ブラッド・ピットの主演で映画化された『マネー・ボール』によって、メジャー屈指の貧乏球団アスレチックスは日本でもその存在が広く知られるようになった。
『マネー・ボール』に描かれたように、アスレチックスは21世紀初頭、今やメジャーの常識となったセイバーメトリックスをいち早く導入し、実践したチームだった。独自に築き上げた選手評価基準に従い、他球団には見向きもされなかったが、実は価値の高い選手を掻き集め、構成されたチームは「Island of Misfit Toys(はみ出し者の集まり)」と称された。
そんな「はみ出し者の集まり」は今日、野球選手として常にエリートの道を歩んできたダルビッシュ有の"天敵"としても知られている。
現地21日、ダルビッシュは敵地で今季初のアスレチックス戦に先発した。試合開始前の時点で防御率0.82を誇っていた右腕は、2回に一挙3失点。6回までに116球を要し、同点のままマウンドを降りた。
その6日後の28日、今度はレンジャーズの本拠地アーリントンでダルビッシュとアスレチックス打線は再び激突。結果は、アスレチックス打線がダルビッシュをキャリアワーストとなる3.1イニングでKO。これでダルビッシュはアスレチックスに対し、ルーキーイヤーの2012年から7連敗となった。
「いいアプローチしているんじゃないですか?なるべく長いイニングを投げようとしていますから、今日みたいに早いイニングで下りるのは先発として悔しいです」と、ダルビッシュ本人もコメントしたように、アスレチックスのアプローチは徹底している。
とにかく狙い球を絞って待球し、球数を投げさせるのだ。28日、ダルビッシュは3回までに打者14人と対戦し、7度もフルカウントまで持ち込まれた。レンジャーズのロン・ワシントン監督も、アスレチックスの攻撃を「(アスレチックスは)打席でのアプローチが明確だった。ボール球に手を出さなかった」と称した。
「相手の傾向というか去年から見ていて自分でも気付けてなかった部分が、投げ終わった後、こうかなと分かった。次、それができればいい」
ア・リーグ西地区は過去2年、いずれもアスレチックスが9月に快進撃を見せてレンジャーズを追い抜き、地区優勝を果たしている。レンジャーズとダルビッシュにとって、アスレチックスはもっとも倒さなければならない相手だ。
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(2014年4月30日「MLBコラム」より転載)