「みんなでやろみゃあ、フェアトレード!」会場に響き渡る声。声の主は河村たかし名古屋市長だ。上機嫌なわけは、名古屋市が19日、「フェアトレードタウン」の認定を受けたからだ。
<認定式 / 撮影:安倍宏行>
そもそも「フェアトレード」とはなんぞや。それは、途上国の原料や製品を適正な価格で購入し、その国の人々の生活の改善や自立を目指していくことをいう。例えば、チョコレートの原料となるカカオの生産の現場では、一部で子どもたちが不当に過酷な環境で働かされているという現実がある。それを公正な価格で取引することによって、継続的な生産と児童労働を防ぐことになる、という考え方だ。
そして、地域を挙げてフェアトレードを推進している街が「フェアトレードタウン」と認定されることが海外では多くなっている。名古屋市では市民の活動から始まり、今年に入って市議会でこの活動を支持する議決がされたほか、市長も支持を表明。今回の認定に繋がった。国内では、熊本市に続いて2例目の認定で、人口200万人を超える大都市の認定は意義深い。
シルバーウィーク初日の19日、名古屋市中心部で開かれた「環境デーなごや2015」。市民や行政、事業者が環境への取り組みの成果を持ち寄る毎年恒例のイベントで、今年の目玉となったのが、名古屋市の「フェアトレードタウン」認定式だ。式では、一般社団法人「日本フェアトレード・フォーラム」から、名古屋市の河村たかし市長に認定証が手渡された。認定に向けた運動を続けてきた市民団体、フェアトレード名古屋ネットワーク代表・原田さとみさんは河村市長と共に「国際フェアトレードタウンなごや」としての宣言を読み上げた。宣言では、市民一人ひとりの買い物を通じて町ぐるみで運動を推進し、地域の絆を深めることを表明した。
イベント会場では、フェアトレードによるガーナ産のカカオを使用したアイスクリームを製作・販売し、売り上げの一部を東日本大震災の被災地への寄付に充てる活動を展開している愛知商業高校の生徒が、市民らに向けて取り組みへの参加を呼びかけた。又、フェアトレードのファッションに身を包んだトップモデルたちのファッションショーも参加者の人目を引いていた。
<エシカルファッションショー ©セントラルジャパン(モデル),©ピープルツリー(衣装) / 撮影:安倍宏行>
「フェアトレードタウン」の活動は、開発、発展、利益、合理化などこれまでの社会の流れとは違い、市民一人ひとりが、自分の生活に直接関係のないことや、考えなくても生活の出来る世界的な問題に対し、いかに思いを馳せることが出来るかということに繋がるものだ。
認定式の後に開かれた祝賀会には、愛知県の大村秀章知事も出席し、「愛知県の名古屋市以外の都市にもフェアトレードを広げていきたい」と話した。「フェアトレードタウン」の認定に向け、5年越しで活動してきた原田さとみさんは「みんなの意識が自分のことに向いてきた。今後はフェアトレードの給食など考えてみたい。生活の中で選択肢の一つとしてフェアトレードがあり、選ぶときに、良いものであり、美味しいものであり、おしゃれなものであるよう、努力していきたい。」と語った。
<愛知商業高校の生徒たち/撮影:安倍宏行>
しかし、課題となるのは、市民の認知度だ。フェアトレード発祥の地のイギリスでは認知度は8割を超えるというが、日本ではまだまだ浸透しているとは言えない状況だ。日本人は世界の課題に対する意識が低いことがその要因とも言われている。
実際、この日「環境デー」に来場していた人々で「フェアトレードタウン」について事前に知っていた人は少数だった。取り組みを支持する人の中でも、「良いことだとは思うが、目に見えない生産者にまで気を配り、金額が高いものを手にする余裕はないかもしれない」(20代主婦)との声が上がった。
名古屋市が「フェアトレードタウン」に認証されたことは始まりに過ぎない。今後は官民学が連携をこれまで以上に強め、市民の意識を変えていくことが求められよう。