「猛禽類を守ろう」いきなりそんなことを言われてもピンと来ないかもしれない。猛禽類とは、オオワシやシマフクロウなどのこと。北海道釧路市で怪我をした猛禽類の保護や治療に従事している猛禽類医学研究所の齊藤慶輔代表が17日、都内の動物愛護チャリティーイベントで語った。
猛禽類は他の生物を捕食し、食物連鎖の頂点に立つ。一方で、自然環境の変化の影響を受けやすく、生態系では最も弱い生物でもあることから、猛禽類は生態系のバランスがとれているかどうかを示す指標となっている。つまり、猛禽類を保護するということは、「種」を保存するだけでなく、生態系そのものを保護することに他ならない。
その猛禽類の生息を脅かしているのが人間だと齊藤代表はいう。送電線による感電、風力発電の巨大風車のブレードによる羽の切断、衝突死などがその原因だ。こうした事故や生息地の破壊などで今や多くの猛禽類が絶滅の危機に瀕している。環境省も事態を重く見てはいるが、対策は進んでいない。斎藤氏は、負傷した猛禽類の救護に駆けつける為のドクターカーや、衝突死を防ぐポール、感電防止器具の設置が今すぐ必要であることや、猛禽類が餌を食べて鉛中毒になることを防ぐため、ハンターが使う鉛弾の禁止などを訴えた。
このイベントは、動物愛護に取り組む一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの設立1周年記念チャリティー&ガラパーディー。財団は、保護犬を預かるフォスターと呼ばれるボランティアの支援などを通し殺処分ゼロを目指す"Project Zero"と、絶滅危惧種の保護を行う"Project Red"を活動の柱としている。
代表理事の滝川クリステル氏は冒頭の挨拶で、自ら福島第一原発事故で保護された犬の里親となったことを紹介し、「日本では毎日300頭超の犬猫が殺処分されている。野生動物は人間のせいで住む場所を追われている。」と我が国における動物の環境の悲惨さを訴えると共に「動物たちの声なき声にきちんと向き合わなくてはいけない。皆さんと一緒に動物たちと共存できる社会を作っていきたい。」と決意を語った。
滝川代表理事とのトークイベントで元衆議院議員の藤野真紀子氏は、生体販売業者(ペットショップなど)が販売している動物が、ペットミルと呼ばれる劣悪な場所で大量に繁殖させられていることを紹介、それが違法な大量遺棄に繋がっている、として早急に法による規制が必要だと訴えた。
その後行われたチャリティーオークションでは、多くの寄付が集まり、出席者の熱い思いが感じられた。殺処分ゼロの達成と絶滅危惧種の保護はどちらもハードルは低くないが、実現不可能ではない。最後に滝川代表理事は、ガンジーの言葉『国の偉大さと道徳的発展はその国における動物の扱い方でわかる』を紹介した後、「動物を救うことは、人の心を救うことです。日本の誇る"おもてなし"の心を人間だけではなく、動物にも持ってもらいたいのです。」と締めくくった。
文中画像:©斎藤慶輔