4月は異動の季節ですね。この年になると同世代で会社が変わる人も多い。
異動のお知らせを頂くたびに、この人がこのように移るのはなせだろうかと考えてしまいます。
技術の変化が速く、事業の移り変わりも速い。自分の同期では、新卒で入った企業にいまだに勤めている人は半分も居ないのではないか。
「こうすれば生き残れる」という必勝法などないですが、少なくとも自分が身につけようとしているスキルは会社の外でも通用するのか、常に考えていた方が良いと思います。
もっと言うと、仕事で何を身につけるかは、仕事選びの際に考えておくべきでしょう。
皮肉なことに、会社に忠実で、ある意味で優秀な人が、会社が傾いた時にはつぶしがきかない、という事例を嫌というほど見てきました。
もう10年以上前にビジネススクールに留学した時、「スキルにはGeneral SkillとCompany Skillがあるのだ」と教えられ、目から鱗に感じたことを思い出しました。
General Skillは社外でも通用する一般的なスキル、Company Skillは社内でしか通しない特殊なスキルです。
技術者ならば若い時にはどちらかと言うと、General Skillを身につける機会が多いでしょう。日本のレベルの高いメーカーで学んだ技術は世界のどこでも通用する。
厄介なのは、年をとるにつれて、昇進するにつれて、根回しや会社独特のプロトコルといった、Company Skillが大切になってしまう。
会社に対して忠実であろうとするほど、自分の職務をまじめにこなそうとするほど、使っているのはCompany Skillばかりになりかねない。
ふと気がつくと、社外では通用しない人間になってしまっている。
一方、「いい年して技術ばかりやってる変人」と言われているような人の方が、会社が傾いて、いざ転職となった時に強いこともあります。
まあ、会社が磐石で一生勤め上げることができるのならば、Company Skillを磨き上げることが正解でしょうから、絶対の正解などないのですが。
Company Skillだけでなく、業界スキル、とでも言うべき、日本のある業界では大事だけれども、他では使い物にならないスキルというのもあるでしょう。
「ガラパゴス」と言われたりしますが、システムLSI事業にしろSIerにしろ、ユーザーに極度にカスタマイズした製品やシステムを構築するのは、日本に独特のやり方かもしれません。
カスタム化が強みとなる場合もあるので、一概に悪いこととは言えないでしょう。ただ、システムLSIでいえば汎用品をベースにしたり、ITではクラウドを使うことで、圧倒的に低コストな競合事業が海外から出てくると、日本独特のカスタム化が生き残れるのか、心配になってきます。
そして、事業だけでなく、個人のスキルまで「ガラパゴス化」したら、いざ会社が傾いた時に転職も難しくなるかもしれません。
いま、就職活動は佳境ですが、学生は就職先でどのようなスキルが身につけられるのか、よくよく考えて仕事を決めてもらいたいものです。
少なくとも、日本のある業界でしか使えない独特のスキルを必要とする企業に就職するならば、その業界がどれだけ長く続くのかを考えたり、相応の覚悟をしておくべきでしょう。
(2015年4月23日「竹内研究室の日記」より転載)