東南アジア出身のコンビニ店員を描いたイラストが反響。変わりゆく日本の日常をうつす

私たちの日常を描いた1枚のイラスト。作者に背景を聞きました。

コンビニの風景を描いた1枚のイラストが、Xで大きな反響を呼んでいます。

投稿したのは、イラストレーターの紙谷俊平さん(@quickflat)。2018年にペーターズギャラリーコンペで五月女ケイ子賞を受賞し、2021年には第17回TIS公募で入選。現在は書籍、雑誌、音楽ジャケットなどを中心に活動しています。

今回投稿されたイラスト「コンビニ(Convenience store)」は、東南アジア出身のコンビニ店員を描いたもの。1人がホットスナックとトングを手に、もう1人は掃除用モップを持ち、まっすぐこちらを見つめています。

都市部ではすっかり身近な存在となった、外国出身のコンビニ店員。作品には、そんな社会の変化とイラストを重ねる声も多く寄せられました。

ハフポスト日本版は紙谷さんにメールインタビューを実施。話題となった作品の背景や、描き手としての考えを尋ねました。

──今回のイラストは、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

以前から、繁華街や行楽地、そして近所のコンビニでも、外国籍の店員をよく見かけていましたが、近年は東南アジア出身と思われる方々の姿をよく見かけるようになりました。これは日本社会、そして世界全体での目に見える変化なのではないかと思っています。

イラストレーターとしては、世の中の新しい部分を切り取ること、新たな見え方を提示することもひとつの重要な役割であるという認識を持っており、これは自主制作作品の画題になり得ると思いました。

また、幼い頃にシンガポールに住んでいたこともあり、東南アジアの方々の姿にはなじみがあったのです。しかし、彼らが主役のイラストを日本ではあまり見かけたことがなく、いつか主役として描いてみたいという気持ちもありました。

異国の地でコンビニに勤め、複雑な業務を担うことは大変なことだと想像できます。そういった敬意もあり、私なりの基準で、彼らが素敵に見えるように描こうと思いました。

ただ、この絵を描いたあとに気づいたのですが、舞台は必ずしも日本のコンビニではなく、東南アジアのどこかの都市を思わせる風景としても見ることができるかもしれません。

──作品から、社会的なテーマを感じ取る方も多かったように思います。その点については、どのようにお考えですか。

世間で、外国人労働者に関するニュースや多様性というテーマが盛んに論じられていることは認識していました。ただ、今回の作品を描く上では、何かを風刺したり批判したりすることを意識していたわけではありません。あくまで、日常や社会の中で感じた「目に見える変化」を、そのままの形で描いたというほうが正確だと思います。

私は、排外的な言動や差別的な考え方にはまったく共感できません。一方で、これまで比較的均質だとされてきた日本社会が、急速に多様化し、変化していくことに、人々が不安を抱く気持ちも理解できるところがあります。

このように繊細で複雑な問題を、私が性急に、あるいは紋切り型に描いてしまえば、安っぽい戯画になってしまい、結果として何の印象も残らない可能性があると思っています。

イラストレーターとしては、つねに「おもしろい絵を描きたい」と考えています。そのために、モチーフを選ぶ際には「そのモチーフを自分はどう活かせるか」「自分なりの基準で魅力的な絵にできるか」という視点を大切にしています。

──SNS上で大きな反響がありましたが、その反応をどのように受け止めていらっしゃいますか。

多くの方がこの絵の中にそれぞれの解釈や物語を見出し、引用などで自身の立場や考えを語っていました。改めて、絵というものは観る人によってさまざまに解釈され、物語が生まれるものであり、描き手はその素材を提供する存在なのだと認識しました。

同時に、外国人労働者というトピックや、多様性というテーマが、今の社会で非常に重要なものであり、日本で暮らすひとりの生活者としても避けて通れない課題であることを、改めて考えるきっかけになりました。

イラストレーターとしては、SNSでの反響に一喜一憂しても仕方がないと思っていますが、今後も絵を通して世の中に新しい見え方を提示できればと考えています。また、そのようなモチーフに出会えるよう、日々アンテナを張っていきたいと思っています。

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