海外の気候変動対策の動き、日本での意識への影響は? アメリカ・トランプ政権は対策に否定的な姿勢

海外諸国の気候変動対策の動向は、日本にも影響を及ぼすーー? 世論調査では、他国の積極性に関係なく対策を行うべきとの回答が過半数を超えた。

アメリカでトランプ政権が気候変動対策に後ろ向きな姿勢を取る中、世界各国の対策においてもその影響が及ぶのではないかとの懸念が広がっている。

海外での動向は日本の人々の気候変動対策への意識に関係するのか。

気候変動の課題解決に取り組む一般社団法人「ジャパン・クライメート・アライアンス(JCA)」は5月26日、「選挙と気候変動に関する世論調査」の結果を発表。その中で、他国の対策の積極性の影響についても問われ、興味深い結果が出た。

他国の動きに関係なく、日本での気候変動対策は「積極的に行うべき」との意見が過半数を超えた。

他国の積極性に関係なく「積極的に行うべき」が過半数超

調査はオンラインで、全国の18歳以上の5000人を対象に実施された。調査期間は、第2次トランプ政権発足から3カ月以上が経過した2025年4月30日~5月7日。

調査では「日本の気候変動対策は、他国の態度によってどのように変わるべきだと思いますか?」という質問に対し、他国が積極的・消極的な場合の双方で、「はるかに積極的に行うべき」「より積極的に行うべき」を合わせた「積極的に行うべき」という回答が半数を超えた。

他国が積極的に行う場合、日本も「積極的に行うべき」は55.9%、「同じくらい行うべき」は36.3%だった。

また、他国が消極的に行う場合でも56.7%が日本は「積極的に行うべき」とし、「同じくらい行うべき」は36.0%と、他国の動向に左右されないという結果だった。

「選挙と気候変動に関する世論調査」の結果より
「選挙と気候変動に関する世論調査」の結果より
JCA

この調査結果に対し、同世論調査の指導に当たった東京大学未来ビジョン研究センター副センター長の江守正多教授は「非常に希望が持てる結果だ」とし、トランプ政権の日本の気候変動対策への影響については以下のように分析した。

「アメリカの第2次トランプ政権発足で、連邦政府は気候変動に対して完全に後ろ向きで、むしろ対策を邪魔するような態度を取り続けています。それに対し、『アメリカがあのような態度であれば、日本も対策をしても意味がない。やらなくていいのでは』という声がもっと聞こえてくるかと想像していましたが、日本の行政、政治家、企業などでもそのような態度変更は見られません。

掲げている目標の達成に向けてしっかり気候変動対策をしていくべきだという声が多く、今回の調査結果でも肯定的な声が多かったことは、非常に勇気づけられる結果ではないでしょうか」

「選挙と気候変動に関する世論調査」についての会見で話す江守教授
「選挙と気候変動に関する世論調査」についての会見で話す江守教授
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

トランプ大統領は第1次トランプ政権の頃から、米政府がまとめた気候変動についての報告書を「信じない」と発言するなど、対策について後ろ向きな姿勢を取っており、2度目の大統領就任ではさらにその影響が拡大するのではとの懸念が広がっていた。

トランプ大統領は2025年1月の就任初日に、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からアメリカが離脱するとの大統領令に署名。正式な離脱は2026年1月となる見通しだ。

また、気候変動のアメリカへの影響などについての報告書の作成に携わっていた科学者らを全員解任。CNNによるとその人数は400人にも上る。

日本政府の気候変動対策に対しては、低い評価

同じ世論調査の中では、日本政府の気候変動対策についての見解も聞いており、回答者の政府に対する評価は低かった。

「(日本)政府は、気候変動対策をどの程度積極的に行なっていると思いますか?」という質問に対しては、「どちらともいえない」が最も多く36.3%で、「あまり行なっていない」が31.4%と続いた。

「十分に行なっている」は1.3%で「ある程度行なっている」は17.5%で、厳しい評価が下った。

気候変動の影響を感じている人は多く、85.9%が個人的な生活に気候変動の影響を受けていると答えていた。

 (取材・文=冨田すみれ子)

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