死を未来に変えるクォンタムリープ ~広がるアジャイルお節介

意志を持って未来を作る、そのキーワードは「お節介」。

意志を持って未来を作る、そのキーワードは「お節介」。変革を求める仲間がつながる、さまざまな取り組みが進んでいます。わたし自身も、産みの苦しみの中で"お節介のアジャイル化"に取り組んでいます。

■ 日本はどうする、2030年には立ち行かなくなる社会基盤

9月8日土曜の午後、1999年から続く政策分析ネットワークの第169回政策シンポジウムで議論されたのは、「未来をつかむTECH戦略」人口減・高齢化等の社会課題にどう立ち向かうのか―。中身が想像出来そうで出来ないふわっとしたタイトルなので、気負わずに行ったところ、200人の大会議室が溢れそうな勢い。登壇者がほぼ見えず、聞こえるだけの席で正直あまり期待せずにいたのですが、熱く語る若い総務省官僚の声に引き込まれ、2時間ずっと前のめりでした。

未来をつかむTECH戦略

大きな経済効果が期待される2020年の東京オリンピック/パラリンピックが終わると、日本はしぼんでいきます。人口減・高齢化により2030年には既存の社会システムが立ち行かなくなるのです。それを見込してどう変えられるかが、リアルに国の存続のカギとなります。

そこで総務省が取り組むのは、通信技術(ICT)をアグレッシブに活用して社会変革を実現するための政策づくりです。昨年「IoT新時代の未来づくり検討委員会」を立ち上げ、2030~2040年に向けた「未来をつかむTECH戦略」という政策ビジョンを作成。ここで平均年齢 約29歳の若手職員からなる「未来デザインチーム」が活躍し、今年4月には「新時代家族~分断のはざまをつなぐ新たなキズナ~」という小説を公表しています。

■ 目をキラキラさせた若者が語る、未来をつかむムーンショット

若手官僚が担うTECH戦略には、目標を立てさかのぼって政策を立てるムーンショットを含む、変革実行の8か条が描かれています。ゴールとなる未来の姿は、年齢・性別・障害の有無・国籍・所得などに関らず、多様な価値観をもって豊かな人生を楽しめる「インクルーシブ」な社会です。ICTを学びあう環境整備を含む、スマートインクルージョン構想が描かれています。

なおインクルーシブは資料では「包摂」と訳されていますが、実社会では「寛容」というニュアンスがしっくりくるのでは、と考えました。

TECH戦略で印象的なのが「静かなる有事をチャンスと捉える」というポジティブな発想です。未来デザインチームも、"悲観は気分によるものであり、楽観は意思によるものである"というアランの幸福論を引用。「行政官が明るい未来を描く必要がある。子ども達の未来を前向きに変えよう。」「考えただけでは意味がない。仲間と一緒に発信していけば、社会を変えられる。意思を持って明るい未来を作ろう。」という声があがり、思わず胸が熱くなりました。

考えているだけでは意味がない

■ 非寛容社会に昭和のおばちゃんがよみがえる「お節介」

未来デザインチームが描く未来の生活シーンには、例えば「お節介ロボット」があります。お節介ロボットとは、家電がネットにつながるスマートホームの中で、人を支える人間型のロボット。家庭内のデータ、行動履歴、体調データ、時刻、外部環境の情報などを分析し、その場その場で最適な行動を薦めてくれます。

これを見て、昭和のおばちゃんの死語かと思っていた「お節介」の発想に驚きました(笑いました)。

考えてみると、お節介も、寛容も、いずれもじつに今の日本に欠けているものだと思います。

なぜなら、スマートフォン、SNSにより日々、一刻一刻やりとりする情報が複雑化、膨大化し、他人のお節介や意見を受け入れない非寛容な空気があるからです。

ビジネスでは既存のやり方を変えようとすると抵抗勢力が大きく、恐くてお節介などできません。日本語の言語障壁で海外の情報が制限され、日本人同士の同調圧力が変わらない中で、お節介も目立つこともせずに叩かれない生き方が、この国での生き残りの手段になっているのが現実です。

そんな中、まさにお節介が寛容を生むのでは...、と考えさせられました。

■ 寛容とお節介のマーケティング集団の異常な熱量

わたしが参加している無償コミュニティ「マーケティングをDNAに組み込む攻略ガイド」でも、まず相手を否定しないことが参加条件のひとつです。そしてお節介が、毎日実際にくりひろげられています。

マーケティングをDNAに組み込む攻略ガイド(活動は9月末日まで、募集は9月28日(金)まで)

運営者:飯室淳史氏(B2Bhacker、元米GEヘルスケア・ライフサイエンス社 チーフデジタルマーケティング グローバルリーダー)

430名が参加表明するこのコミュニティでは、各人が自分のゴールを設定し、達成に向かって発言をシェアして学び合い、成長につなげています。運営者の飯室淳史氏がGEでの経験をもとに作った「お題」(行動テーマ)が、朝8時にSNSライブ動画で解説され、夜10時にまたライブで深掘りされます。

参加者は聞くだけでなく教え合う、半学半教のスタイル。全員がコメントやセンチメントボタン(いいね、など)で反応しインタラクション(意思疎通)します。こうして何十人、何百人がリアルタイムに刻々と刺激とはげましを互いに繰り返す。週末の特別1時間ライブでは、500件以上のコメントがやりとりされる異常な熱量が生まれます。ゴールに向かってすばやく突き進む原動力が生まれ、行動が変わります。すると、気づかないうちに凝り固まっていた考え方の誤謬に気づき、驚くほど短時間で価値観が変わる。実際にそれが、毎日の仕事の改善につながるのです。

しかしなぜ、寛容とお節介が成長につながるのでしょう?

それは、まったく異なる立場の人たちを受け入れることで、思いもよらない気づきを得られるからです。これは未来デザインチームが描くインクルーシブ社会そのもの。寛容とお節介がつなげる多様性が、ひとりひとりを高速に成長させるこのコミュニティの仕組みは、まさにICTの賜物なのです。

■ 変わらないことを人のせいにするな、自分を動かせるのは自分

寛容とお節介の学びを活かそうと、わたしも職場で四苦八苦、試行錯誤しています。

勤務するのは、PR総研という広報の価値向上を目的とする調査研究機関です。20年の実績を活かすべく今年から配属になり、はたと考えました。広報の価値向上とは何だろう、なぜこの時代に広報活動が必要なのだろうと。

デジタル化が進み、データの価値が天文学的に上がる今、情報流通の重要度が増しています。だからこそ、広報活動の価値をデジタルとデータで再定義する必要があるのです。しかし広報PRの現場を見ると、デジタルもデータもまだまだ活用の発展途上。目の前の仕事をこなすことが目標にすり替わりがちで、複写転記(コピペ)できるノウハウが重宝されます。仕事の本質を考えず、その先のお客様が見えていないこともままある。このままでは職業人としても組織としても死に絶えるだろう、という強烈な危機を覚えます。

そこで実現したいのが、広報PRにおけるデジタルとデータを活かした迅速な決定・行動・改善(アジャイル)です。情報発信し、そこから得られる知見をすばやく社会に還元できる理想の組織作りを、自分ができることからやるのです。必要なのは、組織が変わらないのは他人・外部要員のせいという思い込みを捨てて、できることを見つけて自主的に進めることです。デジタルだ、データだというのは手段であって、ゴールは広報の価値向上。ツール議論で止まり他者のせいにして時間や情報価値をロスさせるのではなく、自主的にコミュニケーション機会を創出してお節介に広めていくのです。

PR総研の改革は途上ですが、社会に開かれた組織にしたいと考えています。寛容とお節介という素晴らしい気づきをもたらしてくれた方々に恩返しするためにも、幅広い方々と共創したい。なぜ、何が価値なのかを、自ら考え作る取り組みを加速したい。わたしはPR総研という立場で、多様な皆さまと高速に成長しあう、お節介な取り組みを進めます。

自分が変われないことを人のせいにしない。自分の思い込みを壊す。多様な人の寛容とお節介が変革の原動力になる。あきらめなければ未来に向かう飛躍的跳躍はできる、と信じています。まずは自己改革の宣言です。

コウタキ考より

注目記事