子グマを木から引きずり下ろしての記念撮影は「クマにも人間にも危険」。米当局が「やめて」と注意喚起

子グマは、無気力で怯えた様子だったという
アメリカ・ノースカロライナ州アッシュビル
アメリカ・ノースカロライナ州アッシュビル
mbell via Getty Images

アメリカ・ノースカロライナ州アッシュビルで4月16日、アパート近くの木の上にいたアメリカクロクマの子どもを住人が引きずりおろした事案で、当局が捜査している。

目撃者が撮影した動画では、複数の人物が木の上にいた2頭の子グマを引きずり下ろそうとする様子が映っている。

さらに、このうち1頭を捕まえた後、怯えた様子の子グマを抱き抱え写真を撮影している。子グマは撮影後に逃げ出した。

ノースカロライナ州野生生物資源委員会(NCWRC)は18日、通報を受けてスタッフが現場に向かったとプレスリリースで伝えた。

子グマを引きずり下ろそうとした住人は「1頭が噛みつき、その後2頭ともいなくなった」と説明したという。

2頭のうち1頭は、アパートの人工池で見つかった。NCWRCの熊専門家アシュリー・ホッブス氏は、「子グマは無気力で怯えた様子でした。片方の前足をかばうようにしており、濡れて震えていた」と説明した。

CBSによると、この子グマは野生生物保護施設に移送され、現在は元気を取り戻している。野生に戻れる年齢になるまでは、施設にとどまる予定だ。

アパートの池で捕獲され野生生物保護施設に移送された子グマ
アパートの池で捕獲され野生生物保護施設に移送された子グマ
N.C. WILDLIFE RESOURCES COMMISSION

ホッブス氏によると、母グマが木の上などの安全な場所に子グマを残して餌を探しにいくことは珍しくない。

もう1頭の子グマは見つからなかったものの、母グマの元に戻った可能性もあるとアッシュビル市民タイムズに語っている。

子グマを引き下ろす人々を撮影した住人は「子グマを放っておくよう求めたが無視されたため、動画を撮ってアパートの管理人に報告した」とアッシュビル市民タイムズの取材で説明している。

撮影者は「以前にもアパートではクマを見かけたことがあるが、大抵の人はクマを放っておく“常識”がある」と述べている。

ホッブス氏は、子グマは今回の出来事で「明らかにトラウマを抱えていた」とアッシュビル市民タイムズに語った。子グマを引きずり下ろした人たちに、今後クマを捕まえたり餌をやったりしないよう伝えたという。

AP通信によると、ノースカロライナ州ではクロクマを捕獲して飼育することは違法で、NCWRCが捜査している。ただし、今回子グマがすぐに解放されたため、罪に問われないだろうとNCWRC広報は述べている。

今回のような行為は、クマと人間の両方を危険にさらす。NCWRCは、「クマの年齢に関係なく、近づいたり一緒に写真を撮ろうとしたりしてはいけない」と注意喚起している。

春先に巣穴から出てくる子グマは、母グマに保護され、餌を与えられなければ生きていくのが難しい。

ホッブス氏は「母親から引き離された子グマは、死んでしまうこともある」とアッシュビル市民タイムズに語っている。

また、NCWRCのコリーン・オルフェンブッテル氏は「近くにいる母グマが子グマを守ろうとすることもある。子グマを捕まえたり触ったりしようとすれば、クマだけでなく自分自身も危険にさらすことになります」とプレスリリースで述べている。

ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。

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