米・食品の価格高騰、そして“暑い”参院選では「気候変動」が注目の争点の一つに? 3人に1人が「気候投票者」と調査結果

夏の参院選では、米や食品の価格高騰と連動して、気候変動対策への注目が高まりそうだ。約3人に1人が気候変動に関心を持って投票する「気候投票者」だという調査結果が発表された。

今夏は、東京都議会議員選挙や参議院議員通常選挙が予定されている。

米や食品の価格高騰への対策が大きな争点になると予想される中、それと連動した「気候変動対策」への関心の高まりも注目を集めている。

気候変動の課題解決に取り組む一般社団法人「ジャパン・クライメート・アライアンス(JCA)」が5月26日、会見で「選挙と気候変動に関する世論調査」の結果を発表し、選挙における気候変動への関心の高さが明らかになった。

(イメージ写真)
(イメージ写真)
Getty image

調査を実施した背景に関して、JCAの中田真弥さんは「気候変動の影響は環境やエネルギーの枠を超え、食や災害、健康など幅広い分野に顕在化している一方で、気候変動に関して、選挙における投票意向を問う調査はほとんどなかった」と指摘。その上で「気候変動に関わる政策について、有権者の意識を可視化することで、世論と政治において適切な争点化と議論の活性化を目指すべく、調査を実施した」と説明した。

調査はオンラインで、全国の18歳以上の5000人を対象に実施された。(調査期間:2025年4月30日~5月7日)

3人に1人が気候変動に関心を持ち投票する「気候投票者」

「次の選挙で何に関心を置いて候補者の指示を決定しますか」という質問に対し、「エネルギー・環境・気候変動」に関心を持つと回答した人は71.2%で、1位の「景気・物価高対策(84.0%)」、2位の「社会保障制度の見直し(73.9%)」などに次いで4番目に高かった。

「エネルギー・環境・気候変動」に関心を持つ人のうち、66.9%が「気候変動への対応を強調する候補者」に対して「関心を持つ」と回答。JCAはこの層を「気候政策関心層」と定義づけた。

中でも、関心を示す方法として69.6%が「投票をする」と答えていた。この結果は全体で割り戻すと33.1%で、JCAは「約3人に1人が気候変動に関心を持って投票する『気候投票者』だ」とした。

懸念が広がる気候変動の「食」への影響。選挙での関心も

気候政策関心層に、どのような時事テーマに関心を持っているか聞いたところ、最も多かったのが「米価格の高騰」(91.9%)。また物価高で家計の負担になっている費用の中では「食品」(87.2%)が一番多かった。

食品の値上がりの要因としては「燃料などエネルギー価格の上昇」(55.0%)や「円安による輸入コストの増加」(51.2%)に次いで、「気候変動などによる農作物の不作」(50.7%)を挙げる人が多かった。

個人的な生活に気候変動の影響を受けていると答えた人は、「これまでと現在」に関しては85.9%、「これから」に関しては87.5%だった。

地球温暖化などの気候変動が与える影響の内容についての質問では、「農作物の品質や収穫量の低下、漁獲量が減少すること」が54.9%で最も多く、次に「食料価格高騰や電気代の上昇など生活コストが高くなること」(44.4%)など、食をめぐる影響への懸念が目立った。

その次に、「気象災害によって停電や交通まひなどインフラ・ライフラインに被害が出ること」(31.1%)や「暑さによって外での活動が制限されたり、熱中症のリスクが増大したりすること」(30.1%)などの生活面での懸念が続いた。

「政治家、気候変動に関してのスタンスを明確にすることを有権者からも求められる」専門家

松田馨さん(左)と江守正多さん(右)
松田馨さん(左)と江守正多さん(右)
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

この調査は、東京大学未来ビジョン研究センター副センター長の江守正多教授の指導のもと、選挙プランナーの松田馨らの協力を得て実施された。

米・食品の価格高騰の中で、このような調査結果が出たことに対し、江守さんは以下のように分析している。

「科学的に見ても、気候変動の農作物の値上がりへの影響は起きていて、米の値上がりの主な原因の一つとして昨年や一昨年の猛暑、場所によっては水害の影響が挙げられます。また、日本が多く輸入しているオリーブオイルやオレンジ、コーヒー、チョコレートなどの値上がりや品薄の原因として、原産地において気候変動によって激甚化したと考えられる災害の影響が指摘されています。

近年、記録的な猛暑や大雨の被害が日本でも顕著になってきています。気候変動の影響を感じている方も多いのではないかと思います。気象庁の長期予報によると、今年の夏も平年より暑いとされていて、参院選が7月ということを考えると、暑さが気候変動と関連し、投票行動に影響することはあり得ると思います」

また、選挙プランナーの松田さんは海外の事例とも比較し、以下のようにコメントしている。

「海外の事例では、5月にオーストラリアであった総選挙でも、気候変動対応を推進する与党労働党が勝利しました。その要因の一つとして、気候変動対策に対する積極的な姿勢が評価されたという分析もあります。今後の参院選や都議選におけるアジェンダセッティングにもよると思いますが、日本でも一定程度、影響を与える可能性があるという数字は十分に出ているのではないかと思います。

日本では海外に比べると、気候変動というトピックのみで大きく投票先が変わるという事例はまだそれほどないかもしれませんが、意識が高まっていることは間違いありませんし、そうした中で、各政治家が気候変動に関してのスタンスを明確にしていくということを有権者からも求められると思います」

(取材・文=冨田すみれ子)

注目記事