シリーズ最終回では、こうしたネット上のリスクをめぐる私の見解を申し上げて総括としたいと思います。
■機能制限だけでは解決しない
スマートフォンを子どもに買い与えようかどうしようか、あるいは買った後で、うちの子は大丈夫か...と心配する保護者のご意見もしばしばお聞きします。
時折お聞きするのは、「ペアレンタルコントロール機能を設定しておけば大丈夫なんでしょ?」というものです。
残念ながら、ペアレンタルコントロールだけでは十分ではありません。
ペアレンタルコントロールを使えば、新しいアプリをインストールさせないようにすることはできます。
しかし、例えばLINEのインストールを一旦許可したら、LINEの中でどのようなやりとりがされても、ペアレンタルコントロール機能ではどうしようもありません。
LINE自体を禁止するのもひとつの手です。
ただし、LINEは数あるSNSのひとつにすぎません。
Twitterはどうするか。Facebookは...。
子どもが「スマホがほしい」「LINEがやりたい」「Twitterがやりたい」などと言ったときにどうするのかという、ネットに対する親の確固たる考え方が必要になります。
ちなみに、LINE・Twitter・Facebookなどの受信メッセージに有害と思われるキーワードが含まれていた場合に、親に通知するサービスもあるようです。
こうしたものを補助的に使ってみるのも悪くないと思いますが、根源的には、子どもとの関係を親がどのようにして作っていくか、に尽きると思います。
■ネットの特性を理解し、中身をチェックし、話し合える雰囲気作りを
過去2回をお読みいただければおわかりになる通り、子どもがネット上のリスクに巻き込まれる根本要因は、家庭・学校の環境にあります。
ただ、ネットは適切に使わないと、そういった「環境のひずみ」を悪化させる元となります。
ネットの第一の特性は「世界中の誰もが『お隣さん』である」ということです。
これはいいことでもありますが、子どもを近づけたくないようなタイプの人間も簡単に「お隣さん」になってしまうということでもあります。
リアルの街並みであれば「あの界隈は危険だから近づくな」と言えますが、ネットでは一瞬にして危険の真っただ中に移動してしまいます。
ネットのもうひとつの特性は「誰でも簡単に発言できる」ということです。
これもよいことでもありますが、面と向かってだったら言えないような下品・無配慮・露骨・悪辣な発言でも言えてしまうということでもあります。
小6女子に「やらせろ」と発言した人も、面と向かってだったら、そんなことはまず言えないでしょう。
また、コミュニケーションが手軽である故に、コミュニケーション能力の未熟な子どもが、会って話すことに比べてコミュニケーション情報が少ない―多くは文字だけの―ネットでコミュニケーションを行うと、負のスパイラルに陥る可能性があります。
歯止めが効かなくなって、不毛なやりとりに陥りやすいわけです。
さらにそれが文字で残るため、ずっとダメージが残り続けます。
ネット上でのいじめが陰湿になりやすい傾向があるのは、このような背景があるためと考えられます。
子どもをネット上のリスクから守るためには、こうしたネットの特性を大人が理解し、子どもはまだコミュニケーション力が未熟であることを十分認識して、子どものネット利用にきちんと目を光らせておくことが非常に重要です。
これから子どもにスマホを買い与えようとしているのであれば、最初が肝心です。
このように言うのがおすすめです。
「いつでもチェックするから、言われたら必ず見せること。
それから、少しでも不安に感じたり、トラブルに巻き込まれているのではと感じたらすぐに相談すること。
これが守れないなら、スマホは買いません」
最初に念押しをすれば効きます。いったん買い与えてしまってから「見せろ」というのは、年齢が上がるほどハードルが高くなるのではないかと思います。
その上で、子どもが自分の状況について親に気軽に相談できるような雰囲気作りを、普段から行うことが重要です。
どうも家族のコミュニケーションが疎遠になってしまったな...とお感じであれば、せっかくの夏休みです。家族旅行を企画して、家族の風通しを変えてみるなどいかがでしょうか?
■18歳未満のネット利用は親から「見える」ようにすべき
子ども・親・学校の努力に加えて、当然ネット事業者にも、子どもを守る対策を打ってほしいものです。
LINEについては、現在では18才未満ユーザはID検索機能を使用することができなくなっています。
現在では、全キャリアのiPhone, Android端末で18才未満ユーザのID検索機能利用ができないようになっているので、本件の女子中学生と同じことは起こりにくくなっています。
しかし、ネット上では堂々とこの利用制限を回避する方法が紹介されたりしています。
なるほど、LINEアプリを「ID検索機能利用制限前のバージョン」にダウングレードするわけですねぇ...。やれやれです。
(しかし「提供元不明のアプリ」にチェックを入れるのは、ペアレンタルコントロールしていれば防げるのではないですかね? Android端末が手元にないのでわかりませんが...)
まあこのように、必ず迂回策を考える人が出てくるものです。何より、LINE上でのいじめについては何の解決にもなりません。
最も大事なことは「親がきちんとチェックをすること」であり、LINEをはじめとしたネットサービスは、それが可能となるような機能を実装するべきであると私は考えます。
私としては、18歳未満がネットサービスを利用する際には「透過性」を担保すべき...つまり、親がいつでも子どもが使っているサービスを隅々まで見ることができるよう、機能として持たせるべきであると考えています。
LINEの18歳未満ID検索制限はキャリアの契約情報にアクセスして実現しているわけですから、同様の方法で、端末所持者の保護者を特定することができるはずではないかと考えます。
その保護者の端末からは、子どもが使っているサービスの中身すべてを見ることができるという仕組みです。
こうした機能を、サードパーティに頼るのではなく、LINE社などのサービスプロバイダが自ら実装してほしいものです。
いかがでしょうか? このような機能、皆様はどうお考えになりますか?
ぜひご意見をいただければ幸いです!
Facebookページ: 中妻じょうた 板橋区議会議員
(2014年8月16日「中妻じょうたブログ」より転載)