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2018年03月20日 16時54分 JST | 更新 2018年03月20日 16時54分 JST

中古住宅を安心して購入するには〜インスペクション(住宅状況調査)とは何か〜

顧客にとってどういうメリットがあるのか、それにかかる費用は?

Houzz|有限会社プロジェ

今年、2018 年(平成30年)4月から、宅建業者は中古住宅を仲介する際に、顧客にインスペクション(住宅状況調査)の斡旋の可否を示さなければならないことになります。

このインスペクションとは、中古住宅を安心して購入できるようにするための国土交通省による施策の一環です。国はこうした施策により、中古住宅の流通量を欧米並みに引き上げようとしています。

では、具体的にインスペクションとは何か、顧客にとってどういうメリットがあるのか、それにかかる費用は? などを具体的にみていきましょう。主に中古戸建住宅の住宅診断話を中心にしています。

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Houzz|有限会社プロジェ

現況調査で中古住宅の劣化や不具合の有無を把握するインスペクション
 
住宅に関するインスペクション(Inspection)とは、住宅診断、住宅検査などとも呼ばれており、既存の住宅に関して、その劣化状況や不具合がないかなどを専門家が第三者の立場で現況調査することを指しています。
 
上の表は国土交通省が2013年(平成25年)6月に策定した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」で示されたインスペクションの具体的調査内容です。

Houzz|有限会社プロジェ

アメリカなど、中古住宅の流通が全体の80%を越える国では、住宅を購入する際は、インスペクションを実施することがほぼ当たり前になっています。
 
これまで日本ではさまざまな団体が、インスペクションを手がける技術者に関して独自の資格を定めてきましたが、2017年(平成29年)2月に国土交通省が「既存住宅状況調査技術者講習制度」と「既存住宅状況調査方法基準」を設け、中古住宅の売買の際のインスペクションの基準や、それを実施する技術者の要件が統一されることになりました。

「既存住宅状況調査基準」で調査対象とされるのは、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」と「耐震性に関する書類の確認」です。建物の調査対象としては先の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」でいうと①と②が中心となります。

この制度は、インスペクターの要件として建築士の資格を持つことが前提とされており、より専門的な知識や経験によるインスペクションが行われるようになることが期待されます。

あわせて2018年(平成30年)4月からスタートする改正宅地業法では、宅建業者はインスペクションの有無やその結果、新築や増改築時の設計図書の有無などを、重要事項説明において説明することが求められることになります。

インスペクションは売主、買主ともに実施可能ですが、検討物件のより客観的な状況を把握するという主旨では、買主が自らの負担で行うことが推奨されます。買主が実施する場合は、売主の承諾が必要です。インスペクションの有効期限は、宅建業法上は1年間です。

これらの措置がきっかけになり、日本ではまだ馴染みの薄かったインスペクションに対する認知が高まり、今後の普及が期待されます。また、中古住宅に関する情報の履歴化が促進され、購入者が品質やリスクなどをより客観的に判断しやすくなり、安心感も高まるものと思われます。

これからは、中古住宅の売買の際は、インスペクションの実施が徐々に当たり前になってくると思います。また、それを実施するインスペクターとしては、建築士である既存住宅状況調査技術者が中心になってくるでしょう。

ただし既存住宅状況調査が前提とするインスペクションは、あくまで建物の現況を非破壊で目視・計測にて調査するものです。見えない部分に瑕疵があった場合など、どうしても限界があります。

Houzz|有限会社プロジェ

Photo by Chris Potter-3D Home Inspection Checklist

インスペクションの限界をフォローする既存住宅売買瑕疵担保保険

こうした、インスペクションの限界やインスペクションでの見落としなどのリスクの備えるために利用できるのが、既存住宅売買瑕疵担保保険です。

民法上は瑕疵が見つかった場合の補修費等は売主が負担することになっていますが、個人が売主の場合は、特約で瑕疵担保の対象を制限し、期間も引渡しから3ヶ月以内などに限定するのが一般的です。ちなみに、不動産業者が売主の場合は、購入者は引渡しから2年以内に請求すれば、売主が瑕疵担保責任を負うことになっています。

