オープンデータの優れモノを勝手に表彰してみた

オープンデータは直接の見返りがない運動であるにもかかわらず、政府も自治体も企業も個人もみな、嬉々として参加し、前のめりに動いてるんですよね。こういうのは、ホメるしかない。そこで、2013年3月には優れた取り組みを見せる関係者をコンソーシアムとして勝手に表彰するという無謀なイベントをやってみました。

さて、オープンデータの運動は、公共データをオープンにさせる、カナテコで開くことが当初の眼目だったのですが、やり始めたとたん、そんなことは些末なことだということが明らかになってきました。それよりも、個々人や企業のもつ超大量のデータを公共データとともに共有すること。「みんなのデータ」が公共性を持つことがハッキリしてきました。

頭が下がります。オープンデータは直接の見返りがない運動であるにもかかわらず、政府も自治体も企業も個人もみな、嬉々として参加し、前のめりに動いてるんですよね。

こういうのは、ホメるしかない。

そこで、2013年3月には優れた取り組みを見せる関係者をコンソーシアムとして勝手に表彰するという無謀なイベントをやってみました。

模様は、以下のとおり。

政府・自治体の公共的な取り組み、企業や個人の情報公開の努力、その他いろんな汗をできるだけすくい上げて、ホメたい。

■最優秀賞/Google賞 :データシティ鯖江

福井県鯖江市。

データシティ鯖江として様々なデータをXML等の形式で公開。

・避難所の施設名、位置情報

・消火栓の名称と位置情報

・市が運営するコミュティバス「つつじバス」の運行情報

・西山動物園の動物情報

・鯖江市内の文化財の写真、説明

・市内の農産物直売所

・鯖江市議会議員の情報など

■優秀賞/日本IBM賞:2013 International Open Data Day

Open Knowledge Foundation 及び開催8都市。

2013年2月23日に世界中の都市で、オープンデータイベントを開催。

日本では、東京、横浜、千葉、名古屋/東海、鯖江、青森、会津若松などで開催。

■優秀賞:図書館横断検索サービス「カーリル」

株式会社カーリル。

全国6,000以上の図書館の蔵書・貸出情報を横断検索可能。

APIも提供しており、様々なアプリが開発されている。

■優秀賞:Where Does My Money Go? の日本語化と横浜市版の作成

税金はどこへ行った?チーム。

イギリスの Open Knowledge Foundation が開発した Where Does My Money Go? (英語版) をベースに日本語化し、さらに横浜市民が横浜市に納めている市税を対象として構築。

自分の年間総収入をスライドで設定し、単身世帯か扶養一人世帯かを選択 すると、給与所得者であるという前提で、横浜市に納めている市税年総額と10分野毎に一日当たり支払っている市税額が表示される。

■優秀賞:気象庁の一連の取り組み

気象庁。

気象統計データなどをウェブサイトで公開。

2012年12月からは防災情報XMLフォーマット形式電文を試験的にサイトで公開。

2012年11月~12月にはコンソーシアム等と協力して、気象データアイデアソン/ハッカソンを開催。

■優秀賞:あおもり映像コンテンツ・プロモーション

青森県。

観光プロモーションに活用できる映像素材を県職員が自ら撮影し、YouTube等に公開。

二次利用可能な独自の利用規約を作成し、幅広く活用されることを目指している。

■優秀賞:LODチャレンジ

LODチャレンジ実行委員会。

2011年に続き2回目の開催。

データセット部門、アイデア部門、アプリケーション部門、ビジュアライゼーション部門の4部門に対し計205作品の応募があった。

■優秀賞:CKANを用いたデータカタログサイト

CKAN日本語化コミュニティ。

データポータルソフトウェアであるCKAN(http://ckan.org)を用いて、日本のデータカタログをまとめたサイトを構築。

現在、有志のコ ミュニティで運営。

2013年1月31日現在、オープンガバメントを推進している地方公共団体のデータを中心に、125のデータセットを掲載。

■日本マイクロソフト賞:横浜オープンデータソリューション発展委員会の活動

横浜オープンデータソリューション発展委員会。

横浜から世界に向けてオープンデータによって成長・発展する新しい都市の姿を発信していくことを目的として設立。

アイデアソンやハッカソンの開催、情報発信など積極的に活動。

■国際大学GLOCOM賞:東日本大震災アーカイブほか3件 震災の被害状況を可視化し、災害の実相を世界につたえる多元的デジタルアーカイブズ。

個別に存在していた被災地の写真、パノラマ画像、被災者の証言、TV 報道映像、ジオタグ付きツイート等のデータを一元化し、Google Earthの三次元地形に重ね、俯瞰的に閲覧することができる。

■ソフトバンクテレコム賞:エレクトリカル・ジャパン

東日本大震災後の日本の電力事情を理解するための電力データ集約・可視化サイト。

電力の供給に関するデータとしては、日本全国約3300ヶ所の発電所の位置や出力を独自に調査してデータベース化するとともに、各電力会社が提供するリアルタイム電力供給データをアーカイブして利用。

■全国地質調査業協会連合会賞:流山市/流山市議会の取組み

流山市/流山市議会。

市と市議会両方のサイトでオープンデータに取り組んでいる。

市議会のサイトでは、議員基本情報や定例会議審議結果などをcsv形式で公開。

■Open Knowledge Foundation Japan賞:電脳みやしろ

埼玉県宮代町。

オープンデータの活動が広がる以前からホームページ上に多様な種類のデータ提供を実施。

表彰に当たり、ぼくが申し上げた講評は以下のとおりです。

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受賞おめでとうございます、というのも変ですよね、

コッチが勝手に表彰してるんだから。

受賞していただき ありがとうございます。

ノミネート活動を眺めて、さまざまな活動が展開されていることに、心を打たれました。

新しい活動は、お金がもうかるか、やれという命令があってやるか、が相場です。

ところがオープンデータは、みなさんの純粋な公共心と熱意でスタートしていることに感動する次第です。

ここに、より多くのレスペクトが集まり、かつ、ビジネスとしても花開くよう努めたいところです。

さらに、今回、より心強く感じたのは、受賞されたかたがたの多様性。

中央官庁もあれば、首都圏の大都市もある。

地方の県もあれば、市も町もある。

企業も、非営利団体もある。

国立の研究所も、学生もある。

地方も中央も、大組織も個人も、同じく熱意を持って取り組む主役がいる。

非常に大きな可能性を感じます。

今はまだ、点が散らばる活動かもしれません。

これを面に広げていき、オープンデータ列島を形成していきたい。

受賞者のみなさんには、ぜひ引き続き力強くそれを主導していただきたいと存じます。

(この記事は5月23日の「中村伊知哉Blog」から転載しました)

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