」。伊豆諸島に分布する野生種で、房総半島や伊豆半島南部に多くみられるものは薪炭用に栽培されていたものが野生状態になったといわれています。

(4)カスミザクラ
漢字表記は「霞桜」。北海道南部、本州、四国、朝鮮半島、中国東北部から東部に分布する野生種です。葉や花柄に毛が生えているといった特徴があります

(5)エドヒガン
漢字表記は「江戸彼岸」。本州、四国、九州に分布する野生種で、特に東京方面で多く栽培され彼岸の頃に開花することから、江戸彼岸と名付けられました。

花柱基部(かちゅうきぶ)、小花柄(しょうかへい)、葉柄(ようへい)などに毛が多く、萼筒(がくとう)がつぼ形であるという特徴があります。この桜と他種の雑種には、萼筒上部がくびれるという特徴がほとんどの場合で現われています。

(6)マメザクラ
漢字表記は「豆桜」。本州中部のフォッサマグナ地域を中心として分布しています。富士山、箱根、八ヶ岳などの山地に多く、この火山地域に新生した種と考えられています。

南アルプス、房総半島、伊豆半島にも分布しますが、富士山麓一帯に多いことから富士桜とも呼ばれます。花色や花形、花の大きさなどに著しい変異があり、多数の園芸品種があります。

(7)タカネザクラ
漢字表記は「高嶺桜」。嶺桜(みねざくら)とも呼ばれ、北海道から本州中部及びロシア極東部の亜寒帯に分布。マメザクラと非常に類似しているが樹高や成葉にて区別が出来ます。また、暖地では生育が難しいです。

(8)チョウジザクラ
漢字表記は「丁字桜」。本州の東北地方から広島県にかけての太平洋側の山地と、熊本県の一部に分布する日本固有の野生種です。花が小さいのに比べてがく筒は太くて長めなので、この様子を丁字に見立てて名付けられました。

(9)ミヤマザクラ
漢字表記は「深山桜」。日本、朝鮮半島、中国東北区、サハリンなどに分布する野生種で、花柄が長く伸びて総状花序に近くなること、宿存する大型の苞をもつこと、種子の表面に著しい網状の凹凸があることなど、日本の他の桜と比べ特異な存在です。

(10)カンヒザクラ
漢字表記は「寒緋桜」。中国南部、台湾に分布しています。沖縄の石垣島や久米島でも見られますが、外部から持ち込まれた可能性も有り、もともと自生していたものなのか分かっていません。

寒い時期から濃紫紅色の花を咲かせることからこの名が付けられました。この桜と日本産の桜との交雑により早咲きのカンザクラ系統や花色の濃い諸品種が生まれました。

(11)クマノザクラ
漢字表記は「熊野桜」。2018年、日本国内の野生の桜としては100年ぶりに新品種と確認されました。咲く時期はヤマザクラやソメイヨシノよりも早いです。紀伊半島の南半分ぐらいの山間部に多く自生しています。

江戸時代に「吉野桜」と称して売り出されたソメイヨシノ

野生種に対する“里桜の代表”は、ソメイヨシノと考えていいのでしょうか。

「私たちがお花見で楽しむ桜にはソメイヨシノが多いので、その代表として先に述べた桜前線や、気象庁が発表する“開花宣言”の指標にも選ばれているのです。

ソメイヨシノは江戸時代末期、江戸染井村(東京都豊島区)の植木屋が“吉野桜”として売り出したと伝えられています。1900年に博物学者の藤野寄命(ふじのよりなが)により染井吉野と名付けられました。

生産者側からすると、接(つ)ぎ木でいくらでも増やせて生長が早く、多少手入れが悪くても花が咲くことから“花着きがいい”とされます。鑑賞者から見た、花が大きく樹全体に花を咲かせる様子が評判となって、全国に広まりました。

ただし、ソメイヨシノは『サクラ類てんぐ巣病』に罹(かか)りやすく、最近は羅病(りびょう)した桜をみかける事もあるため、対策が急務となっています」(小山さん)

花見でおなじみのソメイヨシノ以外にも、日本には多種多彩な桜が存在しています。今年のお花見シーズンはソメイヨシノのほかの品種も楽しみながら日本の春を満喫してはいかがでしょうか。

※野生種は樹形から花色をっとても様々なパターンが存在します。当記事では標準タイプに合わせていますのでご了承ください

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