既存住宅売買瑕疵担保保険は、中古住宅を個人間で売買する(売主・買主とも個人)際に、購入後に瑕疵が見つかった場合、買主に補修費用等を補償する保険です。保険期間は1年ないしは5年、支払い限度額は500万円ないしは1,000万円というのが一般的な保険の内容です。詳しくは一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のサイトをご覧ください。
 
この既存住宅売買瑕疵担保保険を利用するためには、保険会社に登録している検査事業者の既存住宅状況調査技術者(または一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会が認定した既存住宅現況検査技術者)によるインスペクションが必要となります。

対象となる物件は、新耐震基準の物件(1981年6月1日以降に建築確認を取得した物件または耐震適合証明書が取得できる物件)に限られます。

Houzz|有限会社プロジェ

Photo by Mark Moz-HouseProperty Inspection

税制上のメリットもある既存住宅売買瑕疵担保保険

既存住宅売買瑕疵担保保険は、ローン減税などを利用する際もメリットがあります。ローン減税制度を利用するには、戸建の場合、築20年以内の物件(マンションの場合は25年以内の物件)が原則となりますが、既存住宅売買瑕疵担保保険に加入(または耐震基準適合証明書を取得)すれば、築20年を越える物件でもローン減税が利用可能となります。

留意したいのが、その他の減税制度や「フラット35」を利用する場合です。各制度ごとにそれぞれ異なる基準による調査や証明書の取得などが必要になってきます。例えば、築20年以上の戸建で不動産取得税の減免を受けるには耐震基準適合証明書が必要となり、「フラット35」を利用するにはまた別の適合証明書が必要になります。

また、旧耐震の物件(1981年6月1日より前に建築確認を取得した物件)でこうした減税制度を利用するには、耐震基準適合証明書の取得が必須になりますが、そのためには先立って耐震診断と耐震補強工事が必要になるケースが多いと思われ、耐震診断や耐震補強工事などに精通したインスペクターが求められます。

競合する相手がいるなど、住宅購入は限られた時間のなかで決断をしなければなりません。手戻りがないインスペクションを行うには、こうした諸制度に詳しく、物件の築年数などに応じて、適切な対応が取れる仲介業者とインスペクターの存在が重要になります。

インスペクションにかかる費用ですが、一般的には中古戸建で5~6万円程度の水準です。通常は「既存住宅状況調査方法基準」で調査が義務づけられている「構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」以外の部分(例えば、給排水管などの設備やその他の部分)も含めて総合的に調査することが一般的だと思われます。料金に含まれる調査範囲を確認しましょう。

また、既存住宅売買瑕疵担保保険を利用する場合は、上記の調査費に加えて、別途保険料+保険会社による検査料がかかります。期間と支払限度額や特約(例えば、給排水管特約)の有無などに応じて、合計で5万円前後~10万円程度の金額です。

最後に、大手ハウスメーカーや大手仲介会社の独自サービスをご紹介します。

「スムストック」と呼ばれる認定がなされている中古物件は、大手ハウスメーカー10社が過去に自社で施工した住宅を事前に検査して品質を認定した物件です。「スムストック」と認定された物件は、検査なしで既存住宅売買瑕疵担保保険に加入可能です。

また、大手仲介会社は、事前に自社で検査して一定の条件を満たす物件に関しては、仲介の場合も2年間に修繕保証をする独自の保証サービスを導入しています。

さらには、インスペクション(既存住宅状況調査)がなされ、構造上の不具合および雨漏りが認められず、耐震性が確認された物件を「安心R住宅」として登録・表示できるようにする、国土交通省による新たな制度も2018年4月からスタートします。

こうした措置により、インスペクションが普及して、中古住宅の履歴などが客観的にデータ化されていくなかで、個人の顧客がより安心して取引できる中古市場に向かうことが期待されています。

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文:大村哲弥
記事提供:Houzz(ハウズ)

(2018年2月26日 中古住宅を安心して購入するには~インスペクション(住宅状況調査)とは何か~ より転載)