南米ボリビアの首都ラパスで出会った心に沁みる家庭料理 |KitchHike

南米ボリビアのラパス。肉のステーキにチーズの焼き物、特製のソースをつけて食べるいんげん豆の蒸し物など。

世界の家庭料理を旅しよう!

こんばんは!KitchHikeサポーターの恩田です。

あるCOOKの食卓を訪ねることができたので、寄稿させていただくことになりました。

なんと、訪ねた場所は、南米ボリビアのラパス!

COOKプロフィール:ボリビア人のWilliamさん

■ボリビアってどんな国?

ボリビアと言えば、最近ウユニ塩湖で有名な国ですね。塩の湖の上に溜まった雨が、空を鏡のように反射し映し出すその世界は、天と地の裂け目を曖昧に溶かし、「最も天国に近い場所」等と言われる程の絶景。言葉も思考も絶景の前では失われてしまうのだろうか。そこから、バスで10時間程の所にある、ボリビアの首都ラパスが今回のKitchHikeでお邪魔をする場所。

こちらの標高は3000メートルを超え、世界で最も標高の高い都市等と言われている。気温は、夏でも肌寒いくらい。そして、階段を少し上っただけで、息が切れてしまう。青い空が近く感じる、天空の街のようだ。街の中心街では、色とりどりの野菜や果物を見て楽しめる。所狭しと開かれている多くの商店で買える果物は安く、そして美味しい。南米の中では、一番物価が安いようだ。

ボリビアに入る前に偶然、ラパスにKitchHikeのCOOKがいることを知った。現在、海外を旅しているのだが、やはり現地の事を知るには、彼らの日常に混ざるのが一番いい。

観光客のために作られた顔ではなく、普段の彼らの表情と会話としたいのだ。事前に予約もできて、準備は万端。さてさて、ここラパスの日常とはどのようなものなのだろうか。どんな料理を食べているのか、楽しみだ。

■緊張しながら、ボリビアの食卓へ向かう

早朝。僕は、噂のウユニ塩湖から長距離バスでラパスのターミナルへと到着した。そして、そのまま中心地のホテルへと直行し、KitchHikeのチャットシステムを使って、ボリビア・ラパス在住のCOOKにメッセージを送る。

「今日は宜しくね!」

「こちらこそ。12時に待ってるよ!子供の学校が午後から始まるから、みんなで一緒に食べよう。」

写真で見る限り、夫婦と子供が何人かいるようだ。

朝、何かを食べたかったが我慢した。昼にどのくらい料理が出てくるのか、分からなかったので、出来るだけお腹をすかせて訪問をした方がいいだろう。グーグルで場所を調べていると、今いるホテルから車で10分程の所のようだ。お腹が鳴る音を聞きながら、水を飲んでかき消す。お昼が待ち遠しい。

時刻11:30。出発の時を迎えた。ストレッチをしながら、ホテルの前でタクシーを待つ。しかし、こんな時に限って、中々掴まらない。ラパスの交通量は多い。ただ、タクシーも混合っている。歩道と道路とが断絶された国境のように遠く感じる。いや、言い過ぎか。時間が刻々と過ぎていく。

45分頃。なんとか、拾えた。車は、中心地から少し下っていく。窓からふと外を見ると、脇には聳え立つ山が見える。山の中にも家が見える。綺麗な街並み。12時ジャストに今回、訪問する近くの銀行に到着した。タクシーを降り、家へと向かう。

地図を見る限り、どこからか階段を昇るようだ。その入り口を見つけた。幅2メートル程の狭い階段が上まで続いている。階段の脇には家がびっしりと並んでいる。天空への階段を必死に駆け上り、坂の一番上にお目当ての家を見つけた。ベルを鳴らす。少し緊張しながら、笑顔と簡単なスペイン語を頭の中でフルスロットで回す。

■笑顔で迎えてくれたアットホームな家族

「ようこそ!」

今回のCOOKの、Williamと握手。色が入っているサングラスをかける、ダンディーな彼。

「Hola!今日は宜しく!」

必死に覚えた、スペイン語は空しく頭から消え去る。一夜漬けはだから意味が無いのだと改めて、思い知る。そして、彼は英語で話してくれた。この家で、スペイン語の先生をしているらしい。家に入って右手に、ダイニングがあるのだが、側には大きなホワイトボードが見える。おっと。ここで、スペイン語のレッスンをお願いしようかな。なんて思っていると、息子達登場。多い!と思いきや、今は、従兄弟の子と友達も来ているらしい。みんなに挨拶をする。

「Hola!みっちーです!宜しく」

「宜しく。マリオです。。」

と言いながら、下を見てもじもじする。彼らは、もの凄くシャイだった。

部屋の中には多くの絵が飾られている。

「絵が好きでね」

なんて言いながら微笑む、William。

ダイニングテーブルの上座に座るように、夫Williamに言われる。どうやら、今奥さんが最後の仕上げをしているようだ。キッチンの様子はここからは、見えない。ただ、いい匂いが部屋を包みこんでいる。お腹がすいている自分には、はっきりと分かる。ボリビアの音楽を聞きながら、静かに待つ。

子供達は、椅子に座るとかなり緊張をした様子。真顔でテーブルを見つめていて、ぴくりとも動かない。僕に、緊張をしているのだろうか。怖い顔してるかなと思い、笑顔の練習をする。

「君みたいに、どんどんお客さんが来る事を楽しみにしているんだ」

「ここ、ボリビアでお宅訪問を出来ると思いませんでした。どうやって、このキッチハイクを知ったのですか?」

「この前、KitchHike創業者のマサヤと出会ったんだ。その時に、色々と話を聞いて楽しそうだと思って」

「いいですねー!今回、僕も利用するのが初だったので、緊張しながら連絡しました。こうやって、旅行者が現地の家で、ご飯を食べれるなんて素敵ですよね!」

■いよいよボリビアの家庭料理、登場!

しばらくして、料理が運ばれて来た。

大きなインゲン豆とポテトを蒸した物

肉のステーキ

大きいトウモロコシ

チーズの焼き物

ふんだんに野菜を使った辛みのあるソース

特製レモネード

(現地の名前を聞いたのだが、良く聞き取れなかった。すみません......。)

机の上に、昼からこんなに皿が並ぶ事は珍しい。昼と言えば、大体、麺かパン。僕の日本にいる時は大体そんなものだった。

運ばれた料理を眺めていると、静かに、隣に座っていた子供が食べ出す。

そうだ。「頂きます!」と言って、食べる文化ではないのだ。続々と家族が食べ出す中、一人で手を合わせて、ご飯を食べる。

まずは、大きなインゲン豆を。特製のソースをつけて食べる。皮は少し筋が多い。と、思ったら、どうやら中にある豆だけを食べるようだ。間違って、皮ごと食べてしまった僕は、笑われた。先に言ってくれ!

肉を食べ、芋、そして、チーズの焼き物を美味しく食べる。特製のレモネードを飲みながら。もの凄いインパクトのある味ではないのだが、この素朴な味にボリビアの家庭の味を感じた。そして、昼には白ご飯を食べる事が多いのだが、今回はどうやら特別で作ってくれたようだ。

「日本では、昼からご飯と生の魚を食べるのか?」

多分、寿司の事だろう。

「生の魚を、毎日食べるという事は無いですね。ただ、僕の実家は海側だったので、魚料理は多かったですが」

ここ、ボリビアは勿論高地なので、海は無い。近くにある湖で取れた魚を食べる事がたまにあるようだ。ここ、ボリビアは、日本の裏側。彼らからすると、「日本って、どこだ?」という感じだろう。僕ら日本人からしても、ボリビアはどこにあって、どんな文化か等は殆ど知らぬ。この遠い国で食事をしている自分が、なんだかとても不思議に思えた。今は、このキッチハイクというサービスを使って、家にお邪魔して食事をしている。ネットが無ければ、会う事は無かっただろう。

食事中、奥さんに

「料理美味しいです!」

と言うと、恥ずかしそうに下を見ながら、

「ありがとう」

と言っていたのが、印象的だった。

食事の写真を撮ろうとカメラを構えると固まるマリオ。とにかく、シャイな家庭。日本以上に。

しばらく、ボリビアの観光地の話を聞いていたら、子供達が学校に行く時間になったので、同時に僕も席を立った。

最後にリビングで写真を撮って、みんなと握手をして、外に出た。

こうして、僕の最初のKitchHikeが終わった。

素敵な家庭だった。

扉の外には、また狭い階段が下まで続いている。

ボリビアの家庭の日常をかいま見れた。

僕がいた事で、少し違う日常になってしまったかもしれないが。

夜、ホテルの窓から外を眺めると、山をびっしりと埋める家の明かりが幻想的に光っていた。

この幻想的な光の中の家のどれかを訪ねたんだよな?と思うと、急に今日の出来事が何だか夢のような気がしてくる。

と思ったら、奥歯にトウモロコシの筋が挟まっていることに気付き、フッと家族の顔が思い出された。

なんだかとても嬉しくなって、僕はひとりで笑ってしまった。

(Guest Writer / Michinori Onda

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(2014年4月18日「KitchHike マガジン」より転載)