PRESENTED BY JTB交流応援隊

海外で活躍できる人になりたい。未来の科学者を育てるコンテスト 「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」

“未来の科学者を育てよう”を目的とした中高生対象の科学のアイデアコンテスト「つくばサイエンスエッジ」。これの海外展開第一弾として「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」が開催されました。

未来の科学者を育てよう。これを目的とした中高生対象の科学のアイデアコンテスト「つくばサイエンスエッジ」。2010年にスタートしたこのイベントは、つくば国際会議場とJTBグループが協力して開催する科学イベントで、2014年3月に開催されたコンテストには831名が来場、年々盛り上がりを見せています。さらにグローバル化を目指す第1ステップとして、2014年7月に「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」が開催されました。その模様を、イベント誕生の背景とともにご紹介します。

■教育現場におけるグローバル化の高まり

2014年3月21日につくば国際会議場で開催された「つくばサイエンスエッジ 2014」の来場者は、過去最高の831人を記録しました。これは2013年の481人の倍近い数字であり、参加チーム数も前年の86チームから169チームへと倍増しました。この取り組みがここまで広く認知されるようになった背景には、つくばサイエンスエッジの価値を、JTBの教育旅行(事業)営業担当者が、継続的に学校関係者の方々へ働きかけをしたことにあります。

さらに、教育現場におけるグローバル化のニーズを受けて、アイデアコンテストの内容を毎年進化させている点も、参加者拡大の大きな要因になっています。具体的には、2013年から英語でのポスターセッションを開始し、日本、タイ、シンガポール、中国、韓国から26校42チームが参加しました。学校側には事前にJTBの担当者から「できれば英語で発表してほしい」というお願いをしていました。しかし、まさかここまで多くの学校に英語での発表に取り組んでいただけるとは思っていませんでした。急きょ、全チームが発表できる場所を新たに設けて対応しました。また、オーラルプレゼンテーション(口頭発表)では、英語で発表を行った日本のチームも1校あり、英語に対する関心が年々高まっているのがわかります。

JTBコーポレートセールス教育総合研究室長 植木和司郎

■英語で研究発表。あえてアウェイの環境に身を置くことの狙い

こうした英語に対する関心の高まりの背景には、グローバル人材を育成することが日本社会にとって急務となっているという共通認識があります。事実、文部科学省では将来的な科学技術系人材の育成を目的として、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業を2002年にスタートさせ、2014年からは国際的に活躍できるグローバルリーダーを育成する試みとして、スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業も新たに始まりました。

SSHやSGHの指定校には、文部科学省から「英語で研究成果を発表する場に参加しなさい」という指導がされています。とはいえ、国内で高校生が英語で研究テーマについて発表を行えるような場は、残念ながらそう多くはありません。特に理系の研究発表を英語で行える場はほとんどなかったため、「つくばサイエンスエッジ」がアウトプットの場として注目されており、SSHやSGHの指定校も多数参加しているのです。

このような日本社会のグローバル人材育成の潮流に呼応して、JTBの教育旅行営業でも今後ますます盛んになっていくはずの国際交流需要に、今まで以上に積極的に取り組もうという方向性が示されています。そして、他社に先駆けて、日本とアジアパシフィックにおいて教育を軸とした交流文化の「場」を創出し、JTBのプレゼンス向上を図っていこうという考えもあり、「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」を開催することになりました。日本国内で開催するイベントは審査員の先生も日本人ですから、英語でのやりとりにどこかに甘えが出てしまうのも事実です。日本国内を飛び出して、あえてアウェイの環境に身を置くことで、英語を道具として使わなければならない状況に追い込もう。そんなお客様にとっての課題解決にもなり得る新たなイベント「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」には、このような開催の意義があるのです。

■グローバル展開。第一弾の舞台はシンガポール

2014年7月28日・29日にシンガポールで開催された「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」は、「つくばサイエンスエッジ」のグローバル展開第一弾となるものです。シンガポールはASEANの中心であり、ビジネスや情報技術においても東南アジアのハブになる都市ですから、サイエンスをテーマとした国際交流を深める場として適切な場所と言えます。日本をはじめアジア各国から集まった高校生たちが、発表や意見交換、議論などを行えるコミュニケーションの場をつくりたい。そんなJTBの考え方に共感していただいた、シンガポールのグローバル企業ゲンティンシンガポールのご協力もあって、ようやく実現に漕ぎ着けることができました。日本からの参加校は2014年の「つくばサイエンスエッジ」の受賞校4校のほか、SSH2校が参加し、アジアからはシンガポール、マレーシア、タイなどの高校生が参加しました。

■世界に向け、アジア各国の学校と協力して“人の流れ”を生み出す

現時点では「つくばサイエンスエッジ」と「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」を両軸として位置づけ、相互に優秀な生徒を送り込むことで、さらなる“人の流れ”をつくっていきたいと考えています。例えば、タイなどは国の支援によって日本に高校生を送り出していますが、今後はそれぞれの国において企業や政府の支援のもとでローカルなコンテストを行い、その代表が日本とシンガポールに集うというのも目指すべき形のひとつです。もちろん、それには各国でJTBの現地法人や支店が中心となってスポンサー企業を見つけ、政府からの協力を得るというアクションが一段と重要になっていきます。まさにそこで、世界各国にネットワークを持つJTBの強みが発揮されると考えています。

そして、次の段階としては、日本とアジア各国という関係だけでなく、例えば韓国の学校とシンガポールの学校、タイの学校とインドの学校というマルチな交流が起こるような場を、JTBがアジアの国々につくり出していければ、そこに関心をもつ協力企業の数も増え、交流の「場」はさらに大きく膨らんでいくと思います。その場の中心にはいつもJTBがいて、JTBのなかのいろいろな部門の人たちが各自の考えやアイデアでその場を活用し、新たなビジネスをつくっていくというのが理想型です。

場をつくっていくことが、今後ますます重要になっていくのは間違いありません。そして、場こそが交流文化事業の舞台になっていくわけです。多くの国を巻き込んで、本当の意味でグローバルな交流の場をつくっていきたいと思います。

■「高校1年生でもアイデアで勝負できる環境」広尾学園高等学校 木村健太先生

広尾学園は2013年から2年連続で「つくばサイエンスエッジ」にご参加いただいています。オーラルプレゼンテーションでは2013年に「探究指向賞」、2014年に「未来指向賞」受賞という輝かしい成績を残しています。医進・サイエンスコースの責任者である木村健太先生に、応募のきっかけをうかがいました。

「高校生が研究に取り組める時間は、受験勉強が本格化するまでの2年間しかありません。しかし、この期間内で研究を完成させるのはかなり難しい。その点、このコンテストはアイデアベースで応募できるので、将来的な考え方や調べた背景を評価してもらえます。極端に言えば、社会貢献につながる新規性の高いアイデアを生み出すことができれば高校1年生でも勝負できるのが魅力です。しかも、高校生にしてはすごいねという評価ではなく、一流の科学者の先生方に生徒たちが一研究者と扱っていただき、内容をジャッジしていただけます。これは生徒たちの研究の方向性に非常に良い影響を与えていますね。 医進・サイエンスコースはまだ新しい学科なので、私自身、正直なところ日々不安を抱えています。そんなとき、JTBの植木さんにはまるでコンサルのようにアドバイスや情報をいただくことができて、本当に助かっています」

広尾学園高等学校 医進・サイエンスコースマネージャー 木村健太先生

■サイエンスという共通言語で刺激し合あえる

2014年の「つくばサイエンスエッジ」で「未来指向賞」を受賞した岩永りくさん(医進・サイエンスコース3年出場時)が、2014年7月「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」に招待参加しました。

「サイエンスはもともとグローバルなもので、それ自体がひとつの言語のようなものですから、共通の認識で誰とでも話ができます。そういう意味では、外国でサイエンスに取り組んでいる生徒たちと触れ合い、刺激し合う機会が持てるというのは、とても幸せなことだと思います。国や文化が異なる人たちがどのようなプレゼンテ―ションやディスカッションをするのかを現場体験で知る意味は大きいですね。おそらくクリティカルな意見や質問なども出ると思いますが、これから研究を続けていくつもりならば、そうした声にきちんと耳を傾けて場数を踏んで行くことが大切だと思います。 彼女は大学の先生の論文を読んで研究手法についての質問メールを出し、直接教えてもらいに行ったりするという積極的な一面も持っています。自信をもって英語でのプレゼンテーションをやり遂げてくれると思います」

(上)英語でのプレゼンテーションに向けて岩永さんの準備にも余念がない (左下)広尾学園理科実験室には大学の研究室レベルの機材がそろっている (右下)「プラナリアにおけるTERTタンパク質の発現パターン解析と寿命獲得メカニズムの解析」というテーマで未来指向賞を受賞した岩永りくさん

■グローバル環境の厳しさにも、諦めない精神力を

到着初日は、世界最大級の水族館「シーアクアリウム」での多国籍生徒ミックスの学習プログラムおよび自主研修のあと、国際交流会が開かれました。多くの生徒がネームカードを交換するなどして積極的にコミュニケーションをはかり、ゲームによる交流も盛り上がりを見せました。

活発に行動する海外の生徒と対照的に、日本の生徒は場馴れしていない様子で、生徒からは「英語が苦手ではないのに、あまり積極的に海外の学生に話しかけられませんでした。また、海外の生徒は自分の意見をはっきり言うのに対し、日本の学生は消極的。自分のテーブルで話している日本人は半分もいなかったのが残念です」との声も聞かれました。 「海外の学生の積極的な姿勢に刺激を受け切磋琢磨してほしい。研究を進める上で、必ず挫折しそうになる瞬間が訪れるが、そこで諦めない強い精神力を海外の学生との交流を通じて身につけてほしいです」と富岳館学院高等学校<静岡県>の先生は、生徒たちを見守りながら話します。

イベント初日には、コンテスト本番となる口頭プレゼンテーションとポスター発表が開催されました。質疑応答の場面では、よりハイレベルな英語のコミュニケーション能力と度胸が必要となります。日本人生徒にとっては厳しい環境ながら、そこを突き抜けることでさらなるステップアップが望めます。日本では体験する機会の少ないグローバル環境を多くの生徒が実感している様子でした。

プレゼンテーションでは日本人の生徒とアジア各国の生徒の違いが浮かび上がりました。日本人の生徒のプレゼンテーションは細部まで丁寧に研究され、資料が充実しています。Global Indian International<シンガポール>の生徒は「プレゼンテーションは普段学校では学べないようなことをたくさん学べました。日本の生徒は専門的な言葉まで駆使しており、彼らの知識に脱帽しました」と感想を述べました。

■喜びと悔しさを実感。そして次なるチャレンジへの意欲

「このイベントのために英訳に3カ月ほどかけましたが、あらためて英語に力を入れたいと実感しました。今回の経験を持ち帰って次の発表の機会につなげたいです」(科学技術高等学校<東京都>の生徒)

「英語だけの世界に圧倒されつつも、様々な国の人たちが積極的に話しているのに感化されて、私なりに頑張って話しましたし、いい発表をしようと努力しました。今まで自分の考えに凝り固まって他の研究発表に目を向ける機会が少なかったので、いろいろな意見が聞けた今回の経験は新鮮でした」(富岳館学院高等学校<静岡県>の生徒)

「外国の生徒に自分の研究を発表する機会がなかなかないので、とても有意義な時間でした。各国で発表の仕方が違い、とても勉強になりました。日本の生徒の発表は英語が聞き取りやすく、AHXという農業の研究が特に興味深かったです」(National Junior College<シンガポール>の生徒)

表彰式では発表のプレッシャーから解放され、緊張が解けたためか、生徒たちには笑顔がこぼれていました。受賞校は心から受賞を喜び、入賞を逃した日本の学校の生徒は「次回があるならまた参加したい。英語力を磨いて次こそは受賞したいです」と、悔しさをバネに早くも次のチャレンジへの意欲を表していました。

■海外研修ならではの最先端技術を視察

イベント2日目はシンガポールにて、先端科学技術施設の視察に加え、NTU(国立南洋理工大学)にて同大教授によるレクチャーと研究室の視察が実施されました。海洋研究施設MARC(Marine Aquaculture& Research Center)では、魚の寄生生物除去装置の説明を受け、ある日本人生徒は魚に触れながら「ストレスを感じているのが伝わってくる」と研究者らしい観察力の鋭さをかいま見せました。科学技術の官民協働拠点Fusionpolisでは、最新のシステムやIT機器に触れ、外国の生徒は率先して体験したり、積極的に質問を投げかけるなど、貪欲に知識を深めていきます。生徒たちは普段の授業や研究とは異なるテーマに目を輝かせており、引率した先生からも、今後もこのような研修や体験の場をつくっていきたいという声が上がりました。

■参加してみて「価値観が変わった」「将来、海外で活躍できる人間になりたい」

プログラムを終えた生徒たちに感想を聞くと、「世界」を強く意識するようになったこと、そして、「英語」の学習意欲が湧いたといった声が多く聞かれました。代表的な感想を紹介します。

「各国の発表を聞いて危機感を抱きました。日本国内で研究し発表しても、世界単位で見れば小さなことだと実感させられたからです。世界に向けて発信することの重要性に気づかされました」

「広い視野で自分を見つめ直すことにより研究における不足点に気づきました。また、アジア諸国の人たちの物事の捉え方や考え方がわかり、価値観が変わりました」

「3日間で耳が英語に慣れてきて、かなり聞きとれるようになってきました。グローバルな環境にとても刺激を受け、将来、海外で活躍できる人間になりたいと思いました」

引率の先生方も「グローバルサイエンスリンク・シンガポール」に確かな手ごたえを感じたようです。

「3月から始めた準備と、長い努力が報われたと思いますし、努力は裏切らないということを生徒に身をもって知ってもらえたと思います」(富岳館高等学校<静岡県> 栗原 浩樹先生)

「グローバル人材育成に力を入れている本校では、非常に多くの生徒がこのイベントに興味を示しました。イベントに参加することでコミュニケーション能力をはじめ技術力以外の力をつけ、海外で活躍できる人材育成の第一歩となったと感じています」(多摩科学技術高等学校<東京都> 早川副校長先生)

JTBコーポレートセールス教育総合研究室長 植木和司郎は、生徒たちの成長を目の当たりにし、イベントの意義をあらためて実感しました。

「科学という共通のワードを軸にして様々な国の生徒がすぐに打ち解け、コミュニケーションを取り合う姿が印象的で、日本の生徒たちが敢然と英語でのコミュニケーションに挑む姿には特に感動しました。お互いの研究を知ることで、国境を超えて共同研究の申し入れをする学校もあり、これからの展開が楽しみです。今回、入賞した生徒はいずれもつくばサイエンスエッジの英語発表での入賞者。やはり英語発表は自信を持ってプレゼンテーションに臨む必要があり、そのためには場数を踏むことが重要であると実感しました」

「グローバルサイエンスリンクは、グローバル人材育成の潮流に呼応してJTBグループが日本とアジア圏で、科学を軸として高校生にグローバルな発表・交流の場を提供した初めての取り組みです。教育のグローバル化と共に、我たちJTBの教育事業の舞台も、無限に広がって行く可能性があると改めて感じさせられました」

(※肩書きは取材当時のものです。)

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