国内では高い支持率を誇る安倍内閣ですが、北朝鮮の金正恩が43位、始球式でアシックスのシューズを履いて国内からブーイングを受けた韓国の朴槿恵大統領が52位なので、それよりもランキングが低いのは、GDP世界第3位という背景を持ちながら、政治は世界での存在感が薄いという現実を示しているように感じます。

Forbesの「世界で最も影響力のある人物ランキング」(The World Most Powerful People)が発表されましたが、過去4年間のなかで3回首位を獲得したオバマ大統領が2位に転落し、ロシアのプーチン大統領にトップの座を譲ったことが話題になっています。習近平国家主席が昨年から6つ順位を上げて第3位となったので、米中露の首脳がトップ3に収まる結果となりました。

オバマ大統領のランクダウンは、シリア政策がうまくいっておらず、また議会とのねじれで予算案が成立せず米政府機関が一部閉鎖に追い込まれるなど、とみにましてレイムダック状態になってきているので、存在感が薄れてきていることは紛れもない事実でしょう。

日本からランク・インしたのは、日銀の黒田総裁が39位。豊田章男トヨタ自動車社長が44位、孫正義ソフトバンク社長が45位で、安倍首相は57位でした。

国内では高い支持率を誇る安倍内閣ですが、北朝鮮の金正恩が43位、始球式でアシックスのシューズを履いて国内からブーイングを受けた韓国の朴槿恵大統領が52位なので、それよりもランキングが低いのは、GDP世界第3位という背景を持ちながら、政治は世界での存在感が薄いという現実を示しているように感じます。

今年の春に雑誌TIMEが選んだ「世界で最も影響力のある100人(2013 TIME 100)」、ではリストにも入っていなかったので、ランク入りしただけでも安倍首相としては喜ばしいことなのかもしれません。

気の毒に感じるのは、日中関係をこれだけ悪化させ、また韓国が反日で追随させたのは民主党の野田内閣とはいえ、安倍首相が、中国や韓国との関係改善を進展させない限り世界での影響力の評価はあがらないのでしょう。しかし、そちらはこれといった妙手があるわけでないので、日本らしく経済政策で存在感をつくるというのが正攻法になってきます。

しかし残念ながら、アベノミクスも、結局は異次元の金融緩和とGDP水増しの財政出動をやったものの、肝心の第三の矢の成長戦略はいまだに弓が緩んで射てなくなってしまっている状態です。それを世界はよく見ているのかもしれません。

また先月に発表された「世界で最も影響力のある50人」は、政治家は政策の担当者が選ばれるので、当然安倍首相はランクインしていませんが、かわりに甘利明経済再生担当相が入っているので、今回の日銀の黒田総裁のランク入りと重ねると、日本が注目されているのは「異次元の金融緩和」だということでしょう。

それよりは日本が残念な状態で、ガラパゴスから抜け出せていないと感じさせるのが、やはりForbesがこの5月に発表した「世界で最も影響力のある女性100人」に今年も日本の女性が入っていないことです。

世界経済フォーラムの調査によると、日本の男女平等ランキングは136カ国中105位で過去最低だったこともあわせて考えると、なんだかなあと思ってしまいます。

いろいろ考えさせられるのですが、もっとも効果があると思うのは、政治が率先して取り組むことではないでしょうか。経済で影響力のある人が生まれてくるには時間がかかります。まずは、内閣での女性起用をもっと大胆に進めることだと思います。隗より始めよです。

(※この記事は11月1日の「大西宏のマーケティング・エッセンス」より転載しました)

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