講演会「金正恩暴走の原因と行く末を考える」 北朝鮮難民救援基金 田平啓剛

今、日本がするべきことは何か?
北朝鮮難民救援基金

「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」と「北朝鮮難民救援基金」は、6月24 日、東京・春日のアカデミー茗台ホールに、李相哲・龍谷大学社会学部教授(メディア史・北東アジア情勢専攻)を招き公開講演会を共催した。新聞報道では窺えぬ鋭い分析もあり、その要旨を紹介する。

1. 講演要旨

北朝鮮政治の特徴として、①残虐な人権無視、②力の信奉、③約束を守らない、の3点を挙げ、それぞれについて詳述。

①については、米国人大学生オットー・ワームビア氏の最近の米国送還と、帰国後1週間も経たない内の死亡、脳の大部分における損傷、最高裁判所で労働教化刑15年を宣告された理由が、金正恩委員長の写真が載っている新聞紙で自分の靴を包んだ咎であったこと等に言及。

②については、ジョージ・W・ブッシュ(息子)米国大統領が北朝鮮をテロ支援国家に指定した2001年9月、先制攻撃も辞さない米国の矛先がイラクに向かうか、北朝鮮に向かうかの瀬戸際において、仲介役を期待された小泉元首相の役回りが拉致被害者5人の帰国に結びついたこと、また当時、金正日の焦燥感から「6カ国協議」の開始に繋がったこと等が分析された。金正恩は自分を守る為、核兵器は絶対に手放さない。故に、国際社会は核保有国として認めるか、認めないか、その二者択一しかない。

③については、協定を結んでも守らない、ということでは、近代の国際法は無意味となり、6カ国協議も、一切の外交交渉も成り立たなくなる。先に、オランダのルーガン大学において、拉致問題が検討されたとき、国際犯罪者集団としての北朝鮮に対峙し、どのように認識し、如何に処遇していくのか、議論になった。何もしようとしない日本、特に日本政界には、何か裏が隠されているのではないか?との発言もあった。

2. 質疑応答要旨

①武器商人としての顔を持つ金正男はマレイシアで米国CIA関係者と会い、次の行動に出ようとして、国内統治資金に困っている金正恩に暗殺された。

②先の朝鮮動乱は国共内戦の延長線上にあった。中国朝鮮族は教育程度も高く親中。中国の軍部と北朝鮮の軍部とは親しく、中国は「北」を絶対に見捨てない。

③金正恩に対する道徳的な攻めが重要。国際刑事裁判所(ICC)への提訴とか、基礎資料たる「北」の人権状況記録を緻密に作り上げること等の方策が迂遠ではあるが、実は効果的。

④本年も55万トンの穀物不足が明らかであるが、10坪以下、3~5名の小規模自己耕作が認められ、国民の間に生産意欲は高まっている。

⑤子供達4家族を「北」に残しているが、微力ながら国連と連携、日弁連への人権救済申立て、金正恩のICC提訴、総連のICC提訴を準備中。(脱北者の決意表明)

⑥日本がやるべきことはやり尽くしている。米国が「対中」や「対北」で一番頼りにしているのは日本である。しかし、総連問題については更に行動の余地がある。

⑦山田文明「守る会」代表の意見と感想の表明。

⑧北朝鮮は160カ国余と外交関係を持ち、40カ国余に「北」の外交官が駐在。20カ国余がその外交官を「北」に駐在させている。

3. 今、日本がするべきことは何か?

A)中国が「北」の首を絞めるか、B)米国の軍事行動に中国が協力するか?

・・米国は100日だけの猶予を表明、中国は秋の党代表者会議を見据え6カ月を要求。何れにせよ、「北」問題はこの2~3年内に決着を見ようとしている。

日本は「北」を核保有国として認めない、と決断しなければならない。日本並びに(次期政権の)韓国が、「北」をインド、パキスタンのようにはさせない、できない、ということを思い知らせるべきである。

(文/北朝鮮難民救援基金理事 田平啓剛/北朝鮮難民救援基金 NEWS July 2017 № 105 より転載)

北朝鮮難民救援基金ホームページ

北朝鮮難民救援基金フェイスブック

北朝鮮難民救援基金ツイッター

注目記事