「珈琲の青山」全店閉店と好調「喫茶室ルノアール」を分けたもの

ビジネスが成り立つためには、そのブランドが、なんらかの価値を提供するだけでなく、その価値が消費者、顧客の人たちにとって、特別な役割を持ち、また消費者や顧客の人たちのマインドのなかに居場所を確保しなければなりません。そのブランドをわざわざ選択する「理由(ワケ)」が必要になってきますが、それがつくりだすのがポジショニング戦略です。

ビジネスが成り立つためには、そのブランドが、なんらかの価値を提供するだけでなく、その価値が消費者、顧客の人たちにとって、特別な役割を持ち、また消費者や顧客の人たちのマインドのなかに居場所を確保しなければなりません。そのブランドをわざわざ選択する「理由(ワケ)」が必要になってきますが、それがつくりだすのがポジショニング戦略です。

例えば、ある喫茶店が普通の喫茶店の店の構えで、普通のサービスしかなければ、数多くある喫茶店との競争は激しく、よほどの馴染み客しか利用されません。あるいは偶然その場所で喫茶店を利用したいというお客さんがたまに来るぐらいです。

その喫茶店を利用する特別な「理由(ワケ)」を最初につくりだすのは事業者そのものです。あるいは場合によっては、顧客が発見してくれて、それに気づくこともあるでしょうが、その「理由(ワケ)」が風化しないように維持するのは事業者です。

たまたま喫茶店を例にしたのは、関西の老舗「珈琲の青山」が全店を閉店したというニュースがあったからです。「珈琲の青山」は大阪・梅田や神戸・三宮の繁華街、あるいは国道沿いに店舗を構え、「豪華さ」を売りにした喫茶店で、価格もブルーマウンテン一杯が580円、カフェオーレが680円と高く、なぜ高いのかの「理由(ワケ)」がよくわからなかった喫茶店でした。

価格は高くとも、とくに席がゆったりしているということでもなく、高い「立地代」を取る店という印象しかありません。最盛期には36店舗だったのが、今や11店舗まで減少してきたようで、それも閉店に追い込まれたのです。老舗喫茶店といえば東京では「喫茶室ルノアール」が浮かんできます。イメージとしてはもう終わった感を受けるのですが、ところがそうではありません。

平成25年3月期の決算を見ると、売上高は65億6800万円で対前年で9.7%伸ばしています。また今期も第三四半期までの累計売上高が3.6%伸びています。

その「理由(ワケ)」をうまく表現した記事がありました。40を過ぎたオヤジにとっては「都会のオアシス」だと言うのです。商談、仕事、昼寝など、なにかをする場所を提供していて、珈琲もでてくるというお店だということです。

スターバックスとの比較も面白いので引用しておきます。

街のシステムとしてのプレイスであるから、思い思いに過ごす人達が、「群」にしか見えない。お客様が、互いに消費者であり、同志ではない。その機能を享受しているだけである。便利で、おしゃれなのだが、喫茶室「ルノアール」で感じる一体感がない。喫茶室「ルノアール」が、「自分の居場所」であるなら、スターバックスは「みんなの居場所」ということだろうか。だから、どの街に行っても、スターバックスはスターバックスで。その街のルールとは、異質な感じがある。

しかし逆にいえばスターバックスも「みんなの居場所」というポジションを持っていることになります。

伸びている喫茶店といえば、「コメダ珈琲店」も浮かんできます。名古屋発で、フランチャイズ方式によって店舗数も伸ばし、あれよあれよというまに他府県にも広がり、昨年はついに500店舗となっています。

「コメダ珈琲店」の人気の「理由(ワケ)」を、「おもてなしの心」、「回転率よりは居心地の良さを追求」、「魅力的なメニュー」の3つに集約したまとめサイトがありましたが、やはり「コメダ珈琲店」に行く「理由(ワケ)」があるのです。

とくに名古屋は朝食は喫茶店で家族や友人など、みんなで食べる「モーニングの文化」があり、その文化を他府県にまで広げてきているとも言えそうです。

喫茶店に限らず、現代は、商品やサービスのひとつひとつの競争だけでなく、そのブランドが選ばれる理由(ワケ)をつくりだし、それによって差別化していく時代となってきています。その「理由(ワケ)」を支えていく全体がビジネスモデルですが、それについてもご興味のある方はメルマガで続きをご覧ください。

(2014年3月19日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

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