情報通信政策フォーラム(ICPF)では、1月16日にM2Mについてセミナーを開いた。遠隔にあるセンサー等が直接通信してデータを収集・監視・制御する技術がM2Mで、輸送管理、スマートメータリング、遠隔での患者監視からスマートシティまで多様なサービスの創出が期待されている。M2Mはインターネットオブシングス(IoT)とも称され、有望市場として広く注目されている。
M2Mは、センサーなどのデバイス、データを交換するネットワーク、顧客・課金管理や回線管理・制御等を行うプラットフォーム、スマートメータリングなどサービス(アプリケーション)の四つの要素から構成される。また、クライアントの要求に応じて、これら四要素を適切に配置し、システムとして構築するインテグレーションも重要である。M2Mの収益の過半はインテグレーションやアプリケーションから生み出され、ネットワークの収益はM2M全体の1割程度を占めるに過ぎない。
欧米の通信キャリアはインテグレーションやアプリケーションに積極的に乗り出している。自前のリソースだけでは対応できないので、他社と提携したり、企業買収によって知恵と経験を取り込むといったことに熱心だ。一方、質疑応答では日本のキャリアの姿勢が話題となった。講師も通信キャリアに所属する聴衆も口をそろえて、ネットワークからの収益は限定的なので日本のキャリアは積極的ではないと発言した。
期待が少ない通信料収入に躊躇する日本キャリアと、大きな収益を期待してインテグレーションに乗り出す欧米キャリア。経営姿勢が保守的で新事業への進出に消極的という日本企業に共通の課題がM2Mでも露わになった。M2Mには国境はないので、インテグレーションで経験を積んだ欧米キャリアが日本市場に進出すれば、日本キャリアはネットワークを提供する下請けになるしかない。暗い将来が予見され、頭が痛くなった。
GEが実施した「グローバルイノベーションバロメーター」という、世界26か国のシニア経営層を対象としたオピニオン調査の結果が発表されている。これを見ると日本企業の特異性がわかる。「イノベーション活動に予算を確保する」を肯定したのは25%で、世界平均59%の半分以下だ。「投資家を巻き込む」も、世界平均41%に対して19%と、保守的な経営姿勢が読み取れる。「ビッグデータはあらゆるビジネスに必要不可欠」は世界平均31%に対して日本は15%で、「ビッグデータは特定の業種に限られる」は39%に対して65%である。技術トレンドに対する感度も低い。
政府は、無人飛行機や自動運転車などの実証実験を実施する「近未来技術特区」の新設に動き出している。これらの近未来技術には、経済社会を大きく変革するイノベーションの可能性があり、取組の速さが競争力に影響するからだ。近未来技術特区を成功させるには、保守的な大企業ではなく、挑戦的な新興企業を活用したほうがよい